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[SCG63-P20] 静岡県佐久間町浦川の中央構造線鹿塩マイロナイトの延性脆性組織
キーワード:中央構造線、鹿塩マイロナイト、脆性破壊組織、石英c軸ファブリック
本研究では中部地方静岡県佐久間町浦川地域に分布する鹿塩マイロナイトの構造発達過程について考察した.中央構造線は日本で最も大きな断層帯であり,日本を外帯と内帯に分ける地質境界でもある.中央構造線沿いの内帯側に分布する断層岩は深成岩起源の鹿塩マイロナイトと変成岩起源のマイロナイトに分類される.研究試料の鹿塩マイロナイトは大千瀬川,尻平沢から採取した.面構造に垂直,線構造に平行な面で薄片を作成し,薄片観察とSEM-EBSDシステムによる石英の結晶方位解析を行った.また,岩石中の鉱物同定のためにXRDを用いた.鹿塩マイロナイトは細粒な基質部と粗粒なポーフィロクラストをもつ典型的な延性剪断組織を示し,基質の割合からプロトマイロナイト,マイロナイト,ウルトラマイロナイトに分類された.プロトマイロナイトは石英が動的再結晶作用によって細粒化し,比較的粗粒な長石と角閃石ポーフィロクラストを持つが一部のポーフィロクラストには割れが観察された.マイロナイトでは石英と長石からなる細粒基質部が20μm程度に細粒化していた.プロトマイロナイトと同様に長石のポーフィロクラストの一部で割れが観察された.ウルトラマイロナイトはポーフィロクラストがほとんどなく非常に細粒化した石英と長石を含む基質部で構成されていた.さらに基質部の一部が割れて脆性破壊しており,延性組織に重複した脆性破壊組織が発達したカタクレーサイトに変化していた.またカタクレーサイト化作用が進んだ試料では岩片状のマイロナイトが緑泥石を多く含んだ基質部に含まれていた.これらすべての岩石試料にはカルサイト脈が観察され,プロトマイロナイトとカタクレーサイトにはローモンタイト脈が観察された.結晶方位解析の結果,すべてのマイロナイトは石英のc軸がY方向に集中したファブリックを持つことがわかった.石英c軸のY軸集中ファブリックは石英のprismすべりが卓越する環境で形成されるため,中温環境で形成された可能性がある.さらに,一部のマイロナイトのファブリックには,Y軸集中に加えてクロスガードルあるいは,シングルガードルを示した.これらのファブリックは中温で卓越するprismすべりから低温で卓越するrhombすべり,さらに basalすべりに変化したと考えられる.以上の結果は静岡県佐久間町浦川地域の鹿塩マイロナイトが降温期の延性領域から脆性領域におよぶ剪断変形作用を受けたことを示唆する.このような延性から脆性までの変形環境の変化は中央構造線形成運動を反映しているかもしれない.