日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] Eveningポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW20] 流域の物質輸送と栄養塩循環-人間活動および気候変動の影響-

2018年5月21日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:齋藤 光代(岡山大学大学院環境生命科学研究科)、小野寺 真一(広島大学大学院総合科学研究科)、細野 高啓(熊本大学大学院先導機構、共同)、Adina Paytan(University of California Santa Cruz)

[AHW20-P15] 離島の水環境に関する比較研究―長崎県の島嶼を中心に―(2)

*矢巻 剛1小寺 浩二2浅見 和希1猪狩 彬寛1堀内 雅生3 (1.法政大・院、2.法政大・地理、3.法政大・学)

キーワード:壱岐島、対馬、五島列島、平戸島、水環境

はじめに 古くから多くの島嶼で水環境変化に関する研究が行われてきたが、長崎県の島嶼に関する調査・研究はほとんどなく、2014年から五島列島、対馬、壱岐、平戸と研究を進めてきた。調査により、季節変化や地形・地質の影響をはじめとした各島の特徴が明らかになってきた。今回は、各地域の水環境について、土地利用や気候との関係などから明らかにする。
対象地域 壱岐は、最高標高213mながら起伏に富み、島の各地に数多くの溜池が存在している。対馬は、島全体の標高が比較的高く、約89%を山地が占める。五島列島は大小約140の島々が連なり、複雑で変化に富んでおり、各島で大きく地質も異なる。平戸諸島は山がちながら田畑も比較的多い。いずれの地域も汚水処理人口普及率は20-40%程度と低い。
研究方法 既存研究の整理と検討を行った上で、現地調査を2014年から年2~4回実施した。現地では、水温、気温、電気伝導度(EC)、比色pHおよびRpH、CODを計測し、採水して全有機炭素の測定と主要溶存成分の分析を行なった。雨水は壱岐・対馬・平戸・五島列島・島原半島で毎月採取し、河川水と同様に分析した。
結果・考察 壱岐では農業の影響がECやTOCに現れているが、硝酸の影響がほぼないのは興味深い。対馬などと比較して上流域でも溶存成分濃度が高いのは、農業用水の地下水の寄与が大きいと考えられる。一方、五島列島では硝酸が多く検出されたが、壱岐では水田が、五島列島では畑地が卓越していることに要因があると考えられる。対馬はECや溶存成分濃度が比較的低く、季節変化も大きく現れた。平戸島では特に南部で地質の影響が大きい地点が多く、生月島や的山大島では海塩の影響がみられた。雨水は10~3月にECが上昇しpHが低下する傾向が見られ、越境汚染との関係について詳細に考察する必要がある。
おわりに 以上から、島嶼の水質の違いは地質や地形、農業形態の相違の影響が大きいと考えられる。今後は、小流域毎の詳細な解析・考察を進め、各島における水環境の特徴をより明確にしていく必要がある。