日本地球惑星科学連合2015年大会

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口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT35] 地球深部ダイナミクス:プレート・マントル・核の相互作用

2015年5月26日(火) 16:15 〜 18:00 106 (1F)

コンビーナ:*中川 貴司(海洋研究開発機構数理科学・先端技術研究分野)、綿田 辰吾(東京大学地震研究所海半球観測研究センター)、境 毅(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、座長:古市 幹人(海洋研究開発機構)、境 毅(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)

16:45 〜 17:00

[SIT35-09] 下部マントルに沈み込むスラブの運動と水の輸送

*金子 岳郎1中久喜 伴益1 (1.広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)

キーワード:自由対流, スラブの沈み込み, スラブの座屈, 最下部構造, 水輸送

地表から固く冷たいスラブがマントルへ沈み込むことは、地球マントル対流を特徴づける要因のひとつであると考えられている。最近の研究では、660-km相境界を超えたスラブは急に太くなっていることを示しているが、分解能の限界により下部マントルでのスラブの運動や変形を定量的に議論することは困難である。一方、LLSVPsの形状や親水元素の分布などにより、スラブの沈み込みとマントル最下層構造との間には関連性が示されている。本研究では、人為的な力を与えることなく対流を再現できる数値モデルを用い、下部マントルへ沈み込むスラブの運動と最下層構造のより自然的な相互作用を調べる。

2次元のマントル対流モデルによってプレートの運動と水輸送を数値シミュレーションにより解く。さらに、実験に基づく含水鉱物の相図 (Iwamori, 2004, 2007)と水の輸送を組み込む。マントル最深部には、周囲のマントルより重い層とpost-perovskite (PPV) への相変化を導入する。今回は、粘性率と熱膨張率の深さプロファイル、スラブの降伏強度を変化させて計算を行う。

今回の結果では、スラブ強度が低い時は (200 MPa) 下部マントルの粘性率にかかわらずスラブは座屈する。スラブの座屈の太さや降下速度は、下部マントルの粘性率の深さ変化の影響を受ける。さらに、熱膨張率が深さ依存性を持つ時は、スラブが硬い時(300 MPa)でも座屈は生じる。これは、熱膨張率によりマントル深部ではスラブが持つ下向きの浮力が減少する効果で説明できる。さらにこの場合、マントル浅部では、逆に海洋リソスフェアの沈み込みが促進されるために、表面プレートは下部マントルのスラブの影響を受けにくくなり、観測によるプレート運動と調和的になる。
スラブの形状の違いは下部マントルでの水が移動と最下層での高密度物質の構造に変化をもたらす。座屈したスラブは、褶曲の間に水を含むために、水は沈み込み帯前後面に広がる。一方、スラブがまっすぐに沈み込むとコア-マントル境界での接触領域の粘性が低くなり、スラブ直上に形成される含水層がスラブから剥がれるために、沈み込み帯前面に多く分布するようになる。このような水が前面に多く分布する特徴は、PPV相のスラブの粘性率が大きく低下するときにも起こる。各物理パラメータがマントル対流に与える影響を調べた今回の研究から、下部マントルスラブ構造およびCMB近傍の物質構造には降伏強度または熱膨張率が、さらに水の分布にはPPVの粘性降下が重要な役割を果たしている可能性があると考えられる。