[MTT46-P07] 次世代高感度マイクロ波放射計の開発-序報-
キーワード:GNSS、マイクロ波放射計、水蒸気
中性大気中の水蒸気変動を高時空分解能で把握するために、次世代高感度マイクロ波放射計の開発に着手した。このマイクロ波放射計は、マイクロ波を用いたGNSSやVLBIといった宇宙測地技術の高精度化に加え、火山活動監視や積乱雲の発達過程観測への寄与を念頭に置いている。同放射計の基本的な設計概念は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)が開発したKUMODeSのそれを踏襲する。KUMODeSは、20-30 GHz帯と50-60 GHz帯の2つの帯域を受信する広帯域受信機を搭載し、前者の低雑音アンプを10Kまで冷却することで、水蒸気及び液水の吸収帯での高感度化を実現している。一方、後者の受信系は、酸素の吸収帯を同時観測することで大気放射を把握し、双方の放射温度を解析することで水蒸気に寄与する放射スペクトルを正確に推定出来る。我々は、KUMODeS観測で得られた可降水量をGNSS、ラジオゾンデ、あるいは数値予報データから得られた可降水量と比較し、KUMODeSが水蒸気時空変動を高精度に把握できる可能性を示した。これを踏まえ、新たに開発する放射計では、20-60 GHzを一気に受信可能な広帯域フィードを搭載し、得られた信号を導波管型偏波分離器(OMT)を用いて分離した水平・直交のそれぞれの偏波成分を20-30 GHz及び50-60 GHzの各々の低雑音増幅器(LNA)で受ける受信系を考えている。さらに、受信系全体をスターリング冷凍機を用いた冷凍容器に格納し、これにより信号対雑音比の向上を図ることで感度向上を目指す。この受信系の開発完了は今年の年末を目標としており、既存のパラボラアンテナ受信部に搭載して評価観測を行う予定である。