日本地球惑星科学連合2018年大会

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[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-BG 地球生命科学・地圏生物圏相互作用

[B-BG02] 生命-水-鉱物-大気相互作用

2018年5月21日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:高井 研(海洋研究開発機構極限環境生物圏研究センター)、中村 謙太郎(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、上野 雄一郎(東京工業大学大学院地球惑星科学専攻、共同)、鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)

[BBG02-P07] 地球表層環境における 鉱物 - 微生物相互作用とその進化

*赤井 純治1 (1.新潟大学)

キーワード:鉱物ー微生物 相互作用、地球表層、進化、マンガンノジュール、生物誘導型鉄鉱床、走磁性バクテリア

「地球における生命活動の本質が、「生命」、「水」、「鉱物(岩石)」、「大気」の各因子間あるいは多元的に生じる相互作用にあるという考え」(高井研:本セッション趣旨)と同様の視点で筆者は鉱物学の立場から、鉱物—微生物相互作用を20年余研究してきた。ここでは、バイオミネラリゼーションと微生物―鉱物相互作用を小総括して、地球表層進化史における結節点の一つとしての鉱物であるという位置付けでまとめうること、また、少し哲学的にも概観してみたい。

 鉱物学の歴史をたどると、一つの流れでは、1)19Ce~鉱物の規則性の起源・本質、2)1950s~鉱物の不規則性・変倚性・変異~これは生成と履歴の刻印、そして3)1990s~鉱物という階層構造の、上位・下位・諸階層、生物—とくに微生物との相互作用、に今関心がむいてきているとも捉えられる。鉱物の生成と変化の基本は、一般的には物理化学的原理があり、鉱物の安定性、変化は熱力学で取り扱われる。これは普遍的原理として貫徹している。従来、鉱物という存在があって、温度・圧力などはいわば外的条件ととらえられがちであったが、そうではない。鉱物を一つの系としてみると、それがもつギブスの自由エネルギーGの中に温度圧力がくみこまれている:G=U+PV-TSこれは、鉱物にとっての自己運動の内的要因としてある。鉱物の運動は、単にこの原理にとどまらず生成変化消滅の過程で、生物・他との相互作用を行う複雑な網目状の運動像である。地球表層の環境と「進化」がこのような連結、相互作用全体でつくられており、その反映がさまざまに鉱物にも起こるし、逆に鉱物からの働きかけということもある。鉱物をこのようなN次元空間でとらえる必要がある。

 近年、R.Hazen et al.(2008, Am.Min.)のMineralEvolution という論文が注目される。果たして鉱物は進化するのか。この論文では、地球、宇宙の歴史に沿って、鉱物種数が、1)45.6億年以前、始原的物質プレソーラー粒子では鉱物種60種、2)45.6億年~45.5億年前、微惑星での諸過程で250種、3)地球の地殻とマントルの生成<45.5億~40億年前、350-500種、40億年~35億年前、花崗岩の生成の頃 1000種、30億年前頃 プレートテクトニクスの開始、1500種、>、4)生物が関与した鉱物生成の時代<25億年前~19億年前の酸化的環境生成で4000種と急増、5.42億年前—現代:顕生代4300種> これらは鉱物の進化といえる、という。が、これは鉱物種の多様化であり、鉱物がひとつの連続体として進化しているわけではなく、鉱物の時代性というべきで、むしろ地球表層が進化している、そのことの反映である。

 このように複雑に織りなす網目状の相互作用、特に鉱物から見た、鉱物―微生物相互作用の諸例を紹介する:表層環境そのものに鉱物も動的に関わっている諸相、資源の生成になっている諸例、表層地球の物質・元素循環を担っている具体的様子の一端が見える。具体例として元素/鉱物種毎に以下をとりあげる。

Mn:マンガンノジュールのストロマトライト仮説とフラクタル特性:太平洋5地点の深海底Mnノジュールについて検討し、これが複数のバクテリアが作るストロマトライトであり、共通のフタクタル的形態特徴を持つことを明らかにした。

Fe:群馬鉄山鉄鉱床は従来、沈澱型の鉄鉱とされてきたが、鉄酸化バクテリア、珪藻、耐強酸性チャツボミゴケ等が複合して作る生物誘導型鉄鉱床である。現在も鉄生成が見られる。また先カンブリア時代の単細胞世界に生成したBIF等とは強いコントラストをなす。また戦後、国内2位(露天掘りでは1位)の生産で戦後復興を支えた鉱山遺産の意味も含め耐強酸性チャツボミゴケ生育地と合わせ天然記念物になった(2017年3月)

Au:砂金に付随するバクテリア形態の金、微生物マット、および硫酸塩還元バクテリア培地でのバクテリアによる金ナノ粒子の濃集沈澱、珪藻による金の濃集実験。
As:広範なアジア地下水ヒ素汚染で、ヒ素溶出メカニズムにかかわるバクテリア要因を実験的に解明した。
Cs:原発事故によるCsの環境汚染、表層再循環予測の中での微生物の関与を推定した。
FeS2 フランボイダル黄鉄鉱のバクテリアによる生成実験。
Fe3O4 走磁性バクテリア中磁鉄鉱;BCMバイオミネラリゼーションの端緒の可能性の指摘とマグネトソーム形態から探る進化順序の仮説。

以上限られた例であるが、地球表層環境の運動の本質が網目状に連結した相互作用にあって、鉱物がその中の一つの'結節点'として絡んでいる鉱物の姿が浮かび上がる。これら相互作用が地球表層(環境)そのもの、また地球史を刻んでいるということである。