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★ [U09-05] 東北地方太平洋沖巨大地震後の津波に対する原子力発電所の安全基準のあり方
2011年東北地方太平洋沖巨大地震により発生した大津波により福島第一原子力発電所が炉心融解および建家爆発に至り、今も放射能汚染により多くの住民が避難する大事故となった。事故発生後、間もなく原子力安全委員会の下に地震・津波関連指針等検討委員会が設置され、耐震設計審査指針の改訂が議論された。事故以前の審査指針では津波については「地震随伴事象に対する考慮」として扱われていたが、新指針では「耐震安全設計方針」とは別項目として「津波に対する安全設計方針」を作ることが議論された。2012年3月には津波に対する設計方針が盛り込まれた、新しい審査指針および安全審査の手引きがまとめられた。その後、2012年9月に原子力規制委員会が発足し、その下に「地震・津波に関わる規制基準に関わる検討チーム」が結成された。そこで新たに「地震及び津波に関わる新安全設計基準」が議論され、2013年6月に新安全設計基準がまとめられた。 そこには、基本として多重防御の思想が取り入れられている。1)基準津波に対して敷地内に津波を侵入させない。2)何らかの原因で津波が侵入した場合に備えて、施設及び建家内に津波を侵入させない。3)何らかの原因で建家に津波が侵入し、電源喪失が発生した場合に備えて、高台に電源供給源を確保し、重大事故に陥らせない。基準津波に対しては、最大級の巨大地震による津波波源を考慮することとした。ここで問題となるのが、この多重防御の思想の理解であろう。津波が侵入した場合に備えて建家は防水されているのだから、基準津波による少々の浸水を許しても大丈夫と考える業者が出てくる。このような考えが出てくると逆に多重防御にすることにより、逆に危険性が増すことにつながりかねない。厳密に多重防御の思想を適用して欲しいと願う。