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[MIS19-10] フィリピンのサンゴ試料を用いた過去220年間の西太平洋熱帯域の古環境復元
キーワード:西太平洋、サンゴ骨格、古気候
サンゴ骨格の酸素同位体比(δ18O)やストロンチウム・カルシウム比(Sr/Ca)は海洋表層の温度などに関する定量的な情報を得られるため、熱帯から亜熱帯域における気候の経年変動を復元するのに適した古気候・古環境指標であるとされている。しかしサンゴ骨格を用いて200年以上にわたる連続的な環境復元を行った研究は限られている。そこで本研究では西太平洋熱帯域のフィリピンで採取されたサンゴ骨格試料について、約2ヶ月の時間分解能でSr/Ca比と、酸素・炭素同位体比(δ13C)の分析を行い、過去約220年間の古環境復元を行った。
海水温のみの指標とされているSr/Ca比の測定の結果、複数の寒冷化イベントが認められ、寒冷化の年代から大規模な火山活動との関係が示唆された。同様に、δ18Oの結果からも特に19世紀前半にδ18Oの急激な上昇が認められ、これは複数の西太平洋の長尺サンゴ記録においても確認されることから、小氷期末にあたるこの時期において西太平洋熱帯域が寒冷・乾燥であった可能性がある。一方、1950年以降においては温暖・湿潤な環境へのシフトが見られた。またδ13Cの結果からは20世紀後半に急激な減少傾向が見られ、δ13C値の低い化石燃料放出の影響により大気や海洋表層のδ13Cが軽くなるスース効果を反映していると考えられた。時系列解析の結果からは、本研究地域の海水温やδ18Oの変動は、ENSOに関連した3~7年程度の変動周期が検出され、本海域はアジアモンスーンなど複数の気候要素が影響しているものの、ENSOの影響が支配的である可能性が示された。
海水温のみの指標とされているSr/Ca比の測定の結果、複数の寒冷化イベントが認められ、寒冷化の年代から大規模な火山活動との関係が示唆された。同様に、δ18Oの結果からも特に19世紀前半にδ18Oの急激な上昇が認められ、これは複数の西太平洋の長尺サンゴ記録においても確認されることから、小氷期末にあたるこの時期において西太平洋熱帯域が寒冷・乾燥であった可能性がある。一方、1950年以降においては温暖・湿潤な環境へのシフトが見られた。またδ13Cの結果からは20世紀後半に急激な減少傾向が見られ、δ13C値の低い化石燃料放出の影響により大気や海洋表層のδ13Cが軽くなるスース効果を反映していると考えられた。時系列解析の結果からは、本研究地域の海水温やδ18Oの変動は、ENSOに関連した3~7年程度の変動周期が検出され、本海域はアジアモンスーンなど複数の気候要素が影響しているものの、ENSOの影響が支配的である可能性が示された。