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[HSC24-04] 日本全国を対象とした津波ハザード評価の取り組み(日本海溝沿いの津波波源を対象とした場合)
キーワード:津波, ハザード評価, 確率
津波対策を進める上で将来襲来し得る津波に関するハザード情報は必要不可欠な情報となる。平成23年東北地方太平洋沖地震によって東日本にもたらされた甚大な津波被害を踏まえ、防災科研は今後発生する可能性がある地震津波に対する事前の備え・対策に資することを目的とし、平成24年度から津波ハザード評価の研究開発への取り組みを開始した(藤原・他, 2013, JpGU)。日本全国をいくつかの領域に区分して順番に評価を行う予定としており、昨年日本海溝沿いの津波波源を対象に広域な範囲を概観した津波ハザード評価の方法についての基本的な考え方とそのハザード評価結果の試作版について発表した(平田・他, 2014, JpGU)。今回、昨年からさらに検討を進めたので、津波ハザード評価方法とハザード評価結果の最新版について報告する。
まず、確率論的津波ハザード評価の方法の概要は以下のとおりである;(i)地震調査研究推進本部地震調査委員会によって長期評価された地震とともに、「震源を予め特定しにくい地震」(地震調査委員会長期評価部会、2002)およびそれ以外の地震を含む、将来発生し得るすべての地震を考慮する。この際、地震調査委員会によって地震の発生確率あるいは平均発生間隔が推定されている場合はそれに基づき地震の発生確率を与え、発生確率が推定されていない場合は、日本列島周辺の地震活動カタログから導いたG-R則から地震規模毎に、単位期間当たりの発生頻度を算出し、地震の発生が定常ポアソン過程に従うと見なして発生確率を計算する。地震調査委員会によって評価された地震は、(1)「繰り返し発生するプレート間地震」、(2)「東北地方太平洋沖型の地震」,(3)「津波地震」、(4)「プレート内地震」の4つに、それ以外の地震は、(5)「最大クラスの地震」、(6) 「(2)及び(5)以外の連動型地震」(「その他の連動地震」と略)、(7)「震源を特定しにくい地震」、の3つに、それぞれ類型化する。(ii) (i)のすべての地震に対してあらかじめ定められたルール(是永・他,2014,JpGU;遠山・他, 本大会)に基づき簡素化した「特性化波源断層モデル群」を設定する。(iii)すべての特性化波源断層モデル群を対象に、初期水位を計算(新たな計算方法を検討中、秋山・他,2014,JpGU;本大会)し、最小50m間隔の陸上・海底地形データのネスティング・グリッド・システムを用いて、移流項、海底摩擦項、全水深項を含む非線形長波方程式に、陸側に遡上境界条件、海側に透過条件を課し、差分法を適用して多数の津波予測計算を実施、(iv) 津波予測計算結果の不確実性やすべり不均質の不確実性(阿部・他,2014, JpGU)を考慮し、確率論的な統合によって(阿部・他, 本大会)、広範囲におよぶ沿岸津波高のハザード評価をおこなう。
次に、今回得られた最新版の日本海溝沿いの津波ハザード評価結果(2014年1月1日を起点とした30年超過確率で評価)について、青森県八戸市、宮城県雄勝町、福島県磐城市、千葉県御宿町の4地点を例に説明する。同じ超過確率レベルで比較すると、八戸市と雄勝町では、さらに南側の2地点に比べて、沿岸での津波の高さが大きくなると評価される。八戸市では、沿岸津波高さが20m未満では、(1)「繰り返し発生するプレート間地震」のうち、三陸沖北部で繰り返し発生する地震による津波の寄与が最も大きく、20m超になると(5)「最大クラスの地震」からの津波の寄与が優勢になる。八戸市では、今後発生が懸念されている三陸沖北部の津波に対する警戒が引き続き必要である。一方、雄勝町では、三陸沖北部からやや距離が離れるため、三陸沖北部の地震による津波の寄与が相対的に低下し、沿岸津波高さ10m未満では、(6)のその他の連動地震の津波の寄与と同等程度になる。そして10m超では(5)の「最大クラスの地震」からの津波が支配的になる。これに対し、評価対象領域の南部に位置する磐城市と御宿町では、沿岸での津波高さが相対的に低くなると評価される。両地点において、沿岸津波高さで5mを超える津波を襲来させる可能性が最も高いのは、(5)「最大クラスの地震」、次いで(6)「その他の連動地震」である。特に、御宿町では、(6)の「その他の連動地震」が沿岸津波高さが3mを超える場合に最も寄与していることがわかる。房総半島沖合には2011年東北地方太平洋沖地震によって破壊されなかった領域が残っており、その未破壊領域を破壊する連動地震が(6)の「その他の連動地震」のカテゴリーに含まれるているからと考えられる。また、宮城県石巻市南西岸から仙台市にかけての沿岸は、他の海岸に比べ、今回考えた地震断層モデルのいずれによっても沿岸最大高さは低くなる傾向が見られる。
