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[SSS30-02] スペクトル要素法を用いた動的効果を含む2次元in-plane地震サイクルシミュレーション手法の開発
キーワード:地震サイクルシミュレーション, 動的シミュレーション, 速度・状態依存摩擦則, スペクトル要素法, プレート間地震
今日に至るまで、地震サイクルシミュレーションが行われ、過去の地震発生履歴を説明してきた (eg. Tse and Rice 1986; Stuart, 1988)。その多くは、Rice(1993) で提唱された放射減衰項によって運動方程式の慣性項を近似する、準動的な定式化によって行われている。これは、慣性項の効果を全て考慮する動的定式化はCPU・メモリのコストが膨大なためである。一方、Lapusta et al. (2000, 2009) は動的効果を含み、地震性・非地震性のすべりから核形成過程まで、地震サイクルの全てを詳細に計算できる手法を開発した。その結果によれば、動的定式化によるシミュレーション結果は準動的定式化による結果と大きく異なり、繰り返し間隔や破壊開始点の相違など、地震サイクルの質的変化も生じうることが示された (Thomas et al., 2014)。しかし、これらのモデルはスペクトル境界積分法に基づいており、簡単な断層モデルにしか適用できない。したがって、このような動的効果を含んだシミュレーションは沈み込み帯で発生するプレート間地震に対しては行われていない。
これまでの研究から、沈み込み帯におけるプレート間地震のような逆断層では、地震時に地球の自由表面との相互作用により断層の法線応力が変化することが知られている。こういった法線応力の変化は地震時の破壊過程に影響を及ぼすだけでなく、地震後の残留応力の変化によって長期的な地震のサイクルにも影響すると考えられる。したがって、傾斜断層による効果と動的効果の両方を含んだシミュレーションを行うことは重要と考えられる。
近年、Kaneko et al. (2011)において、動的なSEM(スペクトル要素法)と準静的なSEMのスイッチ型のスキームを用いることで動的効果を含んだanti-planeの地震サイクルシミュレーション手法が開発された。本研究においては動的破壊コード SEM2DPACK (Ampuero, 2002) を拡張し、手法を実装した。また、プレート間地震を2次元的に取り扱うにはin-planeな断層モデルを仮定するのが適切であるから、in-planeに適用できるよう手法の拡張を行った。In-planeな断層モデルにおいては、Kaneko et al. (2011) のanti-planeな断層モデルにおいては省略されていた断層垂直方向の変位を考慮する必要がある。このような断層垂直方向の変位は境界要素法などの手法では暗に考慮されているが、スペクトル要素法などの領域解法では陽に更新する必要性がある。
本研究では拡張した手法を用いて、簡単な弾性体中の平面断層モデルを仮定して地震サイクルシミュレーションを行った。本研究のモデルはKaneko et al. (2011; Fig.2)のモデルと同様であるが、in-plane断層として扱っている。また、準静的スキームの代わりに準動的スキームを用いている。断層の境界条件としては速度と状態に依存する摩擦則を用いており、断層の両端には一定速度ですべる速度境界を設定している。本研究では開発したコードの正しさを評価するため、異なる空間的な離散化の細かさでのシミュレーション結果が変わらないことを確かめた。また、臨界核形成サイズを等しく設定したanti-planeのモデルと結果を比較することで地震サイクルの挙動について検証を行っている。準動的定式化と動的定式化の違いに関してはすでにanti-plane、3次元の場合で検証が行われているが(e.g. Lapusta et al., 2000; Lapusta and Liu 2009)、本研究でも純粋なin-plane問題に関して同様の結果を得た。
本研究では地表を含む傾斜断層のモデルについても、同手法の適用を行っている。2011年東北地方太平洋沖地震を模した、均質半無限弾性体中の非対称な20度の傾斜断層モデルを仮定し、1つの地震イベントの動的破壊過程シミュレーションに成功している。また、地表と交差する対称な90度の傾斜断層モデルにおいて、地震サイクルのシミュレーションを行うことにも成功している。しかし、傾斜断層を扱う場合、現状では地震間の準動的取り扱いにまだ困難があり、発表ではそのことについても議論する。
これまでの研究から、沈み込み帯におけるプレート間地震のような逆断層では、地震時に地球の自由表面との相互作用により断層の法線応力が変化することが知られている。こういった法線応力の変化は地震時の破壊過程に影響を及ぼすだけでなく、地震後の残留応力の変化によって長期的な地震のサイクルにも影響すると考えられる。したがって、傾斜断層による効果と動的効果の両方を含んだシミュレーションを行うことは重要と考えられる。
近年、Kaneko et al. (2011)において、動的なSEM(スペクトル要素法)と準静的なSEMのスイッチ型のスキームを用いることで動的効果を含んだanti-planeの地震サイクルシミュレーション手法が開発された。本研究においては動的破壊コード SEM2DPACK (Ampuero, 2002) を拡張し、手法を実装した。また、プレート間地震を2次元的に取り扱うにはin-planeな断層モデルを仮定するのが適切であるから、in-planeに適用できるよう手法の拡張を行った。In-planeな断層モデルにおいては、Kaneko et al. (2011) のanti-planeな断層モデルにおいては省略されていた断層垂直方向の変位を考慮する必要がある。このような断層垂直方向の変位は境界要素法などの手法では暗に考慮されているが、スペクトル要素法などの領域解法では陽に更新する必要性がある。
本研究では拡張した手法を用いて、簡単な弾性体中の平面断層モデルを仮定して地震サイクルシミュレーションを行った。本研究のモデルはKaneko et al. (2011; Fig.2)のモデルと同様であるが、in-plane断層として扱っている。また、準静的スキームの代わりに準動的スキームを用いている。断層の境界条件としては速度と状態に依存する摩擦則を用いており、断層の両端には一定速度ですべる速度境界を設定している。本研究では開発したコードの正しさを評価するため、異なる空間的な離散化の細かさでのシミュレーション結果が変わらないことを確かめた。また、臨界核形成サイズを等しく設定したanti-planeのモデルと結果を比較することで地震サイクルの挙動について検証を行っている。準動的定式化と動的定式化の違いに関してはすでにanti-plane、3次元の場合で検証が行われているが(e.g. Lapusta et al., 2000; Lapusta and Liu 2009)、本研究でも純粋なin-plane問題に関して同様の結果を得た。
本研究では地表を含む傾斜断層のモデルについても、同手法の適用を行っている。2011年東北地方太平洋沖地震を模した、均質半無限弾性体中の非対称な20度の傾斜断層モデルを仮定し、1つの地震イベントの動的破壊過程シミュレーションに成功している。また、地表と交差する対称な90度の傾斜断層モデルにおいて、地震サイクルのシミュレーションを行うことにも成功している。しかし、傾斜断層を扱う場合、現状では地震間の準動的取り扱いにまだ困難があり、発表ではそのことについても議論する。