12:24 〜 12:27
[SVC47-P12] 南西北海道、クッタラ火山の最新の大規模噴火(Kt-1期)の噴火推移とマグマ変遷に関する研究
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:クッタラ火山, カルデラ火山, カルデラ形成噴火, 珪長質マグマ, 岩石学的特徴, マグマ組成
南西北海道に位置するクッタラ火山群は、約8万年前より活動を開始し、49ka~45kaの成層火山形成期を挟んで複数回の大規模珪長質噴火を繰り返している。そして42kaの大規模珪長質噴火であるKt-1期の噴火により現在の直径約2.5㎞のクッタラカルデラが形成されたと考えられている(山縣,1994; 森泉,1998)。クッタラ火山群の総噴出量は100km3を超え、近隣の支笏、洞爺カルデラ火山に匹敵するが、なぜクッタラ火山では複数回の噴火により大量のマグマが噴出したのかについては議論されていない。そのためにはクッタラ火山群の個々の大規模噴火の推移とマグマ系の構造、およびその変遷を明らかにすることが必要であり、我々は地質学的岩石学的研究を行っている。今回は最新の大規模珪長質噴火であるKt-1期の噴火推移とそれに対応するマグマ変遷について報告する。
森泉(1998)は、Kt-1期テフラとして降下火砕物、火砕流および火砕サージ堆積物を認識した。降下火砕物は、降下スコリア層(Kt-1sfa)を境に下部(Kt-1pfa1)と上部(Kt-1pfa2)に区分され、下部は角閃石斑晶含有の軽石を含むが、上部には含まれないとした。また、火砕流堆積物中の降下軽石には角閃石斑晶が含まれないことから、火砕流はKt-1pfa2と同時に発生したとした。
本研究の野外調査ではKt-1sfaを発見できなかったが、噴火の時間間隙を示すと考えられる、表面が風化した軽石層を基準に、降下火砕物を下位からKt-1A~Kt-1E層の5枚のフォールユニットに区分した。Kt-1A~Kt-1C層では角閃石斑晶を含む白色軽石が見られるが、Kt-1D層より上部では見られない。よってKt-1AからKt-1CがKt-1pfa1に、Kt-1DからKt-1EがKt-1pfa2に対応すると考えられる。それとは別に火砕流および火砕サージ堆積物を確認した。
降下火砕物層中には白色軽石と縞状軽石、火砕流堆積物中には白色軽石、縞状軽石、スコリアがみられる。Kt-1期の噴出物の岩石は斑晶として、石英、斜長石、斜方輝石、単斜輝石、不透明鉱物を含む。また、Kt-1A層中の白色軽石と、Kt-1B、Kt-1C層の一部の白色軽石は斑晶として角閃石を含む。
Kt-1期の岩石の全岩SiO2量は59.2~74.1wt%であり、Al2O3やMnO、P2O5などの多くの元素のハーカー図上で、4つの組成トレンドが認識できる。その全岩化学組成トレンドと斑晶鉱物組み合わせから、Kt-1期の本質物質を4タイプに分類した。角閃石斑晶を含み最も流紋岩質のものをType1、角閃石斑晶を含まない流紋岩~デイサイト質のものをType2、角閃石斑晶をわずかに含むデイサイト質のものをType3、角閃石斑晶を含まず、安山岩質~流紋岩質のものをType4とした。Type1、Type2、Type3はハーカー図上で、珪長質からマフィックまで互いに収束することのないトレンドとして識別できる。一方、Type4は珪長質側においてType2に収束するが、マフィック側で発散するトレンドを描く。
降下火砕物における本質物質タイプの時間変化を見ると、Kt-1A層ではType1とType3の両者が認められ、一方Kt-1BおよびC層ではType2とType3が共存する。そしてKt-1DおよびE層ではType2のみが認められる。このように降下火砕物ではType1~Type3が認められType4は認めらない。一方、火砕流堆積物ではType4のみが認められ、それ以外の本質物は認められない。従来、火砕流は、Kt-1DおよびEの時期(Kt-1pfa1)に発生したと考えられてきたが、本質物質のタイプが異なることから、火砕流は降下火砕物とは異なる時期に発生したことを指摘できる。Kt-1DおよびEの時期のType2軽石は、全岩化学組成において珪長質側でType4と類似することから、Kt-1Eの後に火砕流が発生した可能性が高い。
