日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM34] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2016年5月24日(火) 15:30 〜 17:00 コンベンションホールA (2F)

コンビーナ:*松島 政貴(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)、菅沼 悠介(国立極地研究所)、座長:星 博幸(愛知教育大学自然科学系理科教育講座地学領域)、小田 啓邦(産業技術総合研究所地質情報研究部門)

16:15 〜 16:30

[SEM34-16] 入戸火砕流堆積物から抽出した粒子の自然残留磁化とその起源の検討

*武田 大海1山本 裕二2佐藤 雅彦3川畑 博4 (1.高知大学大学院総合人間自然科学研究科、2.高知大学 海洋コア総合研究センター、3.産業技術総合研究所地質調査総合センター、4.高知大学理学部)

日本周辺には数多くの広域テフラが分布し、様々な地球科学的研究が行われてきている。古地磁気・岩石磁気学的研究においては、テフラを構成する粒子群が集合体として獲得しているマクロな残留磁化を主な分析対象としているが、個々の粒子は噴出時に熱的なプロセスによる熱残留磁化(TRM)を獲得している可能性が考えられる。本研究では入戸火砕流堆積物の非溶結部から20~30メッシュ(595~841μm)の粒子を抽出し、古地磁気・岩石磁気学的分析を行うことで、NRMの起源を検討した。 入戸火砕流堆積物から抽出し、種類別に塊状火山ガラス、軽石型火山ガラス、緑色岩片、黒色岩片、輝石、石英・長石の6種類に分類した646個の粒子の自然残留磁化(NRM)を測定した。その中で79個の粒子(12.2%)はブランク平均(8~17pAm2)に比して有意に強いNRM強度を保持していることが分かった。これらの粒子から種類別に各1~2個を選定して段階交流消磁を行ったところ、塊状火山ガラス、軽石型火山ガラス、黒色岩片、緑色岩片については安定な残留磁化を保持していることが分かった。さらにこれらの粒子に対して各種の岩石磁気分析を行ったところ、安定磁化成分は保磁力の高い単磁区サイズのマグネタイトが主なキャリアーであることが分かった。 これらの粒子は、非履歴性残留磁化(ARM)、等温残留磁化(IRM)の段階交流消磁に対しても安定性を示した。一部を除きNRM/ARM比は1.24~4.07を示し、NRM/IRM比は0.0224~0.0475を示した。これらの比は、Yu (2010)によって単磁区~疑似単磁区サイズのマグネタイトについて報告されているTRM/ARM比(2.60±1.32(1σ))およびTRM/IRM比(0.0362±0.0128(1σ))と標準偏差(1σ)の範囲内で一致する。したがってNRMの起源は熱残留磁化であることが示唆される。