13:45 〜 14:15
[HDS11-01] 「地震時地すべり減災に向けた観測研究 -斜面地震学の展開-」
★招待講演
地震調査研究推進本部(2018)は南海トラフにおいて今後30年間に巨大地震が発生する確率が70~80 %であると発表し、前年より確率を引き上げた。また、西南日本内帯では南海トラフ巨大地震の発生の50年前から内陸地震の地震活動が活発となる(堀・尾池、1997)とされ、プレート境界地震、内陸地震ともに地震発生の可能性が高まっていると言える。このような地震によって、過去にも大規模な斜面崩壊が引き起こされてきた(例えば、千木良、1998; 2005)が、地震に伴う斜面崩壊の発生メカニズムに関する研究は十分であるとは言えず、近い将来起こりうる地震に対する対策も進んでいないのが現状である。
これまでの地震に伴う斜面崩壊についての研究として、崩壊発生域の地質学的な特徴や地形学的なパラメータによる分類わけ、定常観測網から空間補間した水平最大地動加速度(PGA)による崩壊場の検討、鉛直下方からS波を均質な移動土塊に入力し破壊条件を検討するシミュレーションなどがおこなわれている。また、斜面のある点における水平PGAを入力パラメータとして安全率を求め、危険度評価や斜面崩壊防止対策がなされている。
一方、地震波伝播の研究によって、必ずしもS波到来時に水平動だけが卓越するとは限らず、また、地形や地下の不均質構造によって地震波が空間的にコヒーレントとなるかどうかは周波数ごとの検討が必要となることが示唆される。また、地震動に対する間隙水圧の応答が移動土塊の安定性に大きく影響を与える。より高度に、かつ、定量的な災害予測をおこなうためには、地質学的、地形学的に危険と判断された斜面が、地震時にどのように振る舞うかを明らかにする必要がある。例えば、地質学的にすべり面となりうる層序において、地震動や間隙水圧応答がどのようになるかを把握し、どのような地震動ですべり面での微小破壊が発生し、土塊全体がすべりうるかを調べることが重要であると考えられる。
しかしながら、崩壊斜面において地震動や地下水圧、地震後の変形を計測した事例は僅少であり、ほとんど明らかになっていないと考えても差し支えない。そこで、我々は、さまざまなタイプの斜面に観測点を設置し、斜面内部での地震動およびその他の現象の観測を始めた。本研究では、その結果を紹介するとともに、そこから見えてきた斜面崩壊の発生メカニズム理解のための問題点、方向性について議論する。
これまでの地震に伴う斜面崩壊についての研究として、崩壊発生域の地質学的な特徴や地形学的なパラメータによる分類わけ、定常観測網から空間補間した水平最大地動加速度(PGA)による崩壊場の検討、鉛直下方からS波を均質な移動土塊に入力し破壊条件を検討するシミュレーションなどがおこなわれている。また、斜面のある点における水平PGAを入力パラメータとして安全率を求め、危険度評価や斜面崩壊防止対策がなされている。
一方、地震波伝播の研究によって、必ずしもS波到来時に水平動だけが卓越するとは限らず、また、地形や地下の不均質構造によって地震波が空間的にコヒーレントとなるかどうかは周波数ごとの検討が必要となることが示唆される。また、地震動に対する間隙水圧の応答が移動土塊の安定性に大きく影響を与える。より高度に、かつ、定量的な災害予測をおこなうためには、地質学的、地形学的に危険と判断された斜面が、地震時にどのように振る舞うかを明らかにする必要がある。例えば、地質学的にすべり面となりうる層序において、地震動や間隙水圧応答がどのようになるかを把握し、どのような地震動ですべり面での微小破壊が発生し、土塊全体がすべりうるかを調べることが重要であると考えられる。
しかしながら、崩壊斜面において地震動や地下水圧、地震後の変形を計測した事例は僅少であり、ほとんど明らかになっていないと考えても差し支えない。そこで、我々は、さまざまなタイプの斜面に観測点を設置し、斜面内部での地震動およびその他の現象の観測を始めた。本研究では、その結果を紹介するとともに、そこから見えてきた斜面崩壊の発生メカニズム理解のための問題点、方向性について議論する。