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[MIS09-12] 2015年度表層型メタンハイドレート調査海域におけるコーン貫入試験
キーワード:表層型メタンハイドレート、ピエゾコーン貫入試験、非排水剪断強度
表層型メタンハイドレート濃集帯からメタンガスを生産する手法を検討するためには、生産設備の設置が想定される濃集帯表層部の海底地盤強度に係わるデータが必要となる。2015年度の表層型メタンハイドレート調査においては、将来の生産手法検討に資するために、上越沖の7地点において、コーン貫入試験による海底地盤の強度測定を実施した。 試験には、英国Geoquip Marine社が所有するコーン貫入試験装置を使用した。コーン先端の貫入抵抗と周面摩擦抵抗に加えて間隙水圧を測定する機能を有する。特に、間隙水圧の測定が可能なコーンを使用する本試験は、Piezocone Penetrometer Testing (PCPT)と呼ばれる。以下、本試験をPCPTと略して呼称する。コーンの有効断面積(10cm2)と貫入速度(2cm/s)は、陸上の地盤調査を目的とした貫入試験において標準化されている値に準拠している。ストロークは、3mである。コーンの先端抵抗の測定範囲は、最大100MPaである。PCPTの実施にあたっては、試験深度まで掘削した後に、ドリル・ストリングをシーベッド・フレームにクランプすることにより、コーン貫入のための反力を確保した。その後、ワイヤライン・ツールを降下させて、ドリル・ストリングのBHAにラッチさせた。コーンの地層への貫入は、所定のコーン貫入速度(2cm/s)が得られるように流量を制御した流体を管内に圧入することにより行われた。コーン貫入抵抗、周面摩擦抵抗及び間隙水圧の3成分のデータは、リアルタイムに船上に伝送されて表示・記録された。 PCPTの試験井は、PCPTに先立って実施されたコアリング実施坑井の近傍で掘削された。このため、PCPTの測定結果とコア試料の記載結果との対比を行った。また、Geoquip Marine社のPCPTでは、試験実施区間の前後で、不攪乱試料を採取することが可能である。今回の試験では、不攪乱試料を利用した船上でのVane剪断試験、陸上ラボでの三軸試験などが実施された。本調査では、PCPTの試験結果から推算した非排水剪断強度と、これら不攪乱試料を用いた試験結果を比較した。 PCPT測定結果の深さプロファイルに見られる特徴的な変化に注目して、コア記載結果との対比を行ったところ、厚さ7cmのsandy ash層に対応して、コーン貫入抵抗が鋭いピークを示すとともに、過剰間隙水圧が急減圧した。また、泥層の中に粒状メタンハイドレートが胚胎していた区間では、PCPTのコーン貫入抵抗、周面摩擦抵抗及び過剰間隙水圧のいずれも、他の深度と比較して、変動が大きかった。このように、PCPTは、泥層に介在する薄い砂層、塊状のメタンハイドレート、炭酸塩などに敏感に反応することが確認された。 PCPTのコーン貫入抵抗から、陸上の地盤調査において使用されている関係式を用いて、非排水剪断強度を推定した。推定結果をPCPT実施深度の近傍で採取した不攪乱試料の三軸試験結果と比較したところ、関係式に含まれるコーン係数を15とした場合の推定値は、三軸試験により求めた剪断強度の値に近いことが分かった。このことから、PCPTにより、海底地盤の非排水剪断強度の推定が可能なことが確認された。 各調査地点のPCPTデータから非排水剪断強度の深さプロファイルを求めて、表層部6mの比較を行った。いずれの地点においても、非排水剪断強度の大きな薄層が多数存在(介在)した。これらは、PCPTデータとコア記載との対比で示した通り、砂の薄層、粒状のメタンハイドレートまたは炭酸塩を含む層と考えられる。一方、表層の軟弱層の厚さについては、調査地点により、大きく異なった。例えば、海底面から深さ0.5mまたは3mまで軟弱な層が認められ、その深さを境に不連続的に強度が増大する地点があった。これとは異なり、海底面から深さ6mまでの区間では、不連続的な強度の変化は見られない地点もあった。 本調査により、PCPTは、表層型メタンハイドレートの賦存海域における海底地盤の強度調査に、有効なことが確認された。本研究は、経済産業省メタンハイドレート開発促進事業の一環として実施された。