日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG48] Science of slow earthquakes: Toward unified understandings of whole earthquake process

2019年5月29日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:井出 哲(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、廣瀬 仁(神戸大学都市安全研究センター)、氏家 恒太郎(筑波大学生命環境系)、波多野 恭弘(東京大学地震研究所)

[SCG48-P07] 高速断層すべり過程における石英質岩の水和化、非晶質化 : 人工水晶を用いた摩擦実験による検討

* 尾上 裕子1 飯田 大貴2堤 昭人1瀧川 晶1 (1.京都大学理学研究科、2.地熱エンジニアリング(株))

高速のすべり速度域では、様々な種類の岩石、断層ガウジが摩擦強度の弱化を起こすことが明らかになっており、ほとんどの岩石の高速度下での摩擦強度弱化は摩擦溶融や断層物質の熱分解などを原因とすることがわかっている。一方で、石英質岩を用いた実験では、摩擦発熱がほとんどないすべり速度 1 mm/s付近の低速度域で摩擦強度弱化がはじまっており、これは摩擦熱を原因にもたない特異的な現象と考えられている(Di Toro et al., 2004)。この石英質岩の摩擦強度弱化の要因としては、Goldsby and Tullis [2002]において摩擦表面に水和化非晶質シリカのガウジが形成され、その潤滑効果によって摩擦弱化が引き起こされるというGel lubrication modelが提唱されている。しかし、摩擦強度弱化と断層表面のガウジの水和化、非晶質化の関係は未だ明らかではない。

本研究は、石英質岩にみられる摩擦強度弱化のメカニズムを解明することを目的とした。全ての実験は京都大学の回転式中高速摩擦試験機を使用し行った。実験試料には人工水晶を使用した。実験は1.5 MPaの一定垂直応力条件下で、5 µm/s、10 µm/s、105 µm/s、1 mm/s、10 mm/s及び105 mm/sのすべり速度で実施した。本研究では、湿度による水分子の供給という点に着目し湿度0 %(DRY条件)と室内湿度約45 %(Room Humidity条件)の2種類の湿度条件を設定した。DRY条件は試料部を乾燥空気で満たすことで実現した。摩擦実験後、すべり面上のガウジを採取して、FTIR分析を行った。

摩擦実験の結果、人工水晶試料の摩擦挙動はDRY条件とRoom Humidity条件で異なるものであった。いずれの湿度条件においても摩擦挙動弱化は観察されたが、DRY条件においては従来指摘されていたすべり速度1 mm/s 付近よりさらに低速、およそ10 µm/s 付近で弱化が始まっていた。FTIR分析の結果、全測定試料でガウジの水和化が確認された。また、DRY条件及びRoom Humidity条件のいずれにおいても、速度が速いほど結晶構造の損傷が進んでいることが確認できた。
DRY条件及びRoom Humidity条件のいずれにおいても、少なくとも摩擦強度弱化のおきた試料の摩擦表面のガウジは水和化していることを示しており、これはGoldsby and Tullis [2002]の弱化モデルを否定しない。