まず、確率論的津波ハザード評価の方法の概要は以下のとおりである;(i)地震調査研究推進本部地震調査委員会によって長期評価された地震とともに、「震源を予め特定しにくい地震」(地震調査委員会長期評価部会、2002)およびそれ以外の地震を含む、将来発生し得るすべての地震を考慮する。この際、地震調査委員会によって地震の発生確率あるいは平均発生間隔が推定されている場合はそれに基づき地震の発生確率を与え、発生確率が推定されていない場合は、日本列島周辺の地震活動カタログから導いたG-R則から地震規模毎に、単位期間当たりの発生頻度を算出し、地震の発生が定常ポアソン過程に従うと見なして発生確率を計算する。地震調査委員会によって評価された地震は、(1)「繰り返し発生するプレート間地震」、(2)「東北地方太平洋沖型の地震」,(3)「津波地震」、(4)「プレート内地震」の4つに、それ以外の地震は、(5)「最大クラスの地震」、(6) 「(2)及び(5)以外の連動型地震」(「その他の連動地震」と略)、(7)「震源を特定しにくい地震」、の3つに、それぞれ類型化する。(ii) (i)のすべての地震に対してあらかじめ定められたルール(是永・他,2014,JpGU;遠山・他, 本大会)に基づき簡素化した「特性化波源断層モデル群」を設定する。(iii)すべての特性化波源断層モデル群を対象に、初期水位を計算(新たな計算方法を検討中、秋山・他,2014,JpGU;本大会)し、最小50m間隔の陸上・海底地形データのネスティング・グリッド・システムを用いて、移流項、海底摩擦項、全水深項を含む非線形長波方程式に、陸側に遡上境界条件、海側に透過条件を課し、差分法を適用して多数の津波予測計算を実施、(iv) 津波予測計算結果の不確実性やすべり不均質の不確実性(阿部・他,2014, JpGU)を考慮し、確率論的な統合によって(阿部・他, 本大会)、広範囲におよぶ沿岸津波高のハザード評価をおこなう。
次に、今回得られた最新版の日本海溝沿いの津波ハザード評価結果(2014年1月1日を起点とした30年超過確率で評価)について、青森県八戸市、宮城県雄勝町、福島県磐城市、千葉県御宿町の4地点を例に説明する。同じ超過確率レベルで比較すると、八戸市と雄勝町では、さらに南側の2地点に比べて、沿岸での津波の高さが大きくなると評価される。八戸市では、沿岸津波高さが20m未満では、(1)「繰り返し発生するプレート間地震」のうち、三陸沖北部で繰り返し発生する地震による津波の寄与が最も大きく、20m超になると(5)「最大クラスの地震」からの津波の寄与が優勢になる。八戸市では、今後発生が懸念されている三陸沖北部の津波に対する警戒が引き続き必要である。一方、雄勝町では、三陸沖北部からやや距離が離れるため、三陸沖北部の地震による津波の寄与が相対的に低下し、沿岸津波高さ10m未満では、(6)のその他の連動地震の津波の寄与と同等程度になる。そして10m超では(5)の「最大クラスの地震」からの津波が支配的になる。これに対し、評価対象領域の南部に位置する磐城市と御宿町では、沿岸での津波高さが相対的に低くなると評価される。両地点において、沿岸津波高さで5mを超える津波を襲来させる可能性が最も高いのは、(5)「最大クラスの地震」、次いで(6)「その他の連動地震」である。特に、御宿町では、(6)の「その他の連動地震」が沿岸津波高さが3mを超える場合に最も寄与していることがわかる。房総半島沖合には2011年東北地方太平洋沖地震によって破壊されなかった領域が残っており、その未破壊領域を破壊する連動地震が(6)の「その他の連動地震」のカテゴリーに含まれるているからと考えられる。また、宮城県石巻市南西岸から仙台市にかけての沿岸は、他の海岸に比べ、今回考えた地震断層モデルのいずれによっても沿岸最大高さは低くなる傾向が見られる。