本研究では森泉(1998)と同じく、降下火砕物層下部に角閃石含有軽石が特徴的に見られ、降下火砕物層上部および火砕流には角閃石含有白色軽石が見られないことを確認した。しかし本研究では降下火砕物は3タイプの本質物質からなり、さらに火砕流堆積物が降下火砕物とは別タイプの本質物質から構成されることを明らかにした。つまりKt-1は4つのマグマタイプからなるということである。これら4タイプは噴火の進行に伴って、順次活動をしており、そのことからKt-1噴火前のマグマ系の構造とその噴火変遷が明らかになった。現在はガラス組成および鉱物組成の分析を進めており、マグマプロセスと噴火推移の関連をさらに解明する予定である。
森泉(1998)は、Kt-1期テフラとして降下火砕物、火砕流および火砕サージ堆積物を認識した。降下火砕物は、降下スコリア層(Kt-1sfa)を境に下部(Kt-1pfa1)と上部(Kt-1pfa2)に区分され、下部は角閃石斑晶含有の軽石を含むが、上部には含まれないとした。また、火砕流堆積物中の降下軽石には角閃石斑晶が含まれないことから、火砕流はKt-1pfa2と同時に発生したとした。
本研究の野外調査ではKt-1sfaを発見できなかったが、噴火の時間間隙を示すと考えられる、表面が風化した軽石層を基準に、降下火砕物を下位からKt-1A~Kt-1E層の5枚のフォールユニットに区分した。Kt-1A~Kt-1C層では角閃石斑晶を含む白色軽石が見られるが、Kt-1D層より上部では見られない。よってKt-1AからKt-1CがKt-1pfa1に、Kt-1DからKt-1EがKt-1pfa2に対応すると考えられる。それとは別に火砕流および火砕サージ堆積物を確認した。
降下火砕物層中には白色軽石と縞状軽石、火砕流堆積物中には白色軽石、縞状軽石、スコリアがみられる。Kt-1期の噴出物の岩石は斑晶として、石英、斜長石、斜方輝石、単斜輝石、不透明鉱物を含む。また、Kt-1A層中の白色軽石と、Kt-1B、Kt-1C層の一部の白色軽石は斑晶として角閃石を含む。
Kt-1期の岩石の全岩SiO2量は59.2~74.1wt%であり、Al2O3やMnO、P2O5などの多くの元素のハーカー図上で、4つの組成トレンドが認識できる。その全岩化学組成トレンドと斑晶鉱物組み合わせから、Kt-1期の本質物質を4タイプに分類した。角閃石斑晶を含み最も流紋岩質のものをType1、角閃石斑晶を含まない流紋岩~デイサイト質のものをType2、角閃石斑晶をわずかに含むデイサイト質のものをType3、角閃石斑晶を含まず、安山岩質~流紋岩質のものをType4とした。Type1、Type2、Type3はハーカー図上で、珪長質からマフィックまで互いに収束することのないトレンドとして識別できる。一方、Type4は珪長質側においてType2に収束するが、マフィック側で発散するトレンドを描く。
降下火砕物における本質物質タイプの時間変化を見ると、Kt-1A層ではType1とType3の両者が認められ、一方Kt-1BおよびC層ではType2とType3が共存する。そしてKt-1DおよびE層ではType2のみが認められる。このように降下火砕物ではType1~Type3が認められType4は認めらない。一方、火砕流堆積物ではType4のみが認められ、それ以外の本質物は認められない。従来、火砕流は、Kt-1DおよびEの時期(Kt-1pfa1)に発生したと考えられてきたが、本質物質のタイプが異なることから、火砕流は降下火砕物とは異なる時期に発生したことを指摘できる。Kt-1DおよびEの時期のType2軽石は、全岩化学組成において珪長質側でType4と類似することから、Kt-1Eの後に火砕流が発生した可能性が高い。
本研究では森泉(1998)と同じく、降下火砕物層下部に角閃石含有軽石が特徴的に見られ、降下火砕物層上部および火砕流には角閃石含有白色軽石が見られないことを確認した。しかし本研究では降下火砕物は3タイプの本質物質からなり、さらに火砕流堆積物が降下火砕物とは別タイプの本質物質から構成されることを明らかにした。つまりKt-1は4つのマグマタイプからなるということである。これら4タイプは噴火の進行に伴って、順次活動をしており、そのことからKt-1噴火前のマグマ系の構造とその噴火変遷が明らかになった。現在はガラス組成および鉱物組成の分析を進めており、マグマプロセスと噴火推移の関連をさらに解明する予定である。