日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS03] Marine ecosystem and biogeochemical cycles: theory, observation and modeling

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*伊藤 進一(東京大学大気海洋研究所)、平田 貴文(北海道大学地球環境科学研究院)、Hofmann Eileen E.(Old Dominion University)、Charles Stock(Geophysical Fluid Dynamics Laboratory)

17:15 〜 18:30

[AOS03-P01] Seasonal variation in total alkalinity in subtropical-subpolar transition area off eastern Japan

*小杉 如央1笹野 大輔1石井 雅男1小嶋 惇2高谷 祐介2 (1.気象研究所、2.気象庁)

キーワード:carbon cycle, ocean acidification

アルカリ度の季節変動は二酸化炭素分圧や全炭酸濃度のそれと比較して小さく、これまであまり研究されていなかった。今回、北海道から関東東方の太平洋で2011–2015年に、気象庁の観測船や白鳳丸で測定されたアルカリ度のデータを使用してアルカリ度の季節変動について解析を行った。このデータは1月2月を除く全ての月で観測値があり、季節変動を捉えることが可能である。
アルカリ度の変動のうち、降水や蒸発に伴う塩分の変動によるものを取り除くため、塩分35に規格化したnTA35 = TA * 35/Sを計算した。表層のnTA35は黒潮続流以南の亜熱帯域では季節を問わず2290–2300 μmol kg-1で一定であった。また、北緯46度以北の亜寒帯域における5月から6月の観測では、表層(5–6°C)と冬季混合層の名残である亜表層の水温極小層(< 2°C)でともにnTA35が2355–2370 μmol kg-1であり、両者のnTA35に有意な差はなかった。よって、この2海域ではnTA35に大きな季節変動がないとみられる。一方、この2海域に挟まれた亜熱帯―亜寒帯混合域では、nTA35が夏に低く冬に高い季節変動を示した。これは黒潮を起源とする亜熱帯系水が夏季に高緯度まで移流してくることを裏付けるものである。
この亜熱帯亜寒帯混合域で観測されたアルカリ度を、水温・塩分と経度からアルカリ度を回帰・推定するLee et al. [2006]の式と比較した。両者は7月8月についてはよく一致していたが、3月や12月にはLeeらの式が観測値に対して20–30 μmol kg-1の過大評価になっており、季節変動を正しく再現できなかった。これはLeeらが回帰に用いたGLODAPデータベースに所蔵されているデータが夏季のものに偏っていることが原因と考えられ、この海域でアルカリ度の正確な分布を把握するには、夏季以外のデータも活用する必要があると示された。発表では、もうひとつのアルカリ度推定式であるTakatani et al. [2014]との比較も行う。