日本地球惑星科学連合2016年大会

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セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GG 地理学

[H-GG12] 平成27年9月関東・東北豪雨災害

2016年5月23日(月) 15:30 〜 17:00 301B (3F)

コンビーナ:*佐藤 浩(日本大学文理学部)、座長:佐藤 浩(日本大学文理学部)、島津 弘(立正大学地球環境科学部地理学科)

15:30 〜 15:45

[HGG12-01] 平成27年9月関東・東北豪雨の発生要因と気象庁の対応・予報結果

*加藤 輝之1津口 裕茂1北畠 尚子1 (1.気象研究所)

キーワード:集中豪雨、線状降水帯、数値予報

平成27年9月関東・東北豪雨では、10日21時までの48時間に栃木県北部で500ミリ以上、南部でも300ミリ以上の降水量が観測され、10日13時頃には茨城県常総市で鬼怒川の堤防が決壊した。気象庁は10日0時20分に栃木県全域、7時45分に茨城県(9時55分県内全域)に特別警報を発表するともに、鬼怒川に対する指定河川洪水予報では、10日6時30分に氾濫発生情報を発信して警戒を呼びかけた。東北では、11日9時までの24時間降水量が宮城県大崎市付近で300ミリを超え、同日7時頃に同市を流れる渋井川の堤防が決壊した。気象庁は11日3時20分に宮城県全域に特別警報を発表した。
栃木県を中心とした関東での大雨は、幅20~30km、長さ約100kmの線状降水帯が複数発生し、それらが連なることで、幅100~200㎞、長さ500㎞以上の南北に伸びた巨大な帯状の降水域が形成・維持したことで発生した。その形成・維持には、線状降水帯が発生しやすい大気状態(加藤 2015; 2016)が関東地方で持続していたことが要因だと考えられる。日本海上に存在していた台風第18号から変わった低気圧に向かって、台風第17号の周辺から南東風により大量の下層水蒸気が関東地方に流入し続けたことに加えて、西日本の上空には深い気圧の谷、その東側の北海道付近には明瞭な気圧の尾根が存在しており、これらの気圧の谷・尾根間に関東地方付近は位置していたためである。また、宮城県の大雨も複数の線状降水帯によってもたらされた。
10日12時までの最大24時間降水量(R24max)は、解析雨量を積算すると関東北部で605ミリに達した。この値を基準に数値予報の結果を評価する。9日17時の天気予報に用いられた予報結果をみると、水平解像度20kmの気象庁全球モデル(9日9時初期値)は線状の降雨域ではないものの関東北部にそれなりの大雨(R24max:165ミリ)を予想していた。また水平解像度5kmの気象庁メソモデル(9日12時初期値)は栃木県内に線状の降雨域を予想できており、予想されたRmax24は447ミリであり、解析雨量に比べてやや少ない程度だった。ただ初期値によりメソモデルが予想した線状の降水域の位置が異なり、Rmax24が300~500ミリとばらつきがみられた。大雨をもたらした線状降水帯については、メソモデルは24時間前(8日21時初期値)から位置にばらつきはあるものの、群馬県東部から栃木県付近に予想できていた。加藤(2016)が示している線状降水帯が発生しやすい条件をみると、36時間前(8日12時初期値)から関東北部に線状降水帯発生のポテンシャルを予想できていた。

参考文献
加藤輝之, 2015: 線状降水帯発生要因としての鉛直シアーと上空の湿度について. 平成26年度予報技術研修テキスト, 気象庁予報部, 114-132.
加藤輝之, 2016: メソ気象の理解から大雨の予測について~線状降水帯発生条件の再考察~. 平成27年度予報技術研修テキスト, 気象庁予報部, (印刷中).