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[SGC50-05] 金属-硫化物メルト間の元素分配挙動
キーワード:元素分配, 金属, 硫化物, 超高圧
金属の固相-液相間の元素分配挙動は、地球型惑星の核の進化を解明するための重要な情報である。珪酸塩系の研究では、分配係数がイオン半径や結晶構造と密接に関連している事が知られている事から、金属系においても原子半径との関連性が議論されている。例えば、 Van Orman et al. (2008) は高圧下でFe-S系でのRe,Os,Ptの分配係数を測定し、原子半径を用いればこれらの結果をLattice Strain Model (Blundy & Wood, 1994)で説明できるとした。一方、Stewart et al. (2009)は原子半径ではなく、Neutral Atom Radius (Clementi et al. 1967)を用いる事により、説明できると主張した。しかしながら、固相の基本構造を形成するFeよりもかなり大きなOsが最大の分配係数を示す事は奇妙であった。金属系の元素分配係数は、液相中の軽元素濃度(硫黄、リン、炭素)に大きく依存している事が知られており、分配係数が化学的親和性と関連している事が考えられる。本研究では異なる硫黄濃度でFeNi-S系の高圧融解実験を行い、分配挙動の変化を観察した。
白金属などの14元素をそれぞれ約150ppm添加したFe-Ni(95:5)合金を、アーク放電法を用いて合成した。この合金を少量のFeS粉末とともにMgOカプセルに入れ、東京工業大学の川井型マルチアンビルを用いて高圧融解実験を行った。回収した試料の主成分元素組成はEPMAで測定し、微量元素濃度は京都大学のLA-ICP-MSで測定した。
得られた分配係数は、これまでの研究と同様に、液相中の硫黄濃度に大きく依存していた。このため、化学的親和性を排除して原子半径と分配係数の関係のみを観察するためには、純粋な金属だけの系での分配係数から議論する必要がある。本研究では、硫黄濃度が減少するとともに、元素間の分配係数の差が減少する事が観察された。このため、硫黄を含まない系では、AuやWのようにFeよりも非常に大きな元素でも、その分配係数に大きな差は無いと推定される。
Blundy & Wood(1994), Nature 372, 452-454.
Clementi et al.(1967), J. Chem. Phys., 47, 1300-1307.
Stewart et al.(2009), Earth Planet. Sci. Lett. 284, 302-309.
Van Orman et al. 2008), Earth Planet. Sci. Lett. 274, 250-257.
白金属などの14元素をそれぞれ約150ppm添加したFe-Ni(95:5)合金を、アーク放電法を用いて合成した。この合金を少量のFeS粉末とともにMgOカプセルに入れ、東京工業大学の川井型マルチアンビルを用いて高圧融解実験を行った。回収した試料の主成分元素組成はEPMAで測定し、微量元素濃度は京都大学のLA-ICP-MSで測定した。
得られた分配係数は、これまでの研究と同様に、液相中の硫黄濃度に大きく依存していた。このため、化学的親和性を排除して原子半径と分配係数の関係のみを観察するためには、純粋な金属だけの系での分配係数から議論する必要がある。本研究では、硫黄濃度が減少するとともに、元素間の分配係数の差が減少する事が観察された。このため、硫黄を含まない系では、AuやWのようにFeよりも非常に大きな元素でも、その分配係数に大きな差は無いと推定される。
Blundy & Wood(1994), Nature 372, 452-454.
Clementi et al.(1967), J. Chem. Phys., 47, 1300-1307.
Stewart et al.(2009), Earth Planet. Sci. Lett. 284, 302-309.
Van Orman et al. 2008), Earth Planet. Sci. Lett. 274, 250-257.