日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS09] 地すべりおよび関連現象

2019年5月28日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:千木良 雅弘(京都大学防災研究所)、王 功輝(京都大学防災研究所)、今泉 文寿(静岡大学農学部)

[HDS09-P11] 低透水層に形成される水膜が起因となる海底地すべりに関する模型実験

*川北 章悟1朝比奈 大輔2北嶋 圭二3中西 三和3 (1.日本大学大学院理工学研究科、2.産業技術総合研究所、3.日本大学理工学部)

キーワード:海底地すべり、間隙水圧、水膜、側方流動

近年,海底堆積物の地すべりによる被害が数多く報告されている。海底地すべりは,陸上地すべりに比べ,規模が大きく,その移動距離も大きいことから大規模災害の要因になり得る。しかし,海底という環境で起こり,直接観察できないことが,海底地すべりの発生メカニズムの解明を困難にしている。

Kokusho et al. (2000) は,海底地すべりの1つの発生要因として,液状化による水膜現象を提唱し,以下のように説明した。地震により地盤が液状化すると,密度の高い土粒子が沈下し,間隙水が地表へ向けて上昇する。その際に地盤に透水性の低い層(低透水層)が存在すると,間隙水は低透水層直下に貯留し,余剰間隙水圧領域(水膜)が形成される。水膜はせん断強度が低いため,傾斜勾配が安息角よりも低い地盤においても,上部の地層が水平方向に移動する現象(側方流動)を引き起こす可能性がある。

本研究では,液状化による砂の移動と水膜による側方流動を明瞭に区別することが可能な地盤模型を作製し,水膜形成が上層地盤の側方流動に与える影響を調べた。通常,複数の層からなる傾斜地盤模型では,振動を与えると砂が移動をし始め,液状化する前に傾斜がなくなり水平になる。そのため水膜の形成と側方流動を観察することが難しい。これを解決するために,土槽内部に堰板を設けて下層の流動を防ぐ仕組み考案した。この仕組みにより,下層の液状化による砂の移動と水膜による側方流動を区別して観察することが可能になった。低透水層があるケースでは,振動を与えると下層が液状化を起こし,細かい砂粒子を含んだ間隙水が上昇していく様子が観察できた。その後,低透水層下部に水膜ができ,水膜に沿うように上層が流動した。低透水層があるケースにおいて,傾斜角度の増加と移動距離,最大流動速度の相関性は見られなかった。傾斜角度の影響は側方流動そのものよりも,側方流動中の噴砂の発生位置に影響した。噴砂が発生する位置は傾斜角度が大きくなるほど,斜面上方に移動した。この理由として,傾斜角度が大きくなると,(i)斜面上方の下層層厚が厚くなるため,より多くの間隙水が上昇すること,(ii)振動による砂の移動が多くなるため,斜面上方の上層層厚が薄くなったことが挙げられる。これらの理由から,斜面上方では斜面下方に比べて噴砂が発生しやすい状況にあったと考えられる。



[文献]

Kokusho, T.: Mechanism for water film generation and lateral flow in liquefied sand layer, Soils and Foundations, Vol.40, No.5, p 99-111, 2000.