日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS17] 歴史学×地球惑星科学

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:加納 靖之(東京大学地震研究所)、芳村 圭(東京大学生産技術研究所)、磯部 洋明(京都市立芸術大学美術学部)、岩橋 清美(国文学研究資料館)

[MIS17-P08] 静穏領域フィラメントの噴出によるマウンダー極小期中の巨大磁気嵐

*磯部 洋明1海老原 祐輔2玉澤 春史1河村 聡人3早川 尚志4 (1.京都市立芸術大学美術学部、2.京都大学生存圏研究所、3.京都大学大学院理学研究科、4.大阪大学大学院文学研究科)

キーワード:磁気嵐、オーロラ、コロナ質量放出、太陽フレア、マウンダー極小期、歴史文献

本研究の目的は歴史文献中に記録されている低緯度オーロラの記録から黒点がほとんどない時期が長期間続いたマウンダー極小期(1645-1715)における太陽活動について探ることである。マウンダー極小期における磁気緯度が30度以下の低緯度地域の記録のうち、多地点同時観測によりオーロラであることが確実視されているのが1653年3月2日のオーロラである。このイベントは中国と日本の文献に独立した記録があることがWillis & Stephenson (2000)により既に指摘されている。

オーロラの仰角を10度程度と仮定すると、観測地の磁気緯度から推定されるオーロラ帯低緯度境界の磁気緯度は約43度となる。これにオーロラ帯の磁気緯度とDst指数の経験則(Yokoyama et al. 1998)を適用するとDst指数は-325nT程度となる。マウンダー極小期中も黒点が皆無だったわけではないので、このような大規模磁気嵐を起こす一つの可能性は、この時期にたまたま大きな黒点が出現していたということである。しかし同時期にHeveliusがヨーロッパで行っていた黒点観測記録と照合すると、3月1日と9日は無黒点との記録があり、少なくとも大きな黒点はなかった可能性が高い。一方で、1994年4月14日の磁気嵐(Dst~-200nT)のように、黒点から離れた静穏領域のフィラメント噴出が強い磁気嵐を起こすこともありうる。

Burton et al. (1975)が経験的に導出したDst指数の発展方程式を解くと、太陽風中の南向き磁場40nT、太陽風速度毎秒600kmが8時間程度続けば、Dst=<-300nTが実現されることが示唆される。これはフラックスロープの磁束にして約2.5x10^21Mxに相当し、超巨大静穏領域フィラメントの噴出に付随する値としては可能な範囲と考えられる。