09:45 〜 10:00
[SMP15-04] Thermal history and heat source of the southern part of Hidaka metamorphic belt
★招待講演
キーワード:Hidaka metamorphic belt, thermal history, heat source, garnet, zircon U-Pb age
日高変成帯は、島弧衝突帯であり、東側から西側にかけて変成度が上昇し最も西側ではグラニュライト相に達しており、島弧深部における熱物質輸送を解明するのに適した研究対象である。Shimura et al. (2015)は、日高変成岩や貫入岩類のジルコンU-Pb年代測定を広域的に行い、日高変成帯の東側ゾーンは~37Ma、西側ゾーンは~19Maと年代分帯できることを見出し、それに基づいて、日高変成帯は、時代の異なる上下2層の変成岩が積み重なる形成モデルを提案した。しかし、関連する変成作用やマグマ活動の熱源については明確になっていない。
日高変成帯主帯西縁にはマントル由来の橄欖岩体が点在している。そのうち、最大の幌満橄欖岩体は、1GPa以深で局所加熱を経験しつつ上昇し、それ以浅では冷却上昇し、~0.7GPaで急冷したと考えられている(Ozawa, 2004; Takahashi, 2001)。また、最近の日高帯南部の地震波速度構造解析から、マントルが日高主衝上断層に沿って地殻浅部まで連続している構造モデルが提案されている(Kita et al., 2012)。これらは、高温のマントルが日高変成帯最深部へ連続性を保ちつつ上昇することによって地殻の部分融解と変成作用を駆動する熱源の役割を果たした可能性を示唆する。本研究では、これまで詳細に調べられていなかった日高変成帯南部における橄欖岩体近傍の変成岩類のP-T-tパスを明らかにすると同時に変成作用やマグマ活動の年代を決定することで、日高島弧地殻の加熱機構解明を目的とする。
日高変成帯南部のニカンベツ川、アベヤキ川には小規模ながら日高変成帯最深部を構成するレルゾライトやハルツバージャイトを主とする橄欖岩体が分布し、その周囲に多様な鉱物組合せと量比を持つ主に泥質のグラニュライト相~角閃岩相に相当する変成岩類とザクロ石トーナライトが分布する。変成岩類は主にPl+Qz+Bt±Grt±Opx±Crd±Kfdからなる泥質片麻岩やPl+Qz+Hbl+Cpxからなる苦鉄質岩から成り、Pl+Qz±Bt±Grt±Opxからなる優白質脈を伴う。変成岩体中のザクロ石の出現領域は、ニカンベツ橄欖岩体やアベヤキ橄欖岩体から約300mの範囲内に限られており、それよりも遠方ではPl+Qz+Bt±Msからなり、優白質脈を伴わない泥質片麻岩やマイロナイトが分布する。これらの東側には、東に傾斜する大規模な衝上断層を境として上盤であるトーナライト岩体が分布している。ザクロ石の存在領域が橄欖岩の空間分布に依存していることから、変成岩体中には橄欖岩体に向かう温度勾配が存在すると考えられる。また、ザクロ石の存在領域において鉱物の化学組成を詳しく調べた。変成岩体中の鉱物は化学的不均質性を保存しており、ザクロ石、斜長石の平均組成と累帯構造は調査地域内で変化する。以上から、加熱程度の空間変化の存在が示唆される。
調査地域から採取した変成岩中と衝上断層の上盤・下盤両者のトーナライトと変成岩中のジルコンの成長外縁のU-Pb年代を測定した。衝上断層の上盤のトーナライトからは36~39Maという年代が得られ、Shimura et al. (2015)と調和的である。一方、衝上断層の下盤の年代は変成岩・トーナライト共に19~22Maであった。この年代は、幌満橄欖岩体のスピネルレルゾライトに含有され、岩体上昇中の交代作用によって形成されたと考えられているフロゴパイト脈のRb-Srアイソクロン年代23±1.2Ma (Yoshikawa et al., 1993)と誤差の範囲で一致しているか、それより少し若い。このことから、地殻下部に上昇した高温マントル物質がニカンベツ・アベヤキ川の変成岩類の熱源となり、冷却した可能性を示唆する。変成岩類はマントル物質による加熱とそれに引き続く上昇中の冷却の記録を残していると考えられる。
日高変成帯主帯西縁にはマントル由来の橄欖岩体が点在している。そのうち、最大の幌満橄欖岩体は、1GPa以深で局所加熱を経験しつつ上昇し、それ以浅では冷却上昇し、~0.7GPaで急冷したと考えられている(Ozawa, 2004; Takahashi, 2001)。また、最近の日高帯南部の地震波速度構造解析から、マントルが日高主衝上断層に沿って地殻浅部まで連続している構造モデルが提案されている(Kita et al., 2012)。これらは、高温のマントルが日高変成帯最深部へ連続性を保ちつつ上昇することによって地殻の部分融解と変成作用を駆動する熱源の役割を果たした可能性を示唆する。本研究では、これまで詳細に調べられていなかった日高変成帯南部における橄欖岩体近傍の変成岩類のP-T-tパスを明らかにすると同時に変成作用やマグマ活動の年代を決定することで、日高島弧地殻の加熱機構解明を目的とする。
日高変成帯南部のニカンベツ川、アベヤキ川には小規模ながら日高変成帯最深部を構成するレルゾライトやハルツバージャイトを主とする橄欖岩体が分布し、その周囲に多様な鉱物組合せと量比を持つ主に泥質のグラニュライト相~角閃岩相に相当する変成岩類とザクロ石トーナライトが分布する。変成岩類は主にPl+Qz+Bt±Grt±Opx±Crd±Kfdからなる泥質片麻岩やPl+Qz+Hbl+Cpxからなる苦鉄質岩から成り、Pl+Qz±Bt±Grt±Opxからなる優白質脈を伴う。変成岩体中のザクロ石の出現領域は、ニカンベツ橄欖岩体やアベヤキ橄欖岩体から約300mの範囲内に限られており、それよりも遠方ではPl+Qz+Bt±Msからなり、優白質脈を伴わない泥質片麻岩やマイロナイトが分布する。これらの東側には、東に傾斜する大規模な衝上断層を境として上盤であるトーナライト岩体が分布している。ザクロ石の存在領域が橄欖岩の空間分布に依存していることから、変成岩体中には橄欖岩体に向かう温度勾配が存在すると考えられる。また、ザクロ石の存在領域において鉱物の化学組成を詳しく調べた。変成岩体中の鉱物は化学的不均質性を保存しており、ザクロ石、斜長石の平均組成と累帯構造は調査地域内で変化する。以上から、加熱程度の空間変化の存在が示唆される。
調査地域から採取した変成岩中と衝上断層の上盤・下盤両者のトーナライトと変成岩中のジルコンの成長外縁のU-Pb年代を測定した。衝上断層の上盤のトーナライトからは36~39Maという年代が得られ、Shimura et al. (2015)と調和的である。一方、衝上断層の下盤の年代は変成岩・トーナライト共に19~22Maであった。この年代は、幌満橄欖岩体のスピネルレルゾライトに含有され、岩体上昇中の交代作用によって形成されたと考えられているフロゴパイト脈のRb-Srアイソクロン年代23±1.2Ma (Yoshikawa et al., 1993)と誤差の範囲で一致しているか、それより少し若い。このことから、地殻下部に上昇した高温マントル物質がニカンベツ・アベヤキ川の変成岩類の熱源となり、冷却した可能性を示唆する。変成岩類はマントル物質による加熱とそれに引き続く上昇中の冷却の記録を残していると考えられる。