日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS19] 古気候・古海洋変動

2019年5月29日(水) 13:45 〜 15:15 304 (3F)

コンビーナ:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、加 三千宣(愛媛大学沿岸環境科学研究センター)、長谷川 精(高知大学理工学部)、座長:加 三千宣(愛媛大学沿岸環境科学研究センター)

14:37 〜 14:52

[MIS19-10] フィリピンのサンゴ試料を用いた過去220年間の西太平洋熱帯域の古環境復元

智原 睦美1福嶋 彩香2池原 実3川幡 穂高2鈴木 淳4、*井上 麻夕里1 (1.岡山大学大学院自然科学研究科、2.東京大学大気海洋研究所、3.高知大学海洋コア総合研究センター、4.産業技術総合研究所地質情報研究部門)

キーワード:西太平洋、サンゴ骨格、古気候

サンゴ骨格の酸素同位体比(δ18O)やストロンチウム・カルシウム比(Sr/Ca)は海洋表層の温度などに関する定量的な情報を得られるため、熱帯から亜熱帯域における気候の経年変動を復元するのに適した古気候・古環境指標であるとされている。しかしサンゴ骨格を用いて200年以上にわたる連続的な環境復元を行った研究は限られている。そこで本研究では西太平洋熱帯域のフィリピンで採取されたサンゴ骨格試料について、約2ヶ月の時間分解能でSr/Ca比と、酸素・炭素同位体比(δ13C)の分析を行い、過去約220年間の古環境復元を行った。

海水温のみの指標とされているSr/Ca比の測定の結果、複数の寒冷化イベントが認められ、寒冷化の年代から大規模な火山活動との関係が示唆された。同様に、δ18Oの結果からも特に19世紀前半にδ18Oの急激な上昇が認められ、これは複数の西太平洋の長尺サンゴ記録においても確認されることから、小氷期末にあたるこの時期において西太平洋熱帯域が寒冷・乾燥であった可能性がある。一方、1950年以降においては温暖・湿潤な環境へのシフトが見られた。またδ13Cの結果からは20世紀後半に急激な減少傾向が見られ、δ13C値の低い化石燃料放出の影響により大気や海洋表層のδ13Cが軽くなるスース効果を反映していると考えられた。時系列解析の結果からは、本研究地域の海水温やδ18Oの変動は、ENSOに関連した3~7年程度の変動周期が検出され、本海域はアジアモンスーンなど複数の気候要素が影響しているものの、ENSOの影響が支配的である可能性が示された。