日本地球惑星科学連合2016年大会

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インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS06] Natural hazards impacts on the society, economics and technological systems

2016年5月24日(火) 09:00 〜 10:30 101A (1F)

コンビーナ:*PETROVA ELENA(Lomonosov Moscow State University, Faculty of Geography)、松島 肇(北海道大学大学院農学研究院)、座長:PETROVA ELENA(Lomonosov Moscow State University, Faculty of Geography)、松島 肇(北海道大学大学院農学研究院)

09:55 〜 10:15

[HDS06-04] Desired Functions of Parks and Green Space in Reconstruction Plan from the Great East Japan Earthquake in Miyagi Prefecture

*西坂 涼1古谷 勝則1 (1.千葉大学大学院園芸学研究科)

キーワード:The Great East Japan Earthquake, Reconstruction Plan, Parks and Green Space, Disaster Prevention, Miyagi Prefecture

1.背景・目的
近年、世界的に自然災害が多発している。2011年に発生した東日本大震災では、被災した多数の自治体が、復興の道筋を示した復興計画を策定し、これに基づくまちづくりを進めている。本稿では、東日本大震災の被害が大きかった宮城県を対象に、復興計画の中で公園・緑地に求められる機能を明らかにし、自然災害と向き合うまちづくりにおける公園・緑地のあり方を考察する。
2.手法
宮城県及び県内市町村の復興計画を収集し、以下の手法で分析する。
(1)復興計画の策定状況と策定自治体の立地・被害の状況を明らかにする。
(2)復興計画に記載された公園・緑地に関する記載より、公園・緑地に求められている機能を明らかにする。
(3)県及び市町村、沿岸部及び内陸部において、公園・緑地に求められる機能を比較する。
3.結果
(1)宮城県内の35の市町村のうち、21の市町が復興計画を策定していた。15の市町が沿岸部に、6の市町が内陸部に位置していた。沿岸部に位置する全ての市町が復興計画を策定していた。これは、津波により重大な被災を受けた市町が沿岸部に多かったためと思われる。宮城県も復興計画を策定していた。
(2)22の復興計画より、公園・緑地に求められる機能が15種類抽出された。出現する頻度が高い上位5つの機能として、防潮林や防災公園など「防災」に関する機能は最も多く、17の計画で挙げられた。生物多様性の回復など「自然環境」に関する機能は13の計画で挙げられた。公共施設としての公園復旧など「生活基盤」としての機能は12の計画で挙げられた。その他、「スポーツ・レクリエーション」は11の計画で、「メモリアル・復興のシンボル」や、「景観」は、それぞれ10の計画で挙げられた。
(3)1つの計画内に記載された公園・緑地の機能数の最大値は11で、平均値は5.8だった。沿岸部では全ての市町が「防災」機能を挙げ、過半数の市町が「自然環境」や「メモリアル・復興のシンボル」機能を挙げた。一方、内陸部の市町ではこれらについてほとんど触れず、「生活基盤」としての記載が多かった。なお、宮城県が計画に示した機能は「防災」等6つだった。市町は県の示した機能に拘らず、それぞれの現況を鑑みて柔軟に公園・緑地に求める機能を計画しているものと思われた。
4.考察
宮城県では、沿岸部と内陸部で被災の状況が異なり、立地によって復興計画の策定数や、公園・緑地に求める機能が異なっていた。被害が大きい沿岸部では、公園・緑地に求める機能が多様化する傾向がみられた。
以上より、復興計画では、公園・緑地は、防災機能を中心として多様な機能を付加することで、多面的にまちづくりの資源となることが期待されていた。自然災害への対応を見据えた公園・緑地の整備においても、防災機能のみならず、多面的にまちづくりに資する工夫が求められるのではないだろうか。