日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS03] Solar System Small Bodies: A New Frontier Arising Hayabusa 2, OSIRIS-REx and Other Projects

2019年5月29日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:石黒 正晃(ソウル大学物理天文学科)、中本 泰史(東京工業大学)、安部 正真(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、Olivier S Barnouin(Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory)

[PPS03-P01] 小惑星Ryugu表層を模擬した低強度粗粒レゴリスの衝突実験

*山本 裕也1荒川 政彦1保井 みなみ1長谷川 直2杉村 瞭1 (1.神戸大学大学院理学研究科、2.宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)

キーワード:クレーター形成実験、低強度、衝突励起振動、クレータースケール則

背景:衝突クレーターの形成は、太陽系の形成・進化において普遍的な現象である。そのため、微惑星の衝突と進化過程や小惑星上での衝突流動過程を明らかにするためにはさまざまな規模で起こるクレーター形成過程を再現するためのスケール則や衝突励起振動の研究が必要である。クレータースケール則は、その形成を支配する物理メカニズムによって2種類のものが提案されているが、そのうちレゴリス層で覆われている微惑星上に見られるクレーターは、重力によって支配されたメガニズムにより形成されると言われる。一方、このレゴリス層を構成する粒子の破壊強度が小さい場合、クレーター形成時には衝突点付近の粒子が破壊されると考えられる。従って、重力以外にも構成粒子の破壊強度がクレーター形成過程に影響を与える可能性が高い。しかしながら、レゴリス構成粒子の破壊強度を考慮した実験的研究は少なかった。そこで、本研究では、粗粒低強度粒子からなる標的に対してクレーター形成実験を行い、クレータースケール則と衝突励起振動に対する構成粒子の破壊強度の影響を調べた。

実験方法:クレーター形成実験は神戸大学の縦型一段式軽ガス銃と宇宙科学研究所の縦型二段式軽ガス銃を用いて行った。標的には直径1~4 mmの細粒鹿沼土と直径1~4 cmの大粒鹿沼土を用いたが、それぞれの粒子の圧壊強度は約60kPaと約 ◯kPaであった。弾丸には直径3 mmの密度が異なる5種類の球(鉄,ジルコニア,アルミナ,ガラス,ナイロン)と、直径2 mmのアルミ球を用いた。直径3 mmの弾丸は速度40~200 m/s、直径2 mmの弾丸は速度1.2~4.5 km/sまで加速して標的表面に対して垂直に衝突させた。衝突クレーターの形成過程は3種類のハイスピードカメラ(それぞれ10^3FPS,10^4FPS,10^5FPS)で撮影し、その動画を用いてイジェクタとして放出される個々の粒子の軌跡を求めた。また、実験後の標的は回収して、その表面に作られたクレーターの直径を計測した。また、衝突励起振動は衝突点からの距離が異なる3箇所に加速度計(型番:SV1111,SV1112,SV1113,固有振動数:30 kHz)を設置することで計測した。なお、加速度のデータはチャージアンプ(型番:AD-8725D)を通して、データロガー(取り込み速度:100 kHz)で記録した。

実験結果:クレーターサイズと弾丸の運動エネルギーの関係を調べた結果、低運動エネルギーでの関係と高運動エネルギーでの関係にオフセットが生じることがわかった。このオフセットの結果、0.14 Jから0.63 Jの領域ではクレーターサイズは運動エネルギーとともに変化せず、ほぼ一定となった。さらに高運動エネルギー領域になると、低運動エネルギーの結果のフィッティングラインの延長上に乗ることがわかった。また、πスケーリング則を用いて規格化クレーター半径(πR)と規格化重力(π2)の関係を調べたところ、衝突速度が小さい領域では砂やガラスビーズ標的等の先行研究と比較してπRがかなり小さくなり、衝突速度が大きい領域では先行研究とほぼ同じ傾向が見られた。さらに詳しく調べると、πRとπ2の関係は弾丸の種類や衝突速度によって上下2つに分離していることがわかった。このようなオフセットや分離が見られるのは、衝突の運動エネルギーが標的である低強度粒子の破壊に使われているからだと考えられる。一方、イジェクタ速度は粒子毎のばらつきが大きく明確な衝突点距離と放出速度の関係は見られなかった。さらに、加速度計のデータからは衝突励起振動の伝搬速度が30±3 m/sであり、先行研究のガラスビーズ標的の伝搬速度の約1/3倍であることがわかった。また、衝突点からの距離とその場所での最大加速度の関係はガラスビーズ標的で得られた同じ衝突条件の結果と比較すると、1/10程度とかなり低くなっていることがわかった。一方、最大加速度とクレーター半径で規格化した衝突点距離の関係を調べると、標的や弾丸の異なる先行研究と一致することがわかった。