日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC21] アイスコアと古環境変動

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*川村 賢二(情報・システム研究機構 国立極地研究所)、竹内 望(千葉大学)、阿部 彩子(東京大学大気海洋研究所)、大藪 幾美(情報・システム研究機構 国立極地研究所)

17:15 〜 18:30

[ACC21-P04] 過去21万6千年間の東南極における、気候に依存した質量収支のコントラスト

*藤田 秀二1,2Frédéric Parrenin3,4阿部 彩子5,6川村 賢二1,2Masson-Delmotte Valérie7本山 秀明1,2齋藤 冬樹5Severi Mirko8Stenni Barbara9植村 立10Wolff Eric11 (1.大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所、2.総合研究大学院 大学複合科学研究科 極域科学専攻、3.CNRS, LGGE, Grenoble, France、4.Univ. Grenoble Alpes, Grenoble, France、5.独立行政法人海洋研究開発機構、6.東京大学 大気海洋研究所、7.Laboratoire des Sciences du Climat et de l'Environnement, France、8.University of Florence, Italy、9.Ca' Foscari University Venice, Italy、10.琉球大学、11.University of Cambridge, UK)

キーワード:南極、表面質量収支、氷床、アイスコア

東南極における過去の質量収支を記述することは、アイスコアの年代決定や、海水準の地球規模の変動における氷床の寄与分の見積もりにとって重要である。本研究では、南極ドームC(EDC)とドームふじ(DF)で得られた2箇所の氷床深層アイスコアを精密に火山同期し、且つ流動変形分を補正することにより、これらの2地点における表面質量収支の比率(SMB比)の過去の変動を調査した。
過去21万6千年間、このSMB比( SMBEDC/SMBDF として定義)は 0.7 ~ 1.1の範囲の値をとり、寒冷な時期には比較的小さく温暖な時期には大きな値を示した。本研究の結果は、EDCにおいて、DFよりも大きな振幅の変動が起こったことを意味している。そしてその結果は、水の安定同位体から見積もってきた質量収支や気温の傾向と一貫している。最終氷期の開始時期 (Marine Isotope Stages, MIS-5c と MIS-5d) において、精密火山同期に基づいたSMB比は、水の安定同位体比をもとにして見積もったSMB比とくらべて、 最大0.2におよぶ偏差をもつ。さらには、SMB比は、現在の間氷期やその一つ前の間氷期において、水同位体比が対照的な傾向傾向を示すのに反して、ほぼ一定の値をとる。これらのような、「水の同位体比には反映されていないSMB比の変動」はDFコアとEDCコアの年代決定結果に偏差が出現したことの原因である可能性がある。
そのようなSMB比の変動を起こした原因として、以下のいくつかの可能性を提起する:
(i)空気塊の輸送や地域的な気候に関連した気候プロセス、 (ii) 2つのドーム地域の相対的な高度差にも関連した氷床変動プロセス、あるいは (iii) 両方のプロセスの組み合わせ、すなわち、堆積の変動とドーム位置の変動。
本研究で推定したSMB比は、氷床流動モデル研究にとって重要な意味をもつ。すなわち、SMB比は氷床モデルや大気モデルの境界条件となり、SMB比はそうしたモデル研究で再現できるかどうかのテスト対象となる。