日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT22] 核-マントルの相互作用と共進化

2018年5月22日(火) 13:45 〜 15:15 国際会議室(IC) (幕張メッセ国際会議場 2F)

コンビーナ:飯塚 毅(東京大学)、渋谷 秀敏(熊本大学大学院先端科学研究部基礎科学部門地球環境科学分野)、土屋 卓久(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター、共同)、太田 健二(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)、座長:土屋 卓久新名 良介

14:45 〜 15:00

[SIT22-05] 回転式ダイアモンドアンビルセルを用いた下部マントル物質の変形実験

*東 真太郎1野村 龍一2上杉 健太朗3中島 悠貴4小島 洋平2土居 峻太2柿澤 翔2 (1.九州大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門、2.愛媛大学 地球深部ダイナミクス研究センター、3.高輝度光科学研究センター(JASRI/SPring-8)、4.東京工業大学)

キーワード:回転式ダイヤモンドアンビルセル、ブリッジマナイト、フェロペリクレース、変形実験

近年の高圧実験装置の開発はめざましく、今ではダイアモンドアンビルセル(DAC)によって地球の内核の圧力(~360GPa)まで再現できるに至った(Tateno et al., 2010)。その一方で、変形実験に特化した装置については技術的困難により再現できる圧力は限定的である。地球内部とその進化は動的過程によって支配されており,それを理解するためには超高圧下での変形実験から鉱物のレオロジー特性を明らかにすることが必要不可欠である。それゆえ変形実験装置が再現できる圧力範囲を拡大することは我々の地球深部ダイナミクスの理解を大きく前進させてくれることが期待される。本研究の目的は、内核までの圧力を再現でき、大歪の変形実験を実現できる回転ダイアモンドアンビルセル(回転式DAC)を開発し、実用化することであり(Nomura et al., 2017; Azuma et al., 2018)、本発表では開発された回転式DACによって行われた変形実験の結果と回転式DACの開発状況についての報告を行う。

 本研究では既存のダイアモンドアンビルセルを改良し、超高圧下においてねじり変形をサンプルに与えられるようにした。この改良された回転式DACでは、下部アンビルは固定し、上部アンビルが回転する。この回転する上部アンビルは開発した回転式DAC専用のギアボックス(made by PRETECH)に取り付けられ、定速度(10-6–10-3 rpm)で回転する。この回転式DACを用いて、下部マントルを構成しているbridgmanite((Mg,Fe)SiO3)とferropericlase((Mg,Fe)O)のmixture (2相)の変形実験を行った。サンプルにはFIBによって溝を作り、溝の側面にPtを蒸着することでStrain markerとした。変形実験後は回収試料のStrain markerを観察し歪を決定した。実験条件として温度は室温、圧力35–135 GPa、歪速度5.6×10-5–1.7×10-4 s-1である。さらに本実験はSPring-8において、新しく開発された技術であるX線ラミノグラフィー(Nomura and Uesugi, 2016)と組み合わせることでStrain markerのその場観察も行い、実験中の歪と歪速度の評価も行っている。

 Strain markerの評価によって せん断歪に対する圧縮軸方向の歪の影響を評価したところ、最大で~10%であり、ほぼsimple shear(or general shear)を実現できていると考えられる。本実験はねじり変形であるため、サンプル内の歪分布は一様ではない。回転軸からの距離が増加するにしたがって、歪は大きくなる。上部アンビルを80–120º回した場合、歪が最も大きいところで~4–10に達していた。回収された試料についてはFIBによってカットされ、その断面をFE-SEMによって観察し、各粒子をトレース、粒子面積の決定と各粒子を歪楕円体と仮定することで軸比も決定した。その結果、bridgmaniteとferropericlaseの2相系での変形実験では、ferropericlaseが大きく変形し、ferropericlaseが変形中に連結していることが確認された。本実験からはferropericlaseが下部マントルの変形の大部分を担っていることが示唆される。しかし、本実験は室温での変形実験であり、現在高温においても回転式DACによる変形実験を可能とするため、開発を進めている。