日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS09] 地震予知・予測

2019年5月29日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:大林 政行(独立行政法人海洋研究開発機構 地球深部ダイナミクス研究分野)、馬場 俊孝(徳島大学大学院産業理工学研究部)

[SSS09-P03] 2011年東北地方太平洋沖地震に先行したF-net連続波形画像の欠測増加(2)

*末 芳樹1 (1.なし)

キーワード:2011年東北地方太平洋沖地震、F-net、スロースリップ

1.はじめに
主題地震では広帯域地震観測網F-netの欠測が本震の前後数カ月間に亘って増加したことが報告されている。

2010年12月22日から2011年1月18日にかけて1度目の増加があり最大4観測点となった.一旦減少の後,2月16日から2度目の増加があり,2月19日から3月2日にかけて再度4観測点(札幌(コード:HSS),岩手山形(IYG),気仙沼(KSN),白峰(SRN))となった.この後減少したが,本震発生時は通常より多い2観測点の欠測があった.本震後は5月2日に零に復帰した.… 2度目の増加期間は,本震域でM5クラスの地震が連続して発生していた2月13日から3月2日までとも概ね重なる.(末, 2013)

2.更なる調査
2011年2月中旬から3月上旬までの期間に対し更なる調査を行い、以下を得た。
<スロースリップ>
・ 本震発生前に震源域付近でスロースリップが起きた。スロースリップは2011年1月29日に始まり、2月19日頃に活動領域を拡大し、3月9日の三陸沖地震M7.3の直前まで存在しこの地震を誘起した。尚、3月9日の地震は前震と考えられている(内田・加藤・伊藤・太田, 2014)。
<F-netの欠測状況>
・ 2度目の欠測増加は2011年2月16日から始まり,2月19日から3月2日にかけて最大の4観測点(札幌(HSS), 岩手山形(IYG), 気仙沼(KSN), 白峰(SRN))となった。
・ 増加の始まる前から欠測していた観測点は、札幌(HSS)と岩手山形(IYG)であった。
・ 気仙沼観測点(KSN)の欠測が2月16日から3月2日に掛けて加わった。
・ さらに、白峰観測点(SRN)の欠測が2月19日から4月25日に掛けて加わり欠測は4観測点となった。白峰観測点は石川県白山市にあって三陸沖から遠いが、2月27日に近傍の飛騨地方でM5.5を始めとする群発地震が発生している。
・ 欠測観測点の増大は3月2日で終了し、その後減少してM7.3地震の前日である3月8日の欠測は、岩手山形(IYG)と白峰(SRN)の2観測点であった。
尚、日付は連続波形画像(Daily plot, UT)の情況であり、観測点に関する欠測情報は1日程度異なる場合がある。

3.まとめ
2011年2月中旬~3月上旬に掛けてのF-netの欠測の増加は、1月29日から始まり3月9日まで存在したスロースリップや2月中旬から下旬にかけての三陸沖を中心とする活発な地震活動などと時間的・空間的に重なるばかりでなく、スロースリップの領域拡大と同じ2月19日から最大の欠測数になるなど、後日震源となる付近で発生した何らかの振動に対する反応と考えられる。

謝辞
防災科学技術研究所のF-net観測網のデータを使用させて頂きました.記して感謝致します.

参考文献
末芳樹, 2013, 2011年東北地方太平洋沖地震に先行したF-net連続波形画像の欠測増加, JpGU2013, SSS30-P01.
内田直希・加藤愛太郎・伊藤喜宏・太田雄策, 2014, 特集 東北地方太平洋沖地震から3年 発生前に起きていたスロースリップ, なゐふる, Vol97.