日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS11] 津波堆積物

2016年5月26日(木) 15:30 〜 16:45 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*後藤 和久(東北大学災害科学国際研究所)、宍倉 正展(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、西村 裕一(北海道大学大学院理学研究院)

15:30 〜 16:45

[MIS11-P17] 台湾南東部における地中レーダを用いた津波堆積物層検出

*祖慶 真也1中村 衛2陳 浩維3 (1.琉球大学大学院理工学研究科、2.琉球大学理学部、3.台湾國立中央大學)

キーワード:津波堆積物、台湾、地中レーダ

津波の古文書記録が乏しい台湾において、過去に襲来した津波を探るには津波堆積物の調査が欠かせない。最近、台湾の南東海岸では津波堆積物が発見され始めている(Ota, 2013; Ota et al., 2016; Lallemand et al., 2015)。津波堆積物がその地域でどのように分布しているのかを追跡することは、津波の遡上高を把握するのに必要なだけでなく、当時の堆積状況を推定する上で不可欠である。そのためには大規模な掘削調査または多点での密な調査を各地でおこなう必要があるが、土地交渉の困難さ・掘削費用を考えると困難が伴う。そこで地中レーダ(Ground Penetrating Radar: GPR)探査による津波堆積物層の検出をおこない、効率的に津波堆積物の分布を明らかにすることが可能かどうか確かめた。
調査は台湾国立中央大学調査チームと共に、台湾南東部の成功鎮と台湾南東沖の蘭嶼島で2015年8月27日〜9月2日にかけて実施した。各地でGPR調査を実施し、同時にリファレンス点として測線上の一部でハンドオーガーによる掘削を行い、GPRプロファイルと地下構造の照合をおこなった。GPRは周波数500MHzまたは1GHzで実施した。泥質地盤での最大探査深度は約1-2mであった。
成功鎮では新港國中学校西隣の空き地(標高約18m)および成功鎮郊外(三仙里)の丘陵地で調査を行った。この中で成功鎮郊外では、GPR調査によって深さ約50cmに見られた地層境界が局所的に深さ20cm程度窪んでいる様子を捉えることができた。この窪地の部分を掘削したところ、窪地の底部で枝サンゴ片や二枚貝片が密集していることが確認できた。これらの破片はGPRプロファイルでも回折波から検出できた。
蘭嶼島では揶油村北西海岸、紅頭村南東海岸、東清村付近海岸、および朗島村北西海岸の4カ所でGPR測定を行った。揶油村北西海岸では、海岸沿いの緩斜面(標高約5m)で海岸線と平行に2本の長測線、海岸線に直交方向に4本の短測線を設定し探査をおこなった。長・短測線の交差点で実施した掘削から、第1層(中粒砂層で中下部に枝サンゴ片を含む)、第2層(泥質層)、第3層(泥質礫層)という結果が得られた。第1層下部は波浪によって堆積した堆積物である可能性が指摘されている(境2015BS)。GPRプロファイルから第1層と第2層の境界面を検出して3次元表示したところ、境界面が緩やかに海側に傾斜する形状がイメージできた。紅頭村南東海岸では、サンゴ石灰岩の低位段丘と山麓の間にある砂丘(標高約15m)で実施した。GPR探査からは表土と砂層の境界および石灰岩基盤、および礫とみられる物体による回折波を検出できた。
以上のことから、津波堆積物層そのものを検出することは堆積物層がかなり厚い場合を除いて困難であるが、泥質ないし砂質の堆積環境下の中で礫サイズの物体(礫、サンゴ、貝)が堆積物に多く含まれている場合、それらによる回折波を捉えることで検出することができる可能性が高いことが明らかになった。