日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC24] 人間環境と災害リスク

2015年5月24日(日) 16:15 〜 18:00 101B (1F)

コンビーナ:*青木 賢人(金沢大学地域創造学類)、鈴木 康弘(名古屋大学)、小荒井 衛(国土交通大学校測量部)、須貝 俊彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻)、宇根 寛(国土地理院)、中村 洋一(宇都宮大学教育学部地学教室)、松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境科学専攻)、後藤 真太郎(立正大学地球環境科学部環境システム学科)、原 慶太郎(東京情報大学総合情報学部)、座長:青木 賢人(金沢大学地域創造学類)

17:54 〜 17:57

[HSC24-P10] 広域自治体における住民の防災意識の多様性について―石川県白山市におけるアンケート調査に基づいて―

ポスター講演3分口頭発表枠

*青木 賢人1林 紀代美1 (1.金沢大学地域創造学類)

キーワード:広域自治体, 住民, 防災意識, アンケート, 白山市

日本では、2000年代以降、いわゆる「平成の大合併」によって基礎自治体の規模・面積が拡大した。その結果、単一自治体の領域内に、多様な自然災害の原因となる自然現象を引き起こす自然環境が内包されることとなった。沿岸部から山岳域まで包括する自治体では、山岳部の集落に配布される資料にも津波ハザードマップが掲載され、沿岸部の集落に配布される広報にも土砂災害の情報提供が行われているのが実態である。
 住民が防災対策を考える上で、行政からの情報は重要な根拠となる。しかし、自治体内に多様な災害が内包されることによって多様な防災情報が並列的に提供されることとなった。このため、住民自身が災害情報リテラシーを向上させ、自分の生活圏で発生する災害にかかわる情報を取捨選択する必要に迫られている。これが十分に行われなければ、本来であれば重視する必要がない災害に対して過剰な意識を持つことになったり、反対に、本来重視すべき災害に対する意識がスポイルされることになりかねない。
本研究では、石川県白山市を事例に、広域自治体に居住する住民の防災意識の多様性をアンケート調査により明らかにした。白山市は、2005年に、1市2町5村が合併して成立した基礎自治体で、面積755.17km2、人口109,134人(2014年12月1日現在)を有する。市域は、活火山である白山(2,702m)を源流とする手取川の流域とほぼ一致している。白山は1600年代までは活発に火砕流を伴う噴火していたが、近年は穏やかな活動で終始している。手取川は1934(昭和9)年の大水害をはじめに、多くの大規模水害を起こしてきた。市域は海岸部に及び、沿岸部では高潮の被害がたびたび起きてきたとともに、東日本大震災以降では、津波被害も危惧されている。山麓部には活断層である「森本富樫断層」がある。この断層は過去2000年近く地震を起こしていないが、国の調査によって、国内有数の地震発生危険度を有し、地震発生時にはM7を超えることが示されている。このように、域内には、多様な頻度・強度・歴史を有する自然災害が想定されており、また、その影響の分布は市域で一様ではなく、それぞれの地区で対応すべき災害も異なっている。
 白山市では、各種災害のハザードマップを作成し、市域全域が掲載された総合ハザードマップを、住民全世帯に印刷配布している。また、2011年には「白山手取川ジオパーク」として日本ジオパークに認定され、学校教育・社会教育のさまざまなチャンネルを通じ、住民に対して市域の地学的・地理学的特性に関する情報発信を行ってきた。住民による地域環境に対する意識は相対的に高いと考えられる。災害が多様であり、意識が高いことから、本研究の対象地として妥当だと考えられる。
アンケートは、市内6地区の約3800世帯を対象に行った。地区の選定に際しては市が発行しているハザードマップを基礎資料として、「火山噴火」「豪雪」「水害」「土砂災害」「津波・高潮」などの各災害の影響範囲とその軽重を組み合わせている。対象となった地区について、危険性が高い災害に対する認識と知識が高く、かつ、影響が小さい災害を排除することができている状態を適切な状況と考える。自地域で起こりうる災害について不当に低く評価しているケースや、自地域には影響が小さい災害を過剰評価しているケースなどが不適切なケースとして分析対象である。そのような不適切なケースが、どのような知識・認識・レディネスに基づいて生じているか、また、どのような地域的偏りを有しているかを検討している。
 検討結果については、当日のポスターで報告する。