日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS21] 南北両極のサイエンスと大型研究

2018年5月24日(木) 13:45 〜 15:15 201A (幕張メッセ国際会議場 2F)

コンビーナ:中村 卓司(国立極地研究所)、杉本 敦子(北海道大学 北極域研究センター)、杉山 慎(北海道大学低温科学研究所、共同)、野木 義史(国立極地研究所)、座長:末吉 哲雄(国立極地研究所)

14:00 〜 14:15

[MIS21-02] グリーンランドおよび南極氷床上における質量収支研究

末吉 哲雄2,3庭野 匡思4、*青木 輝夫1 (1.岡山大学、2.情報・システム研究機構 国立極地研究所、3.国立研究開発法人 海洋研究開発機構、4.気象研究所)

キーワード:北極、南極、氷床、表面質量収支、領域システムモデル

グリーンランドと東西南極の氷床は地球最大の淡水貯蔵庫であり、これら氷床の変動は単に海水準のみならず、深層水形成の変調を通して全球の気候に影響を与えうる。そのため両極の氷床は地球環境の変動研究・予測において大きな重要性を持っている。

北極では温暖化増幅により気候変動の影響が最も顕著に現れ、グリーンランドでは90年代後半から急激な融解が進行しており、2012年には観測史上初めて、表面全面で融解が生じるイベントが生じた。原因として温暖化増幅による気温上昇、雪氷不純物と積雪粒径の変化によるアルベド低下効果があり、これに沿岸部での海水温上昇による末端の質量損失の増加が加わっていると考えられる(Box, 2013; Fettweis et al., 2013)。南極では、標高の低い西南極の地上気温が全球平均よりも速いペースで温暖化し、氷流の加速による顕著な質量損失が観測されている一方、東南極域の地上気温には統計的に有意なシグナルは検出されておらず(Steig et al., 2009 など)、質量収支の傾向もはっきりしていない。

このような両極の研究の現状を踏まえた上で、今後の研究を進める上で必要なこととして、以下が考えられる(青木, 2015):AWS観測網の展開と継続、現地観測によるプロセス研究、雪氷表面の放射過程・積雪変質過程などの物理過程のモデル化と、それらを組み込んだ次世代の極域領域システムモデルの構築。さらに数値実験の結果を衛星観測と組み合わせて検証していくという方向性が必要であろう。これらの研究は部分的には既に研究に着手されており、必要なインフラの一部と関連する研究者を、日本と日本の研究者コミュニティは既に有している。このアドバンテージを活かすことが重要であると考える。