17:15 〜 18:30
[BPT03-P03] 放散虫アカンタリア目骨格中のシリカ(SiO₂)含有についての検討
キーワード:放散虫、アカンタリア、骨格組成
放散虫とは、オパール(SiO₂+nH2O)やSrSO₄からなる鉱物質の内殻を持つ海洋性動物プランクトンのことである。現生の放散虫類はオパールの殻をもつコロダリア目、ナセラリア目、スプメラリア目、SrSO₄から成る骨格をもつアカンタリア目、そしてタクソポディア目の5目に分類されている。本研究では、放散虫の内骨格形成過程の観察のため、黒潮表層海域の放散虫を採取し室内における飼育実験を実施した。殻の成長観察については、蛍光試薬を用いオパールの付加成長部位を発光させる手法(Ogane et al., 2010)を用いた。その結果、従来SiO₂成分が含まれていないと考えられてきたアカンタリア目の生体骨格にも Siが含有される可能性が示されたのでそれについて発表する。
検討に用いた現生放散虫は、黒潮海域であり放散虫が多種生息する高知県柏島近海にて採取した。プランクトン採集は2015年の7月12日、11月30日、2016年1月11日の全3回行い、採取した放散虫を目別に数個体ずつピックアップし、専用の飼育装置に入れて飼育を行った。飼育の際、水温を常に27℃に保ち、12時間LEDライトの照射、消灯を相互に行なった。飼育装置にて24時間静置した後、HCK-123蛍光試薬を投薬し、24時間~30時間経ったものをスライドに封入した。蛍光試薬を入れてから生体内に試薬が取り込まれその部分を蛍光発光させる事で、SiO₂を含む骨格の付加成長が起きた部分と生体内でのSi元素分布を知ることができる。作成したスライドは愛媛大学理学部設置の共焦点レーザースキャン顕微鏡(Carl Zeiss LSM510)を用いて観察した。スライドには波長488nmのArレーザー光を照射し、HCK-123蛍光試薬投薬後の蛍光発光を観察した。また、Siの含有についての真偽を検討するため、さらにアカンタリア骨格のFE-SEMおよびWDS分析を行った。
採集した放散虫類の内、今回は4個体のアカンタリア目の結果について報告する。蛍光試薬投薬後Acanthometra muelleri (個体番号:20150712A-1)、Amphilonche complanata (個体番号:20151130A-1)は24時間飼育、Acanthostaurus conacanthus (個体番号:20160111A-1)、Acanthometron pellucidum (個体番号:20160111A-2)は30時間飼育し、スライドに封入した。各個体を共焦点レーザースキャン顕微鏡にて観察したところ、Acanthometra muelleriは表層の骨針と中央部、Amphilonche complanataは骨針の根元と中央の一部、Acanthostaurus conacanthusは骨針の根元の表層部、Acanthometron pellucidumは折れた骨針と新しく成長中の骨針の一部にSiO₂の付加が確認できた。更に、アカンタリア目Amphilonche complanataの異なる個体でFE-SEMおよびWDS分析を行った。アカンタリア目の主成分はSrSO₄なので、今回はSr、S、Oと、今回注目しているSiについて元素マッピング分析を行った。主成分であるSr、S、Oは骨格全体に広く含まれていたが、その中に部分的にSiの分布も確認できた。殻周辺の付着物以外でSiの反応が確認できた箇所を拡大して分析したところ、骨針の先端表層部分に集中してSiが含まれていることが確認できた。
以上の蛍光試薬を用いた飼育実験結果および生体骨格の元素マッピング分析により、従来骨格にSiO₂を含まないと考えられてきたアカンタリア目は、生きている状態においては部分的にSiO₂を含有する事が示された。またそれは、殻の成長活発な部位において顕著で、アカンタリア目の骨格形成においてSiO₂成分が重要な役割を果たす事を示唆している。
検討に用いた現生放散虫は、黒潮海域であり放散虫が多種生息する高知県柏島近海にて採取した。プランクトン採集は2015年の7月12日、11月30日、2016年1月11日の全3回行い、採取した放散虫を目別に数個体ずつピックアップし、専用の飼育装置に入れて飼育を行った。飼育の際、水温を常に27℃に保ち、12時間LEDライトの照射、消灯を相互に行なった。飼育装置にて24時間静置した後、HCK-123蛍光試薬を投薬し、24時間~30時間経ったものをスライドに封入した。蛍光試薬を入れてから生体内に試薬が取り込まれその部分を蛍光発光させる事で、SiO₂を含む骨格の付加成長が起きた部分と生体内でのSi元素分布を知ることができる。作成したスライドは愛媛大学理学部設置の共焦点レーザースキャン顕微鏡(Carl Zeiss LSM510)を用いて観察した。スライドには波長488nmのArレーザー光を照射し、HCK-123蛍光試薬投薬後の蛍光発光を観察した。また、Siの含有についての真偽を検討するため、さらにアカンタリア骨格のFE-SEMおよびWDS分析を行った。
採集した放散虫類の内、今回は4個体のアカンタリア目の結果について報告する。蛍光試薬投薬後Acanthometra muelleri (個体番号:20150712A-1)、Amphilonche complanata (個体番号:20151130A-1)は24時間飼育、Acanthostaurus conacanthus (個体番号:20160111A-1)、Acanthometron pellucidum (個体番号:20160111A-2)は30時間飼育し、スライドに封入した。各個体を共焦点レーザースキャン顕微鏡にて観察したところ、Acanthometra muelleriは表層の骨針と中央部、Amphilonche complanataは骨針の根元と中央の一部、Acanthostaurus conacanthusは骨針の根元の表層部、Acanthometron pellucidumは折れた骨針と新しく成長中の骨針の一部にSiO₂の付加が確認できた。更に、アカンタリア目Amphilonche complanataの異なる個体でFE-SEMおよびWDS分析を行った。アカンタリア目の主成分はSrSO₄なので、今回はSr、S、Oと、今回注目しているSiについて元素マッピング分析を行った。主成分であるSr、S、Oは骨格全体に広く含まれていたが、その中に部分的にSiの分布も確認できた。殻周辺の付着物以外でSiの反応が確認できた箇所を拡大して分析したところ、骨針の先端表層部分に集中してSiが含まれていることが確認できた。
以上の蛍光試薬を用いた飼育実験結果および生体骨格の元素マッピング分析により、従来骨格にSiO₂を含まないと考えられてきたアカンタリア目は、生きている状態においては部分的にSiO₂を含有する事が示された。またそれは、殻の成長活発な部位において顕著で、アカンタリア目の骨格形成においてSiO₂成分が重要な役割を果たす事を示唆している。