日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-03] 高校生によるポスター発表

2019年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学大学院環境学研究科地球環境科学専攻地質・地球生物学講座岩石鉱物学研究室)、久利 美和(東北大学災害科学国際研究所)、山田 耕(早稲田大学政治経済学術院)

13:45 〜 15:15

[O03-P10] 地球照のスペクトルを用いたブルーシフトの捕捉-宇宙から眺める地球の大地

*伊藤 乃愛1、*吉野 礼珠1 (1.横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校)

キーワード:地球照、スペクトル、レッドエッジ、ブルーシフト

本研究は、地球照のスペクトルを通してブルーシフトを観測することにより、地球の鉱化帯などの地化学的異常を地上から察知することを目的としている。
地球照とは、太陽光が地球で反射し、その光が月の暗い部分を照らす現象のことである。また、植物の反射スペクトルにおける赤色波長の反射率の急激な増加のことをレッドエッジといい、植物がストレスを感じることによりレッドエッジが青色波長側にシフトすることをブルーシフトという。ストレスとは、具体的には水ストレスや地化学ストレスのことである。本研究は、水ストレスと地化学ストレスの中でも金属ストレスに着目した。水ストレスとは、植物が干ばつ状態に置かれることで感じるストレスである。金属ストレスとは、植物が重金属塩の濃集域で育つことにより感じるストレスである。
 大陸部分で反射した地球照のスペクトルには、植物の反射光が含まれる。そのため、地球照のスペクトルを用いてレッドエッジの検出が可能となる。本研究では、ブルーシフトも地球照を通して観測できると考えた。
 本校屋上に設置されている口径30cmの望遠鏡に冷却CCDカメラと分光器をとりつけ、30秒露光した地球照のスペクトル(30秒を5枚) 取得した。観測は、2018年11月14日、2019年1月10、11日の3日間行った。その後、取得した画像を「すばる画像処理ソフトMakali‘i」で加算平均し、「Excel」を用いてグラフ化した。
結果は、レッドエッジと見られる反射率の増加を捉えることができたが、ブルーシフトについては不明瞭であった。
 今回観測を行った3日間とも、地球照に反射する地球の地域はほとんど変わらなかったため、明らかなシフトが起こらないという結果は妥当であると考える。
かいわれ大根を用いて、実際の植物におけるブルーシフトの観測を行った。水で育てた植物、重金属塩の溶液(硫酸銅、硫酸鉄)で育てた植物、水ストレスを与えて育てた植物を用意し、それぞれの反射スペクトルを取得した。
結果は、水ストレスを与えて育てた植物において、ブルーシフトが見られた。しかし、重金属塩で育てた植物においては、有意な差は見られなかった。
 より正確なレッドエッジおよびブルーシフトの観測のために、海洋を反射する地球照の観測、月のスペクトルで除算を行うといった操作が必要となる。