日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS03] Marine ecosystem and biogeochemical cycles: theory, observation and modeling

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*伊藤 進一(東京大学大気海洋研究所)、平田 貴文(北海道大学地球環境科学研究院)、Hofmann Eileen E.(Old Dominion University)、Charles Stock(Geophysical Fluid Dynamics Laboratory)

17:15 〜 18:30

[AOS03-P03] Millennial-scale changes in dissolved oxygen due to global warming

*山本 彬友1阿部 彩子1重光 雅仁2岡 顕1高橋 邦生2大垣内 るみ2山中 康裕3 (1.東京大学大気海洋研究所、2.国立研究開発法人 海洋研究開発機構、3.北海道大学 大学院地球環境科学研究院)

キーワード:Global warming, Dissolved oxygen, Deep ocean circulation, Ocean biogeochemical model

地球温暖化による海水温上昇と成層化, 深層循環の弱化は海洋中の溶存酸素を全球的に減少させると考えられており, 海洋生態系や物質循環への影響が懸念されている. 中程度の複雑さを持つ気候モデルを用いた先行研究では, 今世紀中に人為起源CO2 の放出が止まったとしても, 深層水の遅いturnover の為に酸素濃度は1000年以上減少し続け, 全球平均濃度は30%程度減少すると予想されている(Shaffer et al., 2009). このような長期的な酸素濃度の変動は深層循環の応答に大きく依存するが, 先行研究では積分期間が長い為に簡略化モデルを用いているため, 深層循環の応答と溶存酸素濃度の変化について不確実性が大きいと考えられる.
本研究では, より現実的な海洋循環を表現するGCMを用いて温暖化実験を2000年積分した. また溶存酸素濃度の変化は, 3次元offline 海洋物質循環モデルに上記のGCMで計算された海洋物理場を与えて計算した. これらの手法は, 長期的な溶存酸素の変化について先行研究より信頼度の高い結果を提供すると期待される.
最初の500 年では, 海水温上昇と成層化により全球平均の酸素濃度は20μmol/L 減少し, CMIP5 などの先行研究や一般的な予測と同じ結果になった.しかしその後, 表層の酸素減少と大西洋子午面循環の弱化は続いているにも関わらず, 中深層の酸素濃度は全球的に回復し, 最終的に全球平均の酸素濃度は産業革命前の濃度よりも12μmol/L高くなった. この回復はウェッデル海の外洋で形成される深層対流が一時的に停止した後に回復し, 深層に酸素が送り込まれた為に引き起こされることが分かった. GCM を長期積分することで, 南大洋の海洋循環の応答が, 百年スケールの酸素減少とは異なる千年スケールの酸素回復を引き起こす可能性が示された. ただし, 現在の粗い解像度のGCM では南大洋の外洋域において対流を過大評価する傾向があるため(Heuzé et al., 2013), 不確実性が大きいことに留意する必要がある.
発表ではウェッデル海における深層対流の応答メカニズムについても議論する予定である.