日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS21] 大気化学

2015年5月27日(水) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*澤 庸介(気象研究所海洋・地球化学研究部)、竹川 暢之(首都大学東京 大学院理工学研究科)、金谷 有剛(独立行政法人海洋研究開発機構地球環境変動領域)、高橋 けんし(京都大学生存圏研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)

18:15 〜 19:30

[AAS21-P22] NICAM-TM CO2データとGOSAT/TANSO-FTS TIR CO2データの比較解析

*杉村 亮1齋藤 尚子1今須 良一2川上 修司3塩見 慶3丹羽 洋介4町田 敏暢5澤 庸介4松枝 秀和4 (1.千葉大学環境リモートセンシング研究センター、2.東京大学大気海洋研究所、3.宇宙航空研究開発機構、4.気象研究所、5.国立環境研究所)

キーワード:CO2, 衛星リモートセンシング, GOSAT

GOSAT(Greenhouse gases Observing SATellite)は、2009年1月23日に打ち上げられた温室効果ガス観測を主目的とした世界初の日本の人工衛星である。これまでの我々の検証解析から、GOSATのTANSO/FTSセンサーのTIR(熱赤外)バンドのスペクトルから導出されたCO2鉛直濃度プロファイルには、対流圏中層に負バイアスが存在することがわかっている。そこで、本研究では、GOSATのTIR CO2データと全球輸送モデルNICAM-TM(Nonhydrostatic Icosahedral Atmospheric Model-based Transport Model)のCO2データ(NICAM-TM CO2)[Niwa et al., 2011]を比較し、全球でTIR CO2データの負バイアスの大きさの評価を行った。さらに、CONTRAIL(Comprehensive Observation Network for Trace gases by Airliner)のCME(Continuous CO2 Measuring Equipment)[Machida et al., 2008]による各空港上空のCO2鉛直濃度データとの比較をもとにTIR CO2データの対流圏中層におけるバイアス補正係数を緯度別に算出し、TIR CO2データの500 hPaの濃度にその補正係数を適用した。その上で、補正済みのTIR CO2データの季節変化を調べ、適用した補正係数の妥当性を検証した。

まず、TIR CO2データとNICAM-TM CO2データの500 hPaと200 hPaの濃度の差分の平均値を比較したところ、TIR CO2データでは、対流圏中層の負バイアスの影響で特に赤道付近に差分値(500 hPa-200 hPa)が大きく、-8 ppmを越えるようなデータが多く見られた。一方、先験値(NIES-TM05)やNICAM-TM CO2データではこの傾向は見られなかった。次に、各空港上空で算出した補正係数をTIR CO2データに適用した上で再び濃度の差分値の比較を行った。バンコク上空のデータに基づいた補正係数を適用した低緯度帯(25⁰S-25⁰N)では、補正係数を適用する前と比較すると、先験値やNIICAM-TM CO2データの濃度の差分値と概ね近い値を示すデータが多くなった。一方、アムステルダム上空のデータに基づいた補正係数を適用した北半球高緯度帯(~40⁰N以北)では、夏季にTIR CO2データの濃度の差分値が正の値を示すデータが多く見られ、NICAM-TM CO2データや先験値とは異なる傾向を示した。北半球高緯度では夏季に地表面のCO2濃度が上空に比べて低くなるため、本研究で設定した各季節一律の補正係数は北半球の夏季については適当でないと考えられる。本研究の結果から、TIR CO2データの対流圏中層の負バイアスは季節や領域によって異なっていることが示唆されたため、季節ごと緯度帯ごとに補正係数を設定する必要があると考えられる。

さらに、気候区や緯度帯に着目して領域を分割し[Niwa et al., 2011]、TIR CO2データとNICAM-TM CO2データの時系列を比較した。初期的な比較の結果、TIR CO2データの季節変化が、先験値よりもNICAM-TM CO2データの季節変化に近い特徴を持つ地域が見られた。今後は、比較方法を再検討した上で、CO2濃度の季節変化の特徴を全球で詳細に解析する予定である。

謝辞
CONTRAIL観測は、日本航空、日航財団、JAMCO の多大な協力のもと実施されています。