日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GC 固体地球化学

[S-GC51] 希ガス同位体地球惑星科学の最前線

2015年5月24日(日) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*兵藤 博信(岡山理科大学自然科学研究所)、角野 浩史(東京大学大学院理学系研究科附属地殻化学実験施設)、田上 高広(京都大学大学院理学研究科)

18:15 〜 19:30

[SGC51-P05] 宇宙線生成^{39}Arを使った月表面のK-Ar年代分布測定の可能性について

竹島 裕子1、*兵藤 博信2板谷 徹丸2 (1.NEC宇宙航空システム、2.岡山理大自然研)

キーワード:^{39}Ar, 宇宙線生成, 年代分布, ^{40}Ar/^{39}Ar年代, 月面

月表面探査において迅速にかつ広範囲に年代分布を調べるにはその場分析を行う事が必要になる. 宇宙線照射により39Kから39Arが生成されていることは隕石の希ガス研究の初期から知られ, 40Ar/39Ar年代測定法の開発のきっかけにもなった. 宇宙線中の速中性子束密度が時間的にほぼ一定と考えられる環境では長い時間がたつと生成と放射性壊変の平衡状態が実現され、岩石中の39ArはそのK濃度に応じて一定値をしめすようになる. 太陽系での速中性子の供給源は主に太陽である. 太陽の活動周期による変化で速中性子密度も変化するが39Arの半減期の293年ではその供給はほぼ一定と見なすことは可能であろう. ほぼ同じ照射条件下にあるとみなすことができる隕石試料または月表面の岩石を用いて原理的にはその40Ar/39Ar年代が可能になる. すなわちそれらの一つを実験室で標準試料として正確な年代測定を行う. その年代を使った同じ試料の野外でのJ-値を求め, 他の未知試料の40Ar/39Ar比を測定することで年代測定が可能になる. 干渉同位体による39Arの生成はCa/K比が極端に大きくない限り影響は大きくならない. 中性子束密度は照射される物体の深さに応じて減衰するので余り深い位置にある試料に対しては有効でない. しかし40Arのバックグラウンドや質量測定を必要としない点, 36Arを考慮する必要がほとんど無い点では地球上での測定より簡便で迅速な測定に向いている可能性がある.