09:45 〜 10:00
[MGI28-04] 球面螺旋節点上の浅水波モデル
キーワード:数値計算法、距離基底函数、球面
1. はじめに
距離基底函数(radial basis function, RBF)は,距離のみに依存する函数である。変数をRBFで展開し,節点での内挿値はそこで与えられた値と一致するという条件(節点法, collocation method)を課せば内挿係数が求まる。これを用いれば,任意の場所で精度良く内挿ができる。この内挿式を微分すれば,微分演算子が得られる。微分演算子は,RBFの微分に比例する行列BとRBFを要素とする内挿行列の逆A-1との積BA-1で表される。Flyer and Wright (2009)はこのようにして構成された微分演算子を用いて球面上の浅水波モデルを構築し,スペクトル精度(高次精度)が得られることを示した。節点は球面上の任意の場所に与えることができるが,単一の形状のRBFに対しては,一様に節点を与えた方が精度が高いことが知られている。本研究では,容易に準一様な節点が得られる球面螺旋(SH)を用いた浅水波モデルにRBFを適用し,先行研究が用いた最小エネルギー節点(ME)やNICAMに用いられている正二十面体格子(NI, Tomita et al. 2001)と比較する。
2 球面螺旋
球面螺旋は経度λと余緯度θとの簡潔な式(球面螺旋方程式, Bauer 2000)で表される。
λ=mθ mod 2π
mは螺旋の傾きを表す。ここではm2 = nπとし,南北両半球の節点の個数が等しくなるように偶数に取る。cos θ上でn個の点を均等に配置するが,極付近の非一様性を緩和するために両極上に節点を置いていない。
3. 節点の一様性
節点の一様性は,球面上の積分をする際の各節点の重みを調べることで分かる。重みは,RBFの内挿行列の逆A-1の各行の和に比例する。一様な重みからどれだけずれているか計算し,3種類の節点SH, ME, NIを比較した。MEは複数の領域で非一様性が高くなっており,NIは面や辺では一様性が高く頂点で大きくなる傾向がある。これに対し,SHは螺旋の曲率が大きくなる極付近でやや大きいがほとんど1%以内に収まっている。
4. 浅水波標準実験
浅水波標準実験(Williamson et al. 1992)を行い,3種類の節点を比較した。時間積分法には,4次のルンゲクッタ法を採用した。RBFには多重二乗を用いた。定常状態の実験(Case 2, 3)ではSHはMEと遜色ない精度を示し,誤差がMEを下回ることも多かった。孤立峰を超える流れ(Case 5),Rossby-Haurwitz波(Case 6),500 hPa解析値(Case 7)ではMEとSHとの差は不明瞭であった。NIは精度は劣るものの,渦度や発散の保存性で有利であることが分かった。
謝辞
本研究はJSPS科研費JP15K13417及び文部科学省ポスト「京」萌芽的課題3「太陽系外惑星(第二の地球)の誕生と太陽系内惑星環境変動の解明」の助成を受けた。
参考文献
Bauer, 2000: J. Guild. Control. Dyn., 23,130–137.
Flyer, N. and G. B. Wright, 2009: Proc. Roy. Soc. A, 465,1942–1976.
Williamson et al. 1992: J. Comput. Phys., 102, 211–224.
Tomita, H. et al. 2001: J. Comput. Phys., 174, 579–613.
距離基底函数(radial basis function, RBF)は,距離のみに依存する函数である。変数をRBFで展開し,節点での内挿値はそこで与えられた値と一致するという条件(節点法, collocation method)を課せば内挿係数が求まる。これを用いれば,任意の場所で精度良く内挿ができる。この内挿式を微分すれば,微分演算子が得られる。微分演算子は,RBFの微分に比例する行列BとRBFを要素とする内挿行列の逆A-1との積BA-1で表される。Flyer and Wright (2009)はこのようにして構成された微分演算子を用いて球面上の浅水波モデルを構築し,スペクトル精度(高次精度)が得られることを示した。節点は球面上の任意の場所に与えることができるが,単一の形状のRBFに対しては,一様に節点を与えた方が精度が高いことが知られている。本研究では,容易に準一様な節点が得られる球面螺旋(SH)を用いた浅水波モデルにRBFを適用し,先行研究が用いた最小エネルギー節点(ME)やNICAMに用いられている正二十面体格子(NI, Tomita et al. 2001)と比較する。
2 球面螺旋
球面螺旋は経度λと余緯度θとの簡潔な式(球面螺旋方程式, Bauer 2000)で表される。
λ=mθ mod 2π
mは螺旋の傾きを表す。ここではm2 = nπとし,南北両半球の節点の個数が等しくなるように偶数に取る。cos θ上でn個の点を均等に配置するが,極付近の非一様性を緩和するために両極上に節点を置いていない。
3. 節点の一様性
節点の一様性は,球面上の積分をする際の各節点の重みを調べることで分かる。重みは,RBFの内挿行列の逆A-1の各行の和に比例する。一様な重みからどれだけずれているか計算し,3種類の節点SH, ME, NIを比較した。MEは複数の領域で非一様性が高くなっており,NIは面や辺では一様性が高く頂点で大きくなる傾向がある。これに対し,SHは螺旋の曲率が大きくなる極付近でやや大きいがほとんど1%以内に収まっている。
4. 浅水波標準実験
浅水波標準実験(Williamson et al. 1992)を行い,3種類の節点を比較した。時間積分法には,4次のルンゲクッタ法を採用した。RBFには多重二乗を用いた。定常状態の実験(Case 2, 3)ではSHはMEと遜色ない精度を示し,誤差がMEを下回ることも多かった。孤立峰を超える流れ(Case 5),Rossby-Haurwitz波(Case 6),500 hPa解析値(Case 7)ではMEとSHとの差は不明瞭であった。NIは精度は劣るものの,渦度や発散の保存性で有利であることが分かった。
謝辞
本研究はJSPS科研費JP15K13417及び文部科学省ポスト「京」萌芽的課題3「太陽系外惑星(第二の地球)の誕生と太陽系内惑星環境変動の解明」の助成を受けた。
参考文献
Bauer, 2000: J. Guild. Control. Dyn., 23,130–137.
Flyer, N. and G. B. Wright, 2009: Proc. Roy. Soc. A, 465,1942–1976.
Williamson et al. 1992: J. Comput. Phys., 102, 211–224.
Tomita, H. et al. 2001: J. Comput. Phys., 174, 579–613.