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[SCG63-P22] 塩ノ平断層及び南方延長部の破砕帯の特徴
キーワード:塩ノ平断層、車断層、破砕部性状、断層ガウジ、断層活動性
2011年4月11日に発生した福島県浜通りの地震(Mj7.0;以下4.11地震)によって,福島県いわき市田人町旅人滑石から石住綱木北西に,北北西-南南東に約14kmにわたってのびる地表地震断層が出現し,塩ノ平断層と命名された(石山ほか,2011)(ここでは活動区間と呼ぶ).
4.11地震以前の研究として,「新編 日本の活断層」(活断層研究会編,1991)などにより井戸沢断層の一部をなす「活断層の疑いのあるリニアメント」が図示されていた.塩ノ平断層は,このトレースとほぼ一致するが,「新編 日本の活断層」では,4.11地震の地表地震断層の出現位置の南端よりも南方まで線が描かれ,常磐炭田地質図(須貝ほか,1957)において車断層として示されている地質断層が連続している(ここでは非活動区間と呼ぶ).
著者らは,4.11地震の活動区間と非活動区間の違いに着目した調査・研究を進めている(例えば,亀高ほか,2015;青木ほか,2015など).本発表では,活動区間と非活動区間のボーリング掘削調査の結果と,得られたコア試料の破砕帯の性状を中心に報告する.
調査地域の地質は,御斎所変成岩類に属する結晶片岩と,それらを被覆する古第三系〜新第三系堆積岩類が分布しており,塩ノ平断層及び南方延長部の断層は両者を切断している.活動区間では,いわき市田人町黒田の塩ノ平地点及び別当地点において,露頭調査及びロッド式定方位オールコア試錐を実施した.塩ノ平地点では鉛直及び80度の斜めボーリングを行い,両方の試錐コアで緑色片岩と堆積岩類の境界付近に,幅約20〜30cmの暗緑色ガウジを伴う断層面(N20W/75W)が認められた.断層ガウジ周辺には断層角礫が発達し,特に下盤側の緑色片岩に厚く分布している.一方,別当地点では80度の斜めボーリングを行い,試錐コアでは結晶片岩の破砕帯中に幅約25cmの褐色ガウジを伴う断層面(N7W/80W)が認められた.
非活動区間では,北茨城市関本町富士ヶ丘の水上北方地点においてロッド式定方位オールコア試錐を実施した.掘削したコアは深度が浅いほうから順に表土,古第三系堆積岩類(主に礫岩),緑色片岩,砂質・泥質片岩の順に分布している.このうち堆積岩類の一部,及び結晶片岩類は全て断層活動による破砕を受けている.礫岩と緑色片岩は初生的には不整合関係と考えられるが,断層による破砕のためその境界は不明瞭である.コア深度20.39m付近に幅約2cmの黒緑色ガウジを伴う断層面(N4E/74W)が,コア深度20.86m付近に幅約11cmの灰緑色ガウジ及び灰色ガウジを伴う断層面(N1E/86W)が認められる.前者は緑色片岩起源の断層角礫中に認められ,後者は緑色片岩起源の断層角礫と砂質・泥質片岩起源の断層角礫の境界に位置している.ガウジの下盤側には断層角礫が続き,一部はカタクレーサイト様の固結した性状を示す.
破砕帯の規模や構成する断層岩の性状から,塩ノ平断層及び南方延長部では古第三系堆積岩類の堆積以前から断層活動が生じていた可能性が示唆される.
X線回折分析の結果から,活動区間の塩ノ平地点及び別当地点の露頭試料の断層ガウジにはスメクタイトが多く含まれており,緑泥石の含有量は少ないかまたは検出できない.一方,非活動区間の水上北地点の断層ガウジに含まれる粘土鉱物には緑泥石が比較的多く,スメクタイトやイライトが伴われているがその量比はガウジによって若干異なっている.このように,活動区間と非活動区間では断層ガウジを構成する粘土鉱物に有意な差が認められる.
【文献】
青木和弘ほか,2015,塩ノ平断層における断層ガウジの摩擦特性.連合大会2015年大会講演要旨,SCG57-25.
石山達也ほか,2011,日本地震学会ニュースレター,vol.23, no.5, 36-38.
亀高正男ほか,2015,塩ノ平断層の破砕部性状と断層活動性.連合大会2015年大会講演要旨,SCG57-P32.
