[AHW22-P06] 次世代シーケンサーを用いた琉球石灰岩帯水層中における微生物相解析
キーワード:地下水、微生物叢解析、次世代シーケンサー
はじめに
きれいな水と衛生へのアクセス(持続可能な開発目標⑥)は,世界の重要な共通課題として認識されている.地下水は水道水源として用いられている地域も多いが,農業活動及び人や動物の排泄物由来の物質等による様々な汚染事例が報告されている.一方で,分子生物学的手法を用いた遺伝子解析技術が環境中に存在する微生物相解析に応用されている.近年では,次世代シーケンサーという最新の分析機器を使った手法が,主に,微生物を対象にして確立され,環境DNAなどの新たなモニタリング指標も開発されている.地下水中の微生物相は様々な環境因子や人間活動の影響によって変化することが考えられるがその実態は明らかにされていない.次世代シーケンサーは地下水中の微生物相を把握する上で非常に強力なツールであり,今後,微生物相は流域の水資源管理においても重要な指標となりうると考えられる.
本研究では,琉球石灰岩地域の地下水を対象に,次世代シーケンサーを用いた微生物相解析を行い,地下水中に生息する微生物種とそれらの共存関係を調べることを目的とした.
研究方法
2016年11月7日~11日沖縄県本島南部地域の慶座地下ダム流域17か所で調査を行い,そのうち10地点で地下水のサンプリングを行った.減菌処理済み500mLガラス瓶で地下水を採水し,試料をフィルターろ過機(孔径0.2㎛)でろ過した.ろ過後フィルターを切り取り,減菌した5mLのTE緩衝液が入った15mLチューブに浸漬したものをDNA抽出用試料とした.16S rDNAのV1-V3領域をPCRにより増幅し,MiSeq次世代シーケンサーに供した.MiSeqから出力されたFASTQファイルは,MacQIIME2を用いて配列のクオリティチェックとキメラチェックを行い,Operational taxonomic unit (OTU)を作成した.ソフトウェアRを用いて,低頻度出現OTUsの除外,サンプルの希釈化,リサンプリング,Tscoreの算出を行い,ネットワーク図を作成した.
結果・考察
次世代シーケンサーから出力されたデータをQIIME2によって解析した結果,調査地域の地下水中には属レベルで約350種の微生物が確認できた.湧水であるN-20地点を除き,門レベルではProteobacteria門が66-94%と大半を占めた.ほとんどの地点でCyanobacteria 門が2-30%と次に多く,地点によってPatescibacteria門が5%ほど出現しており,地点によってはCyanobacteria 門より多くみられる場合もあった.属レベルではCaulobacter属が18-50%と非常に多くみられる他,Sphingobium属,Bradyrhizobium属,Novosphingobium属などが多くみられた.
共存関係に着目したネットワーク分析によると,他の種と同時に出現しやすい属レベルで40種ほどの微生物について3つのコミュニティに分類された.同じコミュニティに出現する微生物は共存関係にある傾向が高いと捉えることが出来る.コミュニティは大きく藍藻類,根粒菌,その他がメインとなるグループとみられるが,共存関係に比重を置いたグラフになっているため,一概に種族分類ごとにコミュニティが分かれることはない.グラフによると上記に挙げたような優占種の多くがハブ種になっていると推測される.
きれいな水と衛生へのアクセス(持続可能な開発目標⑥)は,世界の重要な共通課題として認識されている.地下水は水道水源として用いられている地域も多いが,農業活動及び人や動物の排泄物由来の物質等による様々な汚染事例が報告されている.一方で,分子生物学的手法を用いた遺伝子解析技術が環境中に存在する微生物相解析に応用されている.近年では,次世代シーケンサーという最新の分析機器を使った手法が,主に,微生物を対象にして確立され,環境DNAなどの新たなモニタリング指標も開発されている.地下水中の微生物相は様々な環境因子や人間活動の影響によって変化することが考えられるがその実態は明らかにされていない.次世代シーケンサーは地下水中の微生物相を把握する上で非常に強力なツールであり,今後,微生物相は流域の水資源管理においても重要な指標となりうると考えられる.
本研究では,琉球石灰岩地域の地下水を対象に,次世代シーケンサーを用いた微生物相解析を行い,地下水中に生息する微生物種とそれらの共存関係を調べることを目的とした.
研究方法
2016年11月7日~11日沖縄県本島南部地域の慶座地下ダム流域17か所で調査を行い,そのうち10地点で地下水のサンプリングを行った.減菌処理済み500mLガラス瓶で地下水を採水し,試料をフィルターろ過機(孔径0.2㎛)でろ過した.ろ過後フィルターを切り取り,減菌した5mLのTE緩衝液が入った15mLチューブに浸漬したものをDNA抽出用試料とした.16S rDNAのV1-V3領域をPCRにより増幅し,MiSeq次世代シーケンサーに供した.MiSeqから出力されたFASTQファイルは,MacQIIME2を用いて配列のクオリティチェックとキメラチェックを行い,Operational taxonomic unit (OTU)を作成した.ソフトウェアRを用いて,低頻度出現OTUsの除外,サンプルの希釈化,リサンプリング,Tscoreの算出を行い,ネットワーク図を作成した.
結果・考察
次世代シーケンサーから出力されたデータをQIIME2によって解析した結果,調査地域の地下水中には属レベルで約350種の微生物が確認できた.湧水であるN-20地点を除き,門レベルではProteobacteria門が66-94%と大半を占めた.ほとんどの地点でCyanobacteria 門が2-30%と次に多く,地点によってPatescibacteria門が5%ほど出現しており,地点によってはCyanobacteria 門より多くみられる場合もあった.属レベルではCaulobacter属が18-50%と非常に多くみられる他,Sphingobium属,Bradyrhizobium属,Novosphingobium属などが多くみられた.
共存関係に着目したネットワーク分析によると,他の種と同時に出現しやすい属レベルで40種ほどの微生物について3つのコミュニティに分類された.同じコミュニティに出現する微生物は共存関係にある傾向が高いと捉えることが出来る.コミュニティは大きく藍藻類,根粒菌,その他がメインとなるグループとみられるが,共存関係に比重を置いたグラフになっているため,一概に種族分類ごとにコミュニティが分かれることはない.グラフによると上記に挙げたような優占種の多くがハブ種になっていると推測される.