日本地球惑星科学連合2018年大会

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[JJ] ポスター発表

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[O-02] 高校生によるポスター発表

2018年5月20日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

[O02-P40] 茨城県会瀬海岸で見られた2年間にわたる海浜地形変動とその要因について

*磯部 将義1、*川崎 剛1、*細谷 隼世1、*高土 海都1、*島野 航輔1 (1.茨城県立日立第一高等学校)

キーワード:会瀬海岸、海浜地形変動、海岸流

【はじめに】
近年,茨城県北部の沿岸地域で海岸侵食の報告がなされている(宇多ほか,2008)。私たちは本校に近い日立市会瀬海岸における現状に興味をもち,調査対象地として選んだ。まず,国土地理院ホームページ「地図・空中写真閲覧サービス」を利用し,1986年から2012年の海岸線の変化を調べた。その結果,海岸線が大幅に後退している様子が見られた。そこで,本格的に現地における測量調査を継続して実施してきた。
【目的】
会瀬海岸における地形変動の状況把握と,その地形変動の要因について考察することを目的とする。
【会瀬海岸の概要】
会瀬海岸は,茨城県JR日立駅の南約1kmに位置し,背後に海蝕崖,北に海蝕台,南を会瀬漁港で囲まれた幅100m弱の太平洋に面した砂浜海岸である。海岸線は北東―南西方向に伸び、南東方向に開いている。海岸の砂は,主に中~粗粒砂である。
【調査方法】
調査法は海岸50m×30m四方内を5.0mごとに測量し,等高線図,海浜地形断面図,平均標高を作成・算出した。測量調査は2015年7月~2018年3月までの間,約50~70日ごとに行い,合計20回実施した。
【結果】
調査した2年間,平均標高の値は239.3~175.3cmの間を変動していた。また,その変動量は特に,後浜よりも前浜部分で大きかった。なお,変動が大きい時期は,前浜の傾斜角度も大きくなった。その要因は,海側部分の侵食によるものであった。調査した期間の前半1年間は,平均標高の値が大きく変動していた。後半の1年間は,平均標高の値が徐々に低下傾向を示している。
【考察】
後浜部分が変動せず,変動の場が前浜部分に集中していた結果より,変動を引き起こす主な要因として,「海岸流」「有義波高」「台風」の3点を挙げ,考察を試みた。
〇海岸付近の海岸流
会瀬海岸沖約5kmに位置する海洋ブイのデータ(国立研究開発法人水産研究・教育機構/東北区水産研究所)を利用し,過去3年間の海岸流の流向割合を調べた。結果,南東(21%),南(18%),南西(11%)の3つが優勢であり,この3つの海岸流をまとめて「南向き系海岸流」とした。この「南向き系海岸流」の割合は,平均標高の増減量と反比例の関係であった。また,「南向き系海岸流」の流速も,平均標高の増減量と反比例の関係であった。沿岸流と平均標高の間には弱い負の相関関係がみられた。
〇有義波高
有義波高については,会瀬海岸の南約20kmに位置する,常陸那珂港の波高データ(国土交通省港湾局/全国港湾波浪情報網)を利用した。有義波高の値も変動を繰り返しており,平均標高の増減量と反比例する形で変動していた。有義波高と平均標高の間にはやや弱い負の相関関係がみられた。
〇台風
2017年台風15号と18号の襲来前後1~2週間について,海浜断面図における変動を解析した。結果,変動があまり見られなかった。よって,台風のような一時的なイベントによる海浜地形への影響は少ないと考えられる。
以上より,会瀬海岸の地形変動の要因には,海岸流と有義波高は影響を与えている可能性が高い。特に沿海岸流の方がより強く影響していると考えられる。また,台風の影響は沿岸流などに比べると小さいと考えられる。

今後も,地形変動をより明らかにするため,継続して測量調査を実施していきたい。
【引用文献・参考文献】
宇多高明・三波俊郎・長山英樹・住谷廸夫・熊田貴之:「茨城県成沢・多賀・河原子海岸の侵食実態」海洋開発論文集,第24巻,P.1327~1332,2008