活断層研究会,編集,1991,新編 日本の活断層ー分布図と資料ー.東大出版会,437p.
須貝貫二ほか,1957,常磐炭田地質図, 1:50,000ならびに説明書.地質調査所,154p.
4.11地震以前の研究として,「新編 日本の活断層」(活断層研究会編,1991)などにより井戸沢断層の一部をなす「活断層の疑いのあるリニアメント」が図示されていた.塩ノ平断層は,このトレースとほぼ一致するが,「新編 日本の活断層」では,4.11地震の地表地震断層の出現位置の南端よりも南方まで線が描かれ,常磐炭田地質図(須貝ほか,1957)において車断層として示されている地質断層が連続している(ここでは非活動区間と呼ぶ).
著者らは,4.11地震の活動区間と非活動区間の違いに着目した調査・研究を進めている(例えば,亀高ほか,2015;青木ほか,2015など).本発表では,活動区間と非活動区間のボーリング掘削調査の結果と,得られたコア試料の破砕帯の性状を中心に報告する.
調査地域の地質は,御斎所変成岩類に属する結晶片岩と,それらを被覆する古第三系〜新第三系堆積岩類が分布しており,塩ノ平断層及び南方延長部の断層は両者を切断している.活動区間では,いわき市田人町黒田の塩ノ平地点及び別当地点において,露頭調査及びロッド式定方位オールコア試錐を実施した.塩ノ平地点では鉛直及び80度の斜めボーリングを行い,両方の試錐コアで緑色片岩と堆積岩類の境界付近に,幅約20〜30cmの暗緑色ガウジを伴う断層面(N20W/75W)が認められた.断層ガウジ周辺には断層角礫が発達し,特に下盤側の緑色片岩に厚く分布している.一方,別当地点では80度の斜めボーリングを行い,試錐コアでは結晶片岩の破砕帯中に幅約25cmの褐色ガウジを伴う断層面(N7W/80W)が認められた.
非活動区間では,北茨城市関本町富士ヶ丘の水上北方地点においてロッド式定方位オールコア試錐を実施した.掘削したコアは深度が浅いほうから順に表土,古第三系堆積岩類(主に礫岩),緑色片岩,砂質・泥質片岩の順に分布している.このうち堆積岩類の一部,及び結晶片岩類は全て断層活動による破砕を受けている.礫岩と緑色片岩は初生的には不整合関係と考えられるが,断層による破砕のためその境界は不明瞭である.コア深度20.39m付近に幅約2cmの黒緑色ガウジを伴う断層面(N4E/74W)が,コア深度20.86m付近に幅約11cmの灰緑色ガウジ及び灰色ガウジを伴う断層面(N1E/86W)が認められる.前者は緑色片岩起源の断層角礫中に認められ,後者は緑色片岩起源の断層角礫と砂質・泥質片岩起源の断層角礫の境界に位置している.ガウジの下盤側には断層角礫が続き,一部はカタクレーサイト様の固結した性状を示す.
破砕帯の規模や構成する断層岩の性状から,塩ノ平断層及び南方延長部では古第三系堆積岩類の堆積以前から断層活動が生じていた可能性が示唆される.
X線回折分析の結果から,活動区間の塩ノ平地点及び別当地点の露頭試料の断層ガウジにはスメクタイトが多く含まれており,緑泥石の含有量は少ないかまたは検出できない.一方,非活動区間の水上北地点の断層ガウジに含まれる粘土鉱物には緑泥石が比較的多く,スメクタイトやイライトが伴われているがその量比はガウジによって若干異なっている.このように,活動区間と非活動区間では断層ガウジを構成する粘土鉱物に有意な差が認められる.
【文献】
青木和弘ほか,2015,塩ノ平断層における断層ガウジの摩擦特性.連合大会2015年大会講演要旨,SCG57-25.
石山達也ほか,2011,日本地震学会ニュースレター,vol.23, no.5, 36-38.
亀高正男ほか,2015,塩ノ平断層の破砕部性状と断層活動性.連合大会2015年大会講演要旨,SCG57-P32.
活断層研究会,編集,1991,新編 日本の活断層ー分布図と資料ー.東大出版会,437p.
須貝貫二ほか,1957,常磐炭田地質図, 1:50,000ならびに説明書.地質調査所,154p.