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[MIS11-11] 国後島における津波堆積物調査:2015-2017年の成果と課題
キーワード:北方領土、国後島、津波堆積物
千島海溝に沿う十勝沖,根室沖から色丹島沖および択捉島沖にかけての領域では,過去に被害を伴う地震や津波が繰り返し発生している.また北海道の津波堆積物の分布をもとに,超巨大地震の発生確率も低くないと評価されている(地震調査委員会,2017).しかしながら,北方領土における古地震や古津波の知見は少なく,さらなるデータの蓄積が課題である.北方領土では,2005年に地震火山専門家交流が始まり.2007年には小規模ながら国後島と色丹島で津波堆積物の日本とロシアの共同調査が実施された(西村ほか,2009).この調査では貴重な成果が得られた一方,より広範囲で精密な調査の必要性も認識されることとなった.こうした背景のもと,2015年,両国の研究者5-7名が現地に集まり10日から2週間の情報交換と津波堆積物調査を実施する事業が,関係機関の協力を得て実現した.同事業は2016,2017年にも継続実施された.ここでは3回行われた調査の概要を報告し,今後の課題と展望について述べる.
国後島太平洋岸における津波堆積物調査は,2015年は中央部の古釜布,近布内,および南西部の東沸で,2016年は古釜布,近布内に加え,より東のオキツウス,植内で,2017年はさらに北東のセオイ川およびクラオイ川の河口域周辺,および両河川間に分布する沿岸低地において,それぞれ行われた.島の北東部に調査域を拡張した理由は3つある.まず,北方四島沖の巨大地震を想定して津波を計算した結果,国後島では古釜布より東の太平洋岸で波高が大きくなることが確かめられたこと.次に,島の南西部は断片的とはいえ過去に調査されていたのに対し,北東部についてはロシア側による調査もこれまで行われていなかったこと.そして,調査時期に南西域での調査が制限されたためである.調査を通じて,国後島には津波堆積物調査に適した湿原が多く残されていることがわかり,北海道および国後島の火山に由来すると思われる火山灰層と津波堆積物の候補となる砂層を,それぞれ複数,多くの場所で発見した.またクラオイ川河口右岸では,1994年の北海道東方沖地震津波によると思われる堆積物の面的な分布も確認した.
このように,国後島では学術的な価値が高く防災にも役に立つ重要な情報が得られると期待される.しかし課題も多い.例えば,試料を持ち帰って年代測定や種々の分析を行い,津波堆積物の認定や年代推定,広域対比が進めることが現状では難しい.また,千島海溝に近い色丹島の調査は,アクセスの難しさから計画できていない.本事業の目的は,北方四島周辺での減災にロシアと協力して取り組むことで交流と友好を深めて相互信頼の進展をめざし,北方領土問題解決に向けての環境作りに資することでもある.実際,北方領土在住のロシア人研究者や現地の自然保護区とは協力体制を築くことができたし,調査地の状況やアクセスの手段はほぼ把握できた.今後は,成果を防災に役立てるためのより実践的で継続可能な共同研究の方策を検討することも,目的の一つとなるだろう.
国後島太平洋岸における津波堆積物調査は,2015年は中央部の古釜布,近布内,および南西部の東沸で,2016年は古釜布,近布内に加え,より東のオキツウス,植内で,2017年はさらに北東のセオイ川およびクラオイ川の河口域周辺,および両河川間に分布する沿岸低地において,それぞれ行われた.島の北東部に調査域を拡張した理由は3つある.まず,北方四島沖の巨大地震を想定して津波を計算した結果,国後島では古釜布より東の太平洋岸で波高が大きくなることが確かめられたこと.次に,島の南西部は断片的とはいえ過去に調査されていたのに対し,北東部についてはロシア側による調査もこれまで行われていなかったこと.そして,調査時期に南西域での調査が制限されたためである.調査を通じて,国後島には津波堆積物調査に適した湿原が多く残されていることがわかり,北海道および国後島の火山に由来すると思われる火山灰層と津波堆積物の候補となる砂層を,それぞれ複数,多くの場所で発見した.またクラオイ川河口右岸では,1994年の北海道東方沖地震津波によると思われる堆積物の面的な分布も確認した.
このように,国後島では学術的な価値が高く防災にも役に立つ重要な情報が得られると期待される.しかし課題も多い.例えば,試料を持ち帰って年代測定や種々の分析を行い,津波堆積物の認定や年代推定,広域対比が進めることが現状では難しい.また,千島海溝に近い色丹島の調査は,アクセスの難しさから計画できていない.本事業の目的は,北方四島周辺での減災にロシアと協力して取り組むことで交流と友好を深めて相互信頼の進展をめざし,北方領土問題解決に向けての環境作りに資することでもある.実際,北方領土在住のロシア人研究者や現地の自然保護区とは協力体制を築くことができたし,調査地の状況やアクセスの手段はほぼ把握できた.今後は,成果を防災に役立てるためのより実践的で継続可能な共同研究の方策を検討することも,目的の一つとなるだろう.