日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT31] 環境トレーサビリティー手法の新展開

2015年5月27日(水) 11:00 〜 12:45 304 (3F)

コンビーナ:*中野 孝教(大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所)、陀安 一郎(京都大学生態学研究センター)、座長:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)

11:30 〜 11:45

[HTT31-03] マルチ・トレーサーによる地下水-地表水循環系の推定 -福井県大野盆地の事例-

*池田 浩一1辻村 真貴2中野 孝教3帰山 寿章4 (1.筑波大学大学院 生命環境科学研究科、2.筑波大学 生命環境系、3.総合地球環境学研究所 研究高度化支援センター、4.大野市役所 産経建設部)

キーワード:地下水流動系, 地下水-河川水循環系, 水素・酸素安定同位体比, ストロンチウム同位体組成, マルチ・トレーサー手法

山地源流域と下流に位置する沖積平野は,地下水流動系の観点からそれぞれ水の涵養域,流出域として重要である。特に,地下水と地表水の交流関係は,山地から沖積平野に至る地下水流動系を理解するための最も重要なプロセスの一つである.
流域面積が948平方キロメートル,標高が250メートルから2060メートルを示す急峻な山地に囲まれた流域を対象に水文調査を行い,盆地内の地下水を対象に258地点,流下する4河川沿いに112地点の地表水を対象に採水を行った.また,すべての水試料に対して酸素安定同位体比(δ18O)と水素安定同位体比(δD)およびストロンチウム同位体組成(87Sr/86Sr)を測定した。
酸素安定同位体比(δ18O)と水素安定同位体比(δD)は支川小流域毎に異なる値を示し,4流域の平均涵養標高の違いによる影響について示している。また,ストロンチウム同位体組成(87Sr/86Sr)も同様に支川小流域毎に異なる値を示し,4流域の地質の占める割合の違いによる影響を示している。
流域内を流動する地下水の酸素安定同位体比(δ18O),水素安定同位体比(δD)およびストロンチウム同位体組成(87Sr/86Sr)は,近隣を流下する河川水に近い値を示しており,該当地域における浅層地下水は河川水からの涵養が支配的であることを示唆している。また,流量観測により示された河川流量の減少傾向の結果は,トレーサーにより示唆された地下水と地表水の交流関係について支持する結果である.