日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS23] 月の科学と探査

2015年5月26日(火) 09:00 〜 10:45 A02 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*長岡 央(早稲田大学先進理工学部)、諸田 智克(名古屋大学大学院環境学研究科)、Masaki N Nishino(Solar-Terrestrial Environment Laboratory, Nagoya University)、本田 親寿(会津大学)、長 勇一郎(立教大学理学部)、座長:大竹 真紀子(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部 固体惑星科学研究系)、小川 佳子(会津大学)

09:45 〜 10:00

[PPS23-16] 高圧における鉄ニッケル炭素系の相関係を用いた月の核の構造

*岸本 俊八1浦川 啓1 (1.岡山大学大学院自然科学研究科)

キーワード:高圧, 月の核, Fe-Ni-C系, 相関係

アポロの地震波データの再解析から月の内部構造モデルが再検討されている。Weber等(2011)は金属核の構造をFe-Sメルトの相関係と弾性データに基づいて推定し,核は最大6wt%の硫黄を含むとしている。ジャイアントインパクトによる月の形成からは揮発性の高い元素の存在度は限られてくることが予想されるが,月の核に炭素を含む場合を検討した。本研究では,月の核の圧力に相当する5 GPaでFe-Ni-C系の相関係に関する実験的研究を行い,月の核の構造を考察した。
高温高圧実験はマルチアンビル装置を用いて行った。Fe-C系は5 GPaにおいてFeとFe3Cの共融系となり共融温度は1425±25 Kであった。共融点の炭素含有量は18 at%で,メルトの炭素含有量がこの値より小さければ冷却に伴いγ-Feが固相として析出する。γ-Feは共融温度で最大値8 at%の炭素を固溶する。このような溶融関係はNiの添加によって変化しなかった。また中間化合物(Fe,Ni)3Cと(Fe,Ni)7C3は鉄に富む領域で安定であり,(Fe,Ni)3CはNiを最大10 at%固溶するのに対して(Fe,Ni)7C3はNiをほとんど固溶しない。
Weber 等(2011)は月震の再解析結果に特徴的な二つの反射面がみられたことから,月の核は二層構造であると提案した。本研究では彼らの地震波の解析結果に基づいて,核に含まれる軽元素が炭素だけである場合の構造について考察した。Fe-C系の溶融関係より月の核は炭素に富んだ流体の外核と固体の内核の二層構造であり,核の炭素含有量は最大で8 at%と推定される。また,核が硫黄を軽元素として含むモデルと比べて,月の内核と外核の密度差は非常に小さくなる。