日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS15] 地震発生の物理・断層のレオロジー

2018年5月20日(日) 15:30 〜 17:00 A07 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:向吉 秀樹(島根大学大学院総合理工学研究科地球資源環境学領域)、谷川 亘(国立研究開発法人海洋研究開発機構高知コア研究所)、松澤 孝紀(国立研究開発法人 防災科学技術研究所、共同)、吉田 圭佑(東北大学理学研究科附属地震噴火予知研究観測センター)、座長:松澤 孝紀(防災科学技術研究所)、向吉 秀樹

16:15 〜 16:30

[SSS15-04] カスケードアップの臨界条件とその破壊速度依存性

*植村 堪介1井出 哲1青地 秀雄2 (1.東京大学理学系研究科、2.フランス地質調査所)

キーワード:スケール不変な破壊発生と拡大過程の物理、カスケード・アップの臨界性

準静的な核形成が自発的な破壊に移行する過程に関しては、その臨界的条件に付いて多くの議論がなされてきた(e.g., Andrews, 1976; Day, 1982; Rubin and Ampuero; 2005)。しかし一方で、Ellesworth and Beroza(1995)やUchide and Ide(2007)、Meier et al.(2016)に示されたように、地震破壊の初期過程は特徴的なスケールを持たず自己相似的であり、かつ断層の何らかの不均一性の作用をうけ破壊が加速と減速を繰り返しているようにみえる。ならば、カスケードアップの過程についても上に挙げた先行研究のような臨界性の議論が行えるのではないだろうか。

動的なカスケードアップの条件を記述するために、我々は一様な平面断層(Tp: yield strength, Te: uniform stress, μ: rigidity)に中心から等速で破壊が拡大するような小さなパッチを埋め込み、その破壊が周囲の高い破壊エネルギーを持ったバリアに止められることなく自発的成長を続けられるかどうかを調べた。もしパッチサイズがある臨界的サイズ(Rcdyn)を超えていれば、破壊は周囲に伝播することが出来る。

具体的には、断層上に一様な応力と摩擦の条件を与え(Te,Tp,Dc,μ)、ただし半径R(dyn.)の小パッチ内部では以下の式のようにDcを中心からの距離に比例させ、破壊を中心から開始させた。摩擦則は簡便のため滑り弱化則を用いている。
Dc(r) = Dc’r ·H[Rdyn.-r] + DcBG·H[r-Rdyn.]

結果、2次元Mode II, Mode III, 3次元の楕円クラックのいずれにおいても、動的臨界クラックサイズと静的臨界クラックサイズの比 Rcdyn./Rcsta.、あるいはRcdyn.での破壊エネルギーの不連続の比率は以下のように、破壊速度の関数で表せることがわかった。
Rcdyn.=ƒ(Vr) Rcsta. and DcBG=g(Vr)·Dc’Rcdyn.

関数f,gはクラック形状によって異なるが、破壊速度0から終端速度までの振る舞いはそれぞれ定性的には一致している。これらの結果は破壊速度が速いほどカスケードアップにおいて優位であることを示している。