日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS11] 湿潤変動帯の地質災害とその前兆

2018年5月22日(火) 15:30 〜 17:00 201B (幕張メッセ国際会議場 2F)

コンビーナ:千木良 雅弘(京都大学防災研究所)、小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)、八木 浩司(山形大学地域教育文化学部、共同)、内田 太郎(国土技術政策総合研究所)、座長:太田 岳洋

16:45 〜 17:00

[HDS11-10] 2017年7月九州北部豪雨による斜面崩壊の地質

*千木良 雅弘1Ling Sixiang1松四 雄騎1 (1.京都大学防災研究所)

キーワード:豪雨、斜面崩壊、地質

2017年7月5日から6日にかけて九州北部で集中豪雨があり,福岡県朝倉市および大分県日田市と周辺で膨大な数の斜面崩壊が発生した。その結果死者37名,行方不明者4名の人的被害の他,多くの家屋の全半壊や浸水など,甚大な被害が発生した。これらの斜面崩壊を国土地理院の地理院地図の正射画像判読,XRAINデータ解析,崩壊発生前後の1mDEMを用いた地形解析,および現地調査によって調査検討した。調査地域には20万分の1地質図幅「福岡」(久保田他,1993)と7万5千分の1地質図幅「豆田」(赤城,1933年)が刊行されているが,後者の地質分布の方が実態にあっていた。そのため,「豆田」図幅を現地調査によって適宜修正して検討に用いた。その結果,斜面崩壊が地質と降雨に支配されて発生したことが明らかになった。  AMEDAS朝倉によれば,降雨は7月5日昼頃始まり,6日には弱くなった。斜面崩壊は,5日から6日にかけて多発した。正射画像判読の結果,3925か所の崩壊源が判読された。XRAINによる降雨量分布によれば,崩壊は特に3時間雨量200mmを超えた地域に特に集中して発生した。そこでの崩壊密度は74個/km2であった。また,崩壊は,特に花崗閃緑岩(杷木花崗岩)と泥質片岩とで多く発生しており,地質毎の崩壊数と密度を見ると,花崗閃緑岩で942個(89/km2),泥質片岩で1216個(77/km2)であった。泥質片岩は,花崗閃緑岩近傍ではホルンフェルス化しており,この部分とホルンフェルス化していない地域とで異なる崩壊の特徴を有していた。ホルンフェルス化していない地域では,泥質片岩は,至る所で重力変形しており,崩壊は,重力変形斜面の縁で多く発生していた。重力斜面変形は深くまで及んでおり,今後も強い降雨によって崩壊が多数発生する可能性が高い。ホルンフェルス化した泥質片岩では重力斜面変形は顕著ではなかったが,節理と片理面,断層面による楔型の崩壊がしばしば認められた。花崗閃緑岩は一般的に球状風化しており,コアストンが崩壊土石に巻き込まれて土石流となり,被害を増大させていたようである。全体に表層崩壊が多かったが,コアストンが失われて強く風化したマサは,深さ6m程度にまでおよぶ深いすべりを生じていた。新第三紀火山岩の近傍では熱水変質に起因する崩壊も認められた。