日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG09] 生命-水-鉱物-大気相互作用

2016年5月23日(月) 13:45 〜 15:00 A02 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*中村 謙太郎(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、大竹 翼(北海道大学大学院工学研究院 環境循環システム部門)、鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)、高井 研(海洋研究開発機構極限環境生物圏研究センター)、上野 雄一郎(東京工業大学大学院地球惑星科学専攻)、長沼 毅(広島大学大学院生物圏科学研究科)、掛川 武(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、横山 正(大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻)、白石 史人(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)、座長:白石 史人(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)

14:00 〜 14:15

[BCG09-02] シアノバクテリアの細胞外高分子がストロマトライト・スロンボライト形成を規制する

*白石 史人1半澤 勇作1奥村 知世2狩野 彰宏3 (1.広島大学、2.海洋研究開発機構、3.九州大学)

ストロマトライトとスロンボライトは,微生物岩の主要構成要素である.ストロマトライトは主に中~新原生代に多産するが,古生代前期になるとストロマトライトは衰退し,スロンボライトが多産するようになる.当初,このような微生物岩の遷移は,多細胞動植物の進化に伴う生物擾乱の結果であると考えられていたが,スロンボライトの多くは初生的構造であることが近年明らかとなってきている.それゆえ,古生代前期に起きた微生物岩遷移の原因について,再検討を行う必要がある.しかしながら,ストロマトライト・スロンボライトとも現世環境ではほとんど形成されておらず,しかも両者が同一環境で見られる場所は知られていなかったため,詳細な検討は困難であった.そのような中,ストロマトライトとスロンボライトが同一環境で形成されている場所が,岡山県高梁市のトゥファ(淡水性炭酸塩堆積物)堆積場から発見された.そこで本研究では,この試料を用いて微生物岩組織の形成要因について検討を行った.
ストロマトライトおよびスロンボライト形成場において,水化学組成に大きな違いはなく,また微小電極測定の結果から両者とも光合成誘導CaCO3沈殿によって形成されていることが明らかとなった.共焦点レーザー走査顕微鏡観察やDNA解析の結果からは,ストロマトライトに生息するシアノバクテリアが主にPhormidium sp.であり,それらの細胞外高分子は酸性官能基を持つために結晶核形成場となり,その結果としてストロマトライト組織を形成していることが示された.一方,スロンボライトに生息するシアノバクテリアは主にLeptolyngbya sp.であり,それらの細胞外高分子は酸性官能基を持たないために結晶核形成場とはならず,その結果としてスロンボライト組織を形成していることが示された.これらの結果は,微生物岩組織の形成において細胞外高分子の化学的性質が極めて重要であることを示している.
この結果をそのまま過去に当てはめるならば,酸性官能基を含まない細胞外高分子鞘を持ったシアノバクテリアが古生代前期に進化したという仮説が立てられる.その妥当性については,今後の検討が必要である.