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[BCG28-P14] カナダ-アビティビ緑色岩帯ポッター鉱山における27億年前の海底熱水活動と母岩の変質作用
キーワード:火山性塊状硫化物鉱床, アビティビ緑色岩帯, コマチアイト, メタン酸化菌, 熱水変質作用
火山性塊状硫化物鉱床(VMS鉱床)は海底付近において熱水が急冷されることによって形成される鉱床であり、アビティビ緑色岩帯内部に位置するポッター鉱山は過去にVMS鉱床の採掘が行われていた場所の一つである。ポッター鉱山におけるVMS鉱床の母岩は主にソレアイト質玄武岩のハイアロクラスタイトから成り、堆積岩や貫入岩を伴う場合もある。これらの母岩は上下を厚いコマチアイト層に挟まれており、鉱石は主に脈状もしくは交染状に含まれているが、一部では堆積構造を示す層状のものも見られる。ポッター鉱山のVMS鉱床においては鉱床付近の鉱物や有機物に着目した研究がこれまでに為されておらず、母岩に含まれる鉱物の形成過程や有機物の起源に関しては明らかになっていない。そこで、本研究においては主に鉱床付近のボーリングコア試料に含まれる鉱物や有機炭素を対象とした分析を行った。現地の露頭調査においては、下部コマチアイト層に熱水変質の痕跡は見られず、海底熱水がVMS鉱床を形成した際に下部コマチアイト層を通過していたか不明であったが、上部コマチアイト層では局所的に蛇紋石化の激しい場所が見られ、鉱床形成後も海底熱水活動が長期にわたって継続していたことが明らかになった。一方で試料の分析結果より、鉱石は主に磁硫鉄鉱、閃亜鉛鉱、黄銅鉱から成り、閃亜鉛鉱の多くは磁硫鉄鉱と非平衡である事が明らかになった。また、熱水変質によって生じた鉱物に関しては、母岩の種類によって違いが認められ、ハイアロクラスタイトが滑石に富んでいるのに対して堆積岩はFeに富んだ緑泥石を含む傾向が見られた。そして、炭素安定同位体組成からは、メタン酸化菌の存在と熱水活動に伴った有機物の熱分解が進行していた可能性が示された。以上の結果に加え、本研究においては硫化物と共存する炭酸塩鉱物が見られたことから、熱水のpHやCO2分圧の上昇が示唆され、これはポッター鉱山における熱水活動の大きな特徴であると言える。