10:00 〜 10:15
[MTT41-05] 積雲対流による地上気圧変動の励起
キーワード:積雲, 微気圧変動, 地球自由振動, インフラサウンド
[はじめに]
固体地球は地震のないときにも振動しており、その自由振動を積雲から発生する音波が駆動している可能性があることが議論されている(中島・野津原,2001; 島崎・中島, 2008ほか)。この検討には音波を含めたすべての大気波動を近似なしに含む数値モデルが必要である。田島・中島(2007)は、厳密な連続の式と状態方程式から気圧を予報する数値モデルである完全圧縮系陽解法の雲対流数値モデルを作成し、積雲の生成や降雨の様子、積雲から発生する音波について数値実験を行い、主に地球自由振動の励起と関連する非常に長い波長の成分について考察した。一方、近年、微気圧計のネットワークの展開(例えば、Nishida et al, 2006)により、大気擾乱や地震など、様々な現象と関連した気圧変動の把握が進んでいる。そこで本発表では、積雲が励起する気圧変動のうち、地上に置かれた微気圧計で観測されるであろう気圧変動について数値モデルにより調べる。
[数値モデルと実験設定]
完全圧縮系湿潤大気の鉛直水平二次元数値モデルを作成した。基礎方程式は差分法によって離散化した。水物質としては気相(水蒸気)と液相(雲水、雨水)のみを考え、各雲微物理過程は基本的に Kessler(1969) のバルクパラメタリゼーションに従う。拡散係数、粘性係数の計算は Klemp and Wilhelmson(1978) に従う。計算領域は水平方向に 20km、鉛直方向に 120km とし、格子間隔はともに 167m とした。計算領域の上端と下端で鉛直 流をゼロとし、水平方向には全ての変数について周期境界条件を与えた。また下部境界では、雨水をその量に比例して 吸い取るように設定してある。初期の温度には標準大気の気温高度分布(U.S.Standard Atmosphere 1976)を用い、湿度 を地表面で90%、高度 1km で 100%、高度 10km で 20%、高度 20km で 0 となるように水蒸気の高度分布を与えた。雲 水と雨水は初期には存在しないものとする。また水平風、鉛直風は初期にゼロとし、静力学平衡が成り立つものとする。 水蒸気を凝結させる擾乱を引き起こすために、地表から高度 1km に水平風の収束を強制する外力を与える。その大きさ は初期がゼロとし、その後徐々に大きくし、50 秒で最大値、その後は弱まって 100 秒でゼロように設定した。 計算は 0.1 秒のタイムステップで 6000 秒行なった。また、鉛直 1 次元線形モデルを作成し、2 次元完全圧縮系モデルから計算した非線形項などのソース項を加えて大規模な地表面 気圧変動の励起源を求める計算を行った。
[結果]
完全圧縮系モデルによって典型的な積雲のライフサイクルが再現されることが確認されたので、地球自由振動の励起 源と対応付けられる水平平均地表面気圧を調べた。水平平均気圧変動は、積雲の生成消滅に対応する 1 時間程度の時定数をもつ長周期の変動と、数十秒ないし数百秒の周期をも つ短周期振動の両方を含んでいることがわかった。さらに、二次元計算のでの水平平均気圧変動を鉛直 1 次元線形モデルでの気圧変動と比較した結果から、地表面気圧変動の長周期成分の起源が主に凝結に伴う水蒸気量の変化および雨や 雲による引きずりであること、そして、短周期成分の起源が主に潜熱放出であることがわかった。
一方、水平平均しない気圧変動には、より短周期成分が見られる。当日は、これについても詳細に報告する。
固体地球は地震のないときにも振動しており、その自由振動を積雲から発生する音波が駆動している可能性があることが議論されている(中島・野津原,2001; 島崎・中島, 2008ほか)。この検討には音波を含めたすべての大気波動を近似なしに含む数値モデルが必要である。田島・中島(2007)は、厳密な連続の式と状態方程式から気圧を予報する数値モデルである完全圧縮系陽解法の雲対流数値モデルを作成し、積雲の生成や降雨の様子、積雲から発生する音波について数値実験を行い、主に地球自由振動の励起と関連する非常に長い波長の成分について考察した。一方、近年、微気圧計のネットワークの展開(例えば、Nishida et al, 2006)により、大気擾乱や地震など、様々な現象と関連した気圧変動の把握が進んでいる。そこで本発表では、積雲が励起する気圧変動のうち、地上に置かれた微気圧計で観測されるであろう気圧変動について数値モデルにより調べる。
[数値モデルと実験設定]
完全圧縮系湿潤大気の鉛直水平二次元数値モデルを作成した。基礎方程式は差分法によって離散化した。水物質としては気相(水蒸気)と液相(雲水、雨水)のみを考え、各雲微物理過程は基本的に Kessler(1969) のバルクパラメタリゼーションに従う。拡散係数、粘性係数の計算は Klemp and Wilhelmson(1978) に従う。計算領域は水平方向に 20km、鉛直方向に 120km とし、格子間隔はともに 167m とした。計算領域の上端と下端で鉛直 流をゼロとし、水平方向には全ての変数について周期境界条件を与えた。また下部境界では、雨水をその量に比例して 吸い取るように設定してある。初期の温度には標準大気の気温高度分布(U.S.Standard Atmosphere 1976)を用い、湿度 を地表面で90%、高度 1km で 100%、高度 10km で 20%、高度 20km で 0 となるように水蒸気の高度分布を与えた。雲 水と雨水は初期には存在しないものとする。また水平風、鉛直風は初期にゼロとし、静力学平衡が成り立つものとする。 水蒸気を凝結させる擾乱を引き起こすために、地表から高度 1km に水平風の収束を強制する外力を与える。その大きさ は初期がゼロとし、その後徐々に大きくし、50 秒で最大値、その後は弱まって 100 秒でゼロように設定した。 計算は 0.1 秒のタイムステップで 6000 秒行なった。また、鉛直 1 次元線形モデルを作成し、2 次元完全圧縮系モデルから計算した非線形項などのソース項を加えて大規模な地表面 気圧変動の励起源を求める計算を行った。
[結果]
完全圧縮系モデルによって典型的な積雲のライフサイクルが再現されることが確認されたので、地球自由振動の励起 源と対応付けられる水平平均地表面気圧を調べた。水平平均気圧変動は、積雲の生成消滅に対応する 1 時間程度の時定数をもつ長周期の変動と、数十秒ないし数百秒の周期をも つ短周期振動の両方を含んでいることがわかった。さらに、二次元計算のでの水平平均気圧変動を鉛直 1 次元線形モデルでの気圧変動と比較した結果から、地表面気圧変動の長周期成分の起源が主に凝結に伴う水蒸気量の変化および雨や 雲による引きずりであること、そして、短周期成分の起源が主に潜熱放出であることがわかった。
一方、水平平均しない気圧変動には、より短周期成分が見られる。当日は、これについても詳細に報告する。