18:15 〜 19:30
[PEM27-P25] EISCATレーダートロムソ観測所における2015年3月までのSTEL光学観測結果
キーワード:オーロラ, 大気光, 光学装置, 電離圏, 熱圏, 極域
太陽地球環境研究所(Solar-Terrestrial Environment Laboratory; STEL)は欧州非干渉散乱(European Incoherent Scatter; EISCAT)レーダーがあるノルウェーのトロムソ(北緯69.6o、東経19.2o)で10年以上に渡り光学観測を実施してきた。トロムソは欧米・アジア諸国が様々な光学・電波観測装置を設置し、EISCATレーダーを軸とした国際共同観測研究を展開する世界最大級の観測拠点である。2015年1月現在、我々はトロムソ観測所に以下に述べる5台の光学観測装置を設置し、10月から翌3月の約半年間、自動観測とともに共同研究者からの要請に応じた観測モードで運用を行っている。尚、これら光学観測装置以外にナトリウムライダーが2010年10月から稼働している。
1. 3波長フォトメータ
1997年1月に最初のキャンペーン観測を実施後、2001年10月に自動運用を開始した本装置は現在3つの光学フィルター(427.8 nm, 630.0 nm, 557.7 nm)を持ち、20Hzサンプリングでデータを取得する。2010年10月に運用・データの自動処理システムを更新した。常に磁力線方向に固定した観測を行い、EISCAT UHFレーダーの主要観測モードの一つであるCP-1モード(同じく磁力線方向にアンテナ方向を固定した観測)とほぼ同じ空間を同時に観測することができる。
2. 天候・オーロラ観測用デジタルカメラ
対流圏高度の雲の発生状況を把握することは、光学観測データの解析にとって必須事項である。光学フィルターを通した単色画像では天候を判別しにくく、デジタルカメラで撮影されるカラー画像がより適している。そこで2001年10月からデジタルカメラによる自動観測を開始した。撮影画像は天候確認だけでなく、磁力線付近のオーロラ微細構造などオーロラ形態情報の提供も兼ねている。
3. プロトン全天カメラ
2006年10月から自動運用を開始した本装置は、下向き沿磁力線電流の発生領域における電離圏応答を捉えることを目的に設置された。上向き沿磁力線電流の発生領域(オーロラアーク発生領域に相当)に近接するオーロラ発光が弱く、電離圏電子密度が周辺より極端に低い領域には、下向き沿磁力線電流と磁場に垂直な電場が発生すると考えられている。これら電流回路の連続性を維持するために下向き沿磁力線電場が形成され、磁気圏からのプロトン降込みが誘導される結果、プロトン発光(486.1 nm)が期待される。これまでの観測で数例だがこの仮説を裏付ける観測結果が取得されている。
4. 多波長全天カメラ
オーロラや大気光を観測する目的で2009年1月に設置された本装置は、6種類の光学フィルターが装着されたホイールを備え、積分時間や観測波長の順番などを任意に設定できる自動観測プログラムによって制御されている。現在保有する光学フィルターの波長は、557.7 nm、630.0 nm、OHバンド、589.3 nm、572.5 nm、732.0 nmである。
5. ファブリペロー干渉計(Fabry-Perot interferometer: FPI)
多波長全天カメラ(上記4)と同時にトロムソ観測所に設置された本装置は、視野角約4oの狭視野タイプの装置であり、3種類の光学フィルターを装着したホイールを持つ。装置上部にはスカイスキャナ-と呼ばれる回転モーター付ミラーがあり、観測プログラムでホイールとスカイスキャナ-を制御することで、観測波長やその選択順序と積分時間、視線方向を科学目的に合わせて任意に設定することができる。観測される物理量は中性大気の風速と温度である。
これらの光学観測装置は、EISCATレーダーをはじめ様々な観測装置との共同観測実験に利用されてきた。最初の装置が自動観測を始めて以来、稼働期間は太陽活動周期の1サイクルに近く、超高層大気の長期変動研究やイベント解析を行う上で貴重なデータセットが整備された。これまでに蓄積された観測データのクイックルックはウェブページで公開されている(www.stelab.nagoya-u.ac.jp/~eiscat/data/EISCAT.html)。今後も全装置の自動観測を継続しながら様々な観測実験に参画し、国内外の共同研究者の研究活動に寄与していく。
1. 3波長フォトメータ
1997年1月に最初のキャンペーン観測を実施後、2001年10月に自動運用を開始した本装置は現在3つの光学フィルター(427.8 nm, 630.0 nm, 557.7 nm)を持ち、20Hzサンプリングでデータを取得する。2010年10月に運用・データの自動処理システムを更新した。常に磁力線方向に固定した観測を行い、EISCAT UHFレーダーの主要観測モードの一つであるCP-1モード(同じく磁力線方向にアンテナ方向を固定した観測)とほぼ同じ空間を同時に観測することができる。
2. 天候・オーロラ観測用デジタルカメラ
対流圏高度の雲の発生状況を把握することは、光学観測データの解析にとって必須事項である。光学フィルターを通した単色画像では天候を判別しにくく、デジタルカメラで撮影されるカラー画像がより適している。そこで2001年10月からデジタルカメラによる自動観測を開始した。撮影画像は天候確認だけでなく、磁力線付近のオーロラ微細構造などオーロラ形態情報の提供も兼ねている。
3. プロトン全天カメラ
2006年10月から自動運用を開始した本装置は、下向き沿磁力線電流の発生領域における電離圏応答を捉えることを目的に設置された。上向き沿磁力線電流の発生領域(オーロラアーク発生領域に相当)に近接するオーロラ発光が弱く、電離圏電子密度が周辺より極端に低い領域には、下向き沿磁力線電流と磁場に垂直な電場が発生すると考えられている。これら電流回路の連続性を維持するために下向き沿磁力線電場が形成され、磁気圏からのプロトン降込みが誘導される結果、プロトン発光(486.1 nm)が期待される。これまでの観測で数例だがこの仮説を裏付ける観測結果が取得されている。
4. 多波長全天カメラ
オーロラや大気光を観測する目的で2009年1月に設置された本装置は、6種類の光学フィルターが装着されたホイールを備え、積分時間や観測波長の順番などを任意に設定できる自動観測プログラムによって制御されている。現在保有する光学フィルターの波長は、557.7 nm、630.0 nm、OHバンド、589.3 nm、572.5 nm、732.0 nmである。
5. ファブリペロー干渉計(Fabry-Perot interferometer: FPI)
多波長全天カメラ(上記4)と同時にトロムソ観測所に設置された本装置は、視野角約4oの狭視野タイプの装置であり、3種類の光学フィルターを装着したホイールを持つ。装置上部にはスカイスキャナ-と呼ばれる回転モーター付ミラーがあり、観測プログラムでホイールとスカイスキャナ-を制御することで、観測波長やその選択順序と積分時間、視線方向を科学目的に合わせて任意に設定することができる。観測される物理量は中性大気の風速と温度である。
これらの光学観測装置は、EISCATレーダーをはじめ様々な観測装置との共同観測実験に利用されてきた。最初の装置が自動観測を始めて以来、稼働期間は太陽活動周期の1サイクルに近く、超高層大気の長期変動研究やイベント解析を行う上で貴重なデータセットが整備された。これまでに蓄積された観測データのクイックルックはウェブページで公開されている(www.stelab.nagoya-u.ac.jp/~eiscat/data/EISCAT.html)。今後も全装置の自動観測を継続しながら様々な観測実験に参画し、国内外の共同研究者の研究活動に寄与していく。