日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM34] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2016年5月24日(火) 15:30 〜 17:00 コンベンションホールA (2F)

コンビーナ:*松島 政貴(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)、菅沼 悠介(国立極地研究所)、座長:星 博幸(愛知教育大学自然科学系理科教育講座地学領域)、小田 啓邦(産業技術総合研究所地質情報研究部門)

15:45 〜 16:00

[SEM34-14] 磁化率周波数スペクトルのインバージョンとパルス磁化緩和から得られる磁気緩和時間の比較検討

*小玉 一人1 (1.高知大学海洋コア総合研究センター)

キーワード:磁気緩和時間、周波数スペクトル、インバージョン

火山岩類から得られる交流磁化率の周波数スペクトルは、SP 粒子の磁気緩和だけでなく、MD 粒子の磁区構造や磁壁のダイナミクスなど多彩な情報を含むと考えられる。本研究では、同一試料について、MPMSによる低温広帯域の複素磁化率と室温におけるパルス磁気緩和を測定し、それらの結果の比較検討から明らかとなった新たな諸現象を紹介する。複素磁化率スペクトルは、室温(300K)から10 K、周波数1 Hzから1 kHzで測定した。パルス磁気緩和はKodama (2015)の方法により、強弱2段階のパルス磁場(7mTと0.7T)と2段階のパルス幅(0.13msと11ms)で行った。測定試料は、ハワイ・伊豆大島・桜島など内外各地のSD~PSD火成岩である。ハワイを除くすべての試料は、130Kから30 Kの範囲で虚数磁化率k”に顕著なピークを示した。実数磁化率k’の減衰曲線とあわせると、それらは限られた緩和時間分布をもつ粒子集団のデバイ型緩和スペクトルと解釈できる。一方、k”のピーク周波数が温度低下につれて低周波側にシフトし、それらピーク周波数と温度の逆数の対数プロット(Neel-Arrhenius plot)が直線となることも、上記の解釈を支持する。さらに、ひとつのスペクトルを複数のDebye型スペクトルに分解するインバージョン法(Debye decomposition)(Nordsiek & Wellner, 2008)を適用することによって緩和時間の離散スペクトルを求めた。それらの結果を室温に外挿した推定値は、パルス磁気緩和測定から直接得られた緩和時間とほぼ一致する。”緩和周波数”(=緩和時間の逆数)は100 kHzから1 MHzで、一般的な強磁性振動や磁壁振動などスピンの動力学が支配する微視的領域の共鳴振動数(数100 MHz~GHz)と比較して著しく低周波である。このことは、今報告の磁気緩和現象が、磁性粒子のサイズ・形状・弾性や磁壁の可逆移動などの巨視的な要因によることを示唆する。