17:15 〜 17:30
[STT54-05] Pi-SAR-L2/InSARによる新燃岳火口内の地表変動
キーワード:航空機SAR, 干渉解析, 新燃岳, 火口, 溶岩, 地表変動
2011年1月に新燃岳(霧島山)において噴火が発生した.Ozawa and Kozono (2013)は衛星SARの散乱強度画像を解析し,3回の準プリニー式噴火が発生した後の1月29日から31日の間に,溶岩が火口内に88.7m^3/secのほぼ一定の速度で流出したことを明らかにした.その後,ブルカノ式噴火が間欠的に発生する噴火様式に変化したが,噴火回数は時間とともに減少し,2011年9月の爆発以降,噴火は発生していない.しかし,Miyagi et al. (2014)は,RADARSAT-2やTerraSAR-X等の衛星SARデータを用いた干渉解析を実施し,それ以降にもゆっくりとした溶岩流出が継続していることを明らかにした.その溶岩流出速度は時間と共に減衰する傾向にあったが,2013年5月の時点においても,50~100 m^3/day程度の流出が求まった.
本研究では,その後の火口内の地表変動を調査するため,宇宙航空研究開発機構(JAXA)の航空機搭載型SAR(センサー名:Pi-SAR-L2)のデータを用いたSAR干渉解析を試みた.本解析で使用したPi-SAR-L2データは,2013年9月13日と2014年8月7日に,3パスの軌道から観測されたものである.地形縞のシミュレーションにおいては,噴火後に取得されたRADARSAT-2データを用いたSBAS解析から求めた地形データを用いた.得られた差分SAR干渉画像においては非地殻変動成分が残存していたが,その後の解析領域を新燃岳火口周辺の約1km×1kmの範囲に限定し,その領域内での非地殻変動成分は面で近似できると仮定して,火口外の位相差が0になるようにパラメータを推定して補正した.その結果,これまでの衛星SARの解析においてスラントレンジ短縮変化が求まっていた領域とほぼ同じ領域において,同様の変化が求まった.さらに,本解析においては3パスの軌道からのスラントレンジ変化が求まっているので,これらの結果から3次元地表変位ベクトルを求めた.推定された上下変位は最大で20cmを超えているのに対して,水平成分はほとんどの領域で3cm以下であった.このことは,流出している溶岩の粘性が高く,水平方向への流動が小さいことを示唆する.
推定された上下変位分布から,2013年9月13日から2014年8月7日の期間の体積増加量は10044m^3と求まった.一方,衛星SARに関しては,2014年4月16日までのデータが利用可能であり,それらのデータを用いたSAR干渉解析から,2013年9月13日から2014年4月16日までの体積増加量は7507-7704 m^3と求まった.よって,2014年4月16日から2014年8月7日までの体積増加量は,2340-2537 m^3と推定される.Huppert and Woods (2002)は過剰圧を持つ浅部マグマだまりが存在する場合の溶岩流出量の時間変化をモデル化しており,深部からの浅部マグマだまりへの溶岩流入が無い場合における溶岩流出量の時間変化のモデルを,衛星搭載型SARの干渉解析から求まっている体積変化量に当てはめたところ,2014年4月16日から2014年8月7日までの体積増加量は2339m^3と求まり,観測結果と良く一致する.Miyagi et al. (2014)は,2013年5月までの衛星搭載型SARの解析結果から,深部からの浅部マグマだまりへのマグマ供給が継続していることを示唆する結果を示しており,本解析の結果は,その深部からのマグマ供給が減少したことを示唆する.
謝辞. Pi-SAR-L2データは,JAXAとの共同研究(RA5)に基づいて提供されたものであり,原初データの所有権はJAXAが有する.また,TerraSAR-X 及びTanDEM-X データは,JAXA とDLR による衛星を利用した災害監視に係る共同研究を通じて配布されたものであり,原初データの所有権はDLR が有する.
本研究では,その後の火口内の地表変動を調査するため,宇宙航空研究開発機構(JAXA)の航空機搭載型SAR(センサー名:Pi-SAR-L2)のデータを用いたSAR干渉解析を試みた.本解析で使用したPi-SAR-L2データは,2013年9月13日と2014年8月7日に,3パスの軌道から観測されたものである.地形縞のシミュレーションにおいては,噴火後に取得されたRADARSAT-2データを用いたSBAS解析から求めた地形データを用いた.得られた差分SAR干渉画像においては非地殻変動成分が残存していたが,その後の解析領域を新燃岳火口周辺の約1km×1kmの範囲に限定し,その領域内での非地殻変動成分は面で近似できると仮定して,火口外の位相差が0になるようにパラメータを推定して補正した.その結果,これまでの衛星SARの解析においてスラントレンジ短縮変化が求まっていた領域とほぼ同じ領域において,同様の変化が求まった.さらに,本解析においては3パスの軌道からのスラントレンジ変化が求まっているので,これらの結果から3次元地表変位ベクトルを求めた.推定された上下変位は最大で20cmを超えているのに対して,水平成分はほとんどの領域で3cm以下であった.このことは,流出している溶岩の粘性が高く,水平方向への流動が小さいことを示唆する.
推定された上下変位分布から,2013年9月13日から2014年8月7日の期間の体積増加量は10044m^3と求まった.一方,衛星SARに関しては,2014年4月16日までのデータが利用可能であり,それらのデータを用いたSAR干渉解析から,2013年9月13日から2014年4月16日までの体積増加量は7507-7704 m^3と求まった.よって,2014年4月16日から2014年8月7日までの体積増加量は,2340-2537 m^3と推定される.Huppert and Woods (2002)は過剰圧を持つ浅部マグマだまりが存在する場合の溶岩流出量の時間変化をモデル化しており,深部からの浅部マグマだまりへの溶岩流入が無い場合における溶岩流出量の時間変化のモデルを,衛星搭載型SARの干渉解析から求まっている体積変化量に当てはめたところ,2014年4月16日から2014年8月7日までの体積増加量は2339m^3と求まり,観測結果と良く一致する.Miyagi et al. (2014)は,2013年5月までの衛星搭載型SARの解析結果から,深部からの浅部マグマだまりへのマグマ供給が継続していることを示唆する結果を示しており,本解析の結果は,その深部からのマグマ供給が減少したことを示唆する.
謝辞. Pi-SAR-L2データは,JAXAとの共同研究(RA5)に基づいて提供されたものであり,原初データの所有権はJAXAが有する.また,TerraSAR-X 及びTanDEM-X データは,JAXA とDLR による衛星を利用した災害監視に係る共同研究を通じて配布されたものであり,原初データの所有権はDLR が有する.