17:15 〜 18:30
[PPS12-P08] X線回折測定によるCO3炭素質コンドライトのサブタイプの特徴
キーワード:X線回折、CO3 コンドライト、かんらん石、輝石
1. はじめに
非平衡コンドライトの変成過程や初期状態などの微弱な差異を調べる手段としてバルクサンプルのX線回折測定は最適な研究手法の一つである。非平衡コンドライトのX線から、サブミクロンからなるマトリックス組織を含めた構成鉱物の大局的なバルクの特徴や鉱物相に関して知見が得られる。炭素質コンドライトの1グループを構成するCOの岩石学的タイプは3のみで、3.0-3.9のサブタイプに区分されている。本研究では、CO3の薄片試料から粉末X線回折パターンを取得し、サブタイプ間の差異についての新たな知見を得たので報告する。
2. 実験
国立極地研究所に2014年に導入したX線回折装置(SmartLab, RIGAKU)を用いた。試料台には自動試料交換台(ASC10)を用いた。試料は25mmの石英ガラス円板に貼り付けて作成した石質隕石の研磨薄片を用いた。9個のCO3隕石の薄片(Y-81020 CO3.0, ALH-77307 CO3.0, Colony CO3.0, Y-791717 CO3.3, Lance CO3.5, ALH-77003 CO3.6, Isna CO3.8, A-882094, Y983589) を用いた。X線源にはCu管球を用い、Kβ線はNiフィルターにより除去した。管電圧・管電流は、それぞれ、40kV・30mAで行った。0.4度/分の走査速度、10mm のX線照射入射幅、100rpmの試料面内回転、の測定条件で行った。この測定法は、Imae (2015)で行った粉末X線回折と整合的な回折線を得ることをあらかじめ確認した。ピークの半値幅と強度の解析にはVisual Basic 6.0ランタイムによるピーク分離プログラムを用いた。
3. 結果・議論
かんらん石の(130)の回折線は、高い非平衡(3.5以下)ではピークがスプリットする。これらは、鉄成分に富むマトリックス(低角側)とマグネシウム成分に富むI型コンドリュール(高角側)の回折線に相当する。3.6以上のサブタイプではシングルピークである。この差異をより詳しく見る(図1)と、(130)の高角側回折線は、サブタイプが3.0から3.5上昇すると、半値幅が増大し、回折線は低角へシフトする(鉄成分に富む)が、3.6以上ではピークは消失する。 (130)の低角側は、Fa~35-45の鉄に富むかんらん石で、マトリックス構成かんらん石に相当し、3.0から3.8へとサブタイプの上昇とともに半値幅が減少し、ピーク強度が増す。こうした変化は、微弱な熱変成で顕著なことを意味し、かんらん石のマグネシウムと鉄との元素拡散が構成単位のコンドリュールのサイズ以上の単一鉱物を超えたスケールで生じていることを意味する。また、こうした元素拡散は岩石学的タイプ3の変成過程で大規模に生じると解釈できる。
単斜エンスタタイトの(22-1)の回折線はサブタイプによらず認められ、直方エンスタタイトの(321)の回折線がサブタイプによらず認められた(図2)。高いサブタイプの直方エンスタタイトは低温型であってもよいが、低いサブタイプの直方エンスタタイトはコンドリュール形成時に形成した高温相由来と考えられる。一方、同様にX線測定した、非平衡普通コンドライトからは低いサブタイプから高温型直方エンスタタイトは検出されず、単斜相のみであった。このことからCO3のコンドリュールは普通コンドライトのコンドリュールと異なった温度履歴であった考えられる。この結果はImae et al. (2013)のEPMA測定の結果と整合的である。
4. 謝辞
単斜エンスタタイトの回折線に関してご教示いただいた滋賀大の大井修吾さんに感謝致します。
5. 文献
Imae N. et al. (2013) Geochim. et Cosmochim. Acta 100, 116-157.
Imae N. (2015) NIPR Symposium on Antarctic Meteorites.
非平衡コンドライトの変成過程や初期状態などの微弱な差異を調べる手段としてバルクサンプルのX線回折測定は最適な研究手法の一つである。非平衡コンドライトのX線から、サブミクロンからなるマトリックス組織を含めた構成鉱物の大局的なバルクの特徴や鉱物相に関して知見が得られる。炭素質コンドライトの1グループを構成するCOの岩石学的タイプは3のみで、3.0-3.9のサブタイプに区分されている。本研究では、CO3の薄片試料から粉末X線回折パターンを取得し、サブタイプ間の差異についての新たな知見を得たので報告する。
2. 実験
国立極地研究所に2014年に導入したX線回折装置(SmartLab, RIGAKU)を用いた。試料台には自動試料交換台(ASC10)を用いた。試料は25mmの石英ガラス円板に貼り付けて作成した石質隕石の研磨薄片を用いた。9個のCO3隕石の薄片(Y-81020 CO3.0, ALH-77307 CO3.0, Colony CO3.0, Y-791717 CO3.3, Lance CO3.5, ALH-77003 CO3.6, Isna CO3.8, A-882094, Y983589) を用いた。X線源にはCu管球を用い、Kβ線はNiフィルターにより除去した。管電圧・管電流は、それぞれ、40kV・30mAで行った。0.4度/分の走査速度、10mm のX線照射入射幅、100rpmの試料面内回転、の測定条件で行った。この測定法は、Imae (2015)で行った粉末X線回折と整合的な回折線を得ることをあらかじめ確認した。ピークの半値幅と強度の解析にはVisual Basic 6.0ランタイムによるピーク分離プログラムを用いた。
3. 結果・議論
かんらん石の(130)の回折線は、高い非平衡(3.5以下)ではピークがスプリットする。これらは、鉄成分に富むマトリックス(低角側)とマグネシウム成分に富むI型コンドリュール(高角側)の回折線に相当する。3.6以上のサブタイプではシングルピークである。この差異をより詳しく見る(図1)と、(130)の高角側回折線は、サブタイプが3.0から3.5上昇すると、半値幅が増大し、回折線は低角へシフトする(鉄成分に富む)が、3.6以上ではピークは消失する。 (130)の低角側は、Fa~35-45の鉄に富むかんらん石で、マトリックス構成かんらん石に相当し、3.0から3.8へとサブタイプの上昇とともに半値幅が減少し、ピーク強度が増す。こうした変化は、微弱な熱変成で顕著なことを意味し、かんらん石のマグネシウムと鉄との元素拡散が構成単位のコンドリュールのサイズ以上の単一鉱物を超えたスケールで生じていることを意味する。また、こうした元素拡散は岩石学的タイプ3の変成過程で大規模に生じると解釈できる。
単斜エンスタタイトの(22-1)の回折線はサブタイプによらず認められ、直方エンスタタイトの(321)の回折線がサブタイプによらず認められた(図2)。高いサブタイプの直方エンスタタイトは低温型であってもよいが、低いサブタイプの直方エンスタタイトはコンドリュール形成時に形成した高温相由来と考えられる。一方、同様にX線測定した、非平衡普通コンドライトからは低いサブタイプから高温型直方エンスタタイトは検出されず、単斜相のみであった。このことからCO3のコンドリュールは普通コンドライトのコンドリュールと異なった温度履歴であった考えられる。この結果はImae et al. (2013)のEPMA測定の結果と整合的である。
4. 謝辞
単斜エンスタタイトの回折線に関してご教示いただいた滋賀大の大井修吾さんに感謝致します。
5. 文献
Imae N. et al. (2013) Geochim. et Cosmochim. Acta 100, 116-157.
Imae N. (2015) NIPR Symposium on Antarctic Meteorites.