11:30 〜 11:45
[AAS13-10] 沖縄フェーズドアレイ気象レーダで観測されたメソサイクロンの構造
★招待講演
キーワード:フェーズドアレイ気象レーダ、メソサイクロン、3次元構造
局地的大雨や竜巻・突風の早期探知と予測を目的として開発したフェーズドアレイ気象レーダー(PAWR)は、30秒毎の詳細な3次元観測(100 m距離分解能、100仰角)を行うことができる。これまで主に局地的豪雨の解析等が行われてきたが、毎年被害が相次いでいる竜巻・突風の観測も期待されていた。2012年に設置された吹田PAWRの観測範囲では竜巻の発生はまれであるが、2014年3月にNICT沖縄電磁波技術センター(沖縄県恩納村)に設置された沖縄PAWRは台風や亜熱帯の激しい雷雨に加えて、竜巻の観測が期待できる。本研究では、沖縄PAWRで観測された事例から、竜巻の発生は確認されていないが顕著なメソサイクロンが観測された線状降水帯の事例について解析を行う。なお、本研究では直径数km程度の渦状循環構造を持つという定義で「メソサイクロン」という用語を用いる。
2015年12月6日午後、南西諸島付近の停滞前線にともなう線状降水帯が沖縄本島を通過した。線状降水帯を構成する個々のエコーはその走向に沿って南西から北東方向に移動していた。15:29JSTに高度1 kmの反射強度分布に見られた鋭く折れ曲がったキンク状のエコーは、5分後の15:34JSTには直径3~5 kmの渦状エコーに変化して、15:38JST頃までその渦状構造が維持されていた。この間のドップラー速度分布を見るとランキン渦を示す速度の極大・極小(2つ目玉)がほぼ継続して現れており、メソサイクロン(MC)が存在したことが示唆される。速度分布の最小・最大は-20 m/s, +17 m/sでその距離(直径)は3.0 kmであり、渦度に換算すると0.025 s-1であった。高度別のCAPPIを見ると、このMC循環は高度0.25~1.75 kmの範囲で確認できたが、2つ目玉の位置が反時計回りに移動しており下層では収束、高度2km付近では発散の流れとなっていた。その上空、高度4.0~5.0 kmにはさらに大きな渦度のMCが確認できたが下層のMCとは異なるもので、鉛直断面図を見ると上空の降水コアにともなう循環場と考えられる。この上空の降水コア上方のエコー頂高度は12 kmを超えており、線上降水帯の後方(北西方向)にはアンビル状のエコーが伸びていた。
本事例は、Cバンドの沖縄偏波降雨レーダ(COBRA)でも明瞭なMCが観測されており、dual-Doppler解析を含むさらなる解析が望まれる。観測されたMCは竜巻発生の可能性がある大きな渦度を持っていたが、スーパーセルのような構造は見られず竜巻が発生したと思われる観測結果も見つかっていない。下層のキンク状エコーが渦状エコーに変化した時の3次元構造について30秒毎の時間変化を詳しく調べる必要があるが、最初に大きな水平シアーがあったことは間違いなく、この前線に伴って形成されたMCは、藤吉ほか(天気,2001)が報告した渦状エコーに近い現象(ただしスケールは半分以下)ではないかと考えている。ただし、強い降水コアにともなう上空のMCについては、鉛直シアーによる渦管を上昇流が持ち上げてメソサイクロンを形成するという従来の理論を含めて、さらなる検討が必要があると考えている。
2015年12月6日午後、南西諸島付近の停滞前線にともなう線状降水帯が沖縄本島を通過した。線状降水帯を構成する個々のエコーはその走向に沿って南西から北東方向に移動していた。15:29JSTに高度1 kmの反射強度分布に見られた鋭く折れ曲がったキンク状のエコーは、5分後の15:34JSTには直径3~5 kmの渦状エコーに変化して、15:38JST頃までその渦状構造が維持されていた。この間のドップラー速度分布を見るとランキン渦を示す速度の極大・極小(2つ目玉)がほぼ継続して現れており、メソサイクロン(MC)が存在したことが示唆される。速度分布の最小・最大は-20 m/s, +17 m/sでその距離(直径)は3.0 kmであり、渦度に換算すると0.025 s-1であった。高度別のCAPPIを見ると、このMC循環は高度0.25~1.75 kmの範囲で確認できたが、2つ目玉の位置が反時計回りに移動しており下層では収束、高度2km付近では発散の流れとなっていた。その上空、高度4.0~5.0 kmにはさらに大きな渦度のMCが確認できたが下層のMCとは異なるもので、鉛直断面図を見ると上空の降水コアにともなう循環場と考えられる。この上空の降水コア上方のエコー頂高度は12 kmを超えており、線上降水帯の後方(北西方向)にはアンビル状のエコーが伸びていた。
本事例は、Cバンドの沖縄偏波降雨レーダ(COBRA)でも明瞭なMCが観測されており、dual-Doppler解析を含むさらなる解析が望まれる。観測されたMCは竜巻発生の可能性がある大きな渦度を持っていたが、スーパーセルのような構造は見られず竜巻が発生したと思われる観測結果も見つかっていない。下層のキンク状エコーが渦状エコーに変化した時の3次元構造について30秒毎の時間変化を詳しく調べる必要があるが、最初に大きな水平シアーがあったことは間違いなく、この前線に伴って形成されたMCは、藤吉ほか(天気,2001)が報告した渦状エコーに近い現象(ただしスケールは半分以下)ではないかと考えている。ただし、強い降水コアにともなう上空のMCについては、鉛直シアーによる渦管を上昇流が持ち上げてメソサイクロンを形成するという従来の理論を含めて、さらなる検討が必要があると考